第34号 質を問われはじめたNPO

 総会で慌しかった6月も終わり、それぞれの団体は本格的に次年度に向けて動き出している。そんな中うれしいニュースとうれしくないニュースが飛び込んできた。うれしいニュースは公益法人改革における税制の論議の中で、公益性を認められた非営利法人は、寄付金の優遇税制が適用されそうだという情報だ。今まで、特定公益増進法人や認定NPO法人に与えられていた「寄付者に対する税制優遇」をもっと拡大する予定なのだ。そうなるとNPO法人にも恩恵が回ってくる可能性がある。念願の個人の寄付優遇は今まで国税庁認定NPO法人以外のNPOにはまったくといっていいほど認められておらず、のどから手が出るほど欲しい制度であった。これが一人当たり十万円でも認められるようになれば、多くのNPO法人が少なくとも今よりは潤いはじめるだろう。
 悪いニュースは、例の「やまびこ会」の一連の事件だ。NPO法人を隠れ蓑にして、マルチ商法のようなことをしようとしていたのだ。「ダイオキシンが出ない焼却炉」「ガンが治るきのこ」などなどいろいろな手で国民から多額のお金を騙し取っていたらしい。もちろん悪い人はいることはわかる。これだけの経済不況で犯罪者も減ることはないだろう。自殺者だってものすごい勢いで増えているのだ。しかし、何もNPOを利用しなくてもいいではないか。中越地震やスマトラ沖津波に便乗した寄付金詐欺集団もやはりNPOを悪用していた。犯罪者は悪びれずに言うらしい。「NPOだと人が信用するから・・」と。その影で多くの健全なNPO団体が人々に怪訝な目で見られているのを知っているのか。「人の良心や思いやりを利用する詐欺集団よ、もういい加減にしてくれ!」と声を大にして言いたい。
 夏が来ると、行政ではそろそろ次年度の予算に対する動きが活発化し始める。NPOに対する予算も減ることはないが形を変え始め、ただお金を配分してNPOを活性化させようとする動きから、仕事の質や精度をNPOに求め、町そのものを変えていこうとする動きに変わっているのだ。もちろんNPOに対する目も厳しくなり、NPOだからいい加減でも許されるというのはまったく通用しなくなる。「NPOは専門性も高く、しかも一生懸命に取り組むので、とても信用できる」といわれる日が来るまでNPO自身が努力を惜しまないで欲しい。

特定非営利活動法人 国際ボランティア事業団
理事長 福島 達也
(平成17年7月)