第35号 指定管理者制度とコスト削減
 公の施設の「指定管理者制度」への移行が今ピークを迎えている。指定管理者制度とは今までの管理者の条件に、新たにNPOや企業が加わった制度で、「民間でできることは民間で」の流れを受けた改革の一つである。地方自治法の改正から3年を迎える平成18年9月までに委託管理制度を指定管理者制度に移行しなければならないのだが、自治体の年度の初めが4月であることから、平成18年4月にスタートを切りたい多くの自治体にとって、議会の議決などを考えると、ちょうど今が選定の時期になるのだ。
 どこの自治体からも同じような公の施設が民間の管理に移行するわけだが、この制度のおかしなところは、指定管理者制度になっても依然として公募でなく、委託先を指名できることである。ある自治体はこの制度に移行しながらも90%以上を公募ではなく指名で決めているのだ。これでは「指定」ではなく「指名」管理者制度と軽口をたたかれてもしょうがない。やはり、これからの時代はきちんと公募した上で、最も管理するにふさわしい業者又はNPOを選び、住民サービスの向上やコスト削減に努めてもらいたい。
 また、管理委託費についても不透明と言う意見が多い。新しい施設は今までの実績がないので、新たにコストを積算して管理費のおよその額を決めているのだが、民間に委託することを決めたとたん、人件費などの単価が異様に安いのだ。それに比べて、今まで自治体直営で運営されていた施設は、とても「うまみ」のある管理費を示すことが多く、その差は歴然としている。新設の施設と公務員が働いていた同規模の施設を単純に計算すると8割くらい。ひどいところでは五割くらいの「価格破壊」の管理費になっているところもあるのだ。それでも背に腹は代えられない企業やNPOはこぞって応募するのだから改まるわけがない。
 住民サービスの向上という建前を忘れ、コスト削減ばかりに走ると、そのうち住民からの苦情が殺到することになるであろう。その点に特に気を付けてもらいたい。


特定非営利活動法人 国際ボランティア事業団
理事長 福島 達也
(平成17年8月)