第42号 これからの障害者自立支援
 昨年成立した障害者自立支援法が、いよいよ来月4月から施行される。これは制度発足からたった2年で破綻の危機に追い込まれた現行の「支援費制度」に替わるもので、これによりわが国の障害者施策は新たな枠組みのもとで再出発することになる。
 この法律は、これまで身体障害、知的障害、精神障害と障害別に分かれていた制度や施策を1つにまとめ、共通のサービスが提供されるようになる。また、働く意欲と能力のある障害者が働ける場を広げるため、職業訓練を充実させ、地域の空き店舗や空き教室を活用できるようにするなどの規制緩和も進む。
 しかし、障害者が社会から保護される対象ではなく、社会の中で自立して生活していける存在であることを政策の意図として明確に示した点は評価できるものの、当の障害者の間では、サービスを利用する際に原則として一割が自己負担になることから、利用当事者である障害者の間には新制度への不安も大きい。
 そこで、これからの障害者福祉は、所得の低い重度の障害者への救済策を手厚くする一方で、自ら働いて生活していける障害者が増えるような就労支援の仕組みをしっかりと作っていくことが望まれる。就労意欲が高く、環境さえ整えば能力を発揮できる障害者が少なくないのに、その意欲と能力をつぶしてしまうことは社会にとっても大きな損失になる。
 行政はもちろん、企業にも雇用の工夫が求められるし、空き店舗や廃校の活用といった規制緩和で障害者雇用の新たなビジネスモデルが生まれる可能性もある。中には障害者の就労支援にとどまらず、企業の仕事を奪って活躍するNPOが増えてきている。工夫さえすれば、いくらでもこの資本主義社会で勝てるというモデルがどんどん生まれているのだ。
 ただ心配なのは、こうした勝ち組NPOと負け組NPOの格差が広がっている点だ。月7〜8万円の障害者年金に完全に頼っている団体は、もっと視野を広げ、情報を収集し、企業ビジネスに果敢に挑んでほしい。
特定非営利活動法人 国際ボランティア事業団
理事長 福島 達也
(平成18年3月)

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