福島達也理事長コラム
第105号 NPO法改正に続き、寄付税制も改悪に!
 公益的な活動をするNPO法人への税制優遇措置を拡大する税制改正法と、税制優遇が受けられる「認定NPO法人」の要件緩和などを柱とした改正NPO法が、今国会で相次いで成立した。

 関係者は大喜びムード一色だが、あえて言いたい。まったくひどい法改正だ!

 現在NPO法人は約4万3千あるが、このうち税制優遇が受けられる国税庁の認定NPO法人は2百ちょっと。そこで、一九九八年に制定以来の抜本改正で、認定NPO法人を大幅に増やし活発な活動を促すのが目的なのだが、果たして大丈夫か?

 まず今回の改正で、税額控除が初めて導入されたことが怖い。これまでは寄付金を、寄付した人の所得から差し引く所得控除だったが、改正により寄付した金額から2千円を超えた分の半額が、所得税と住民税から減額される。だから節税を通り越して、脱税をしようと考える人が動き出すに決まっている。実際そういう怪しい相談も増えている。

 なので、認定NPO法人の資格基準を厳しくするのが一般的だと思うのだが、逆に大幅に緩和されたのだ。「寄付金が事業収入の5分の1以上」というこれまでの基準に加えて「3千円以上の寄付をした人が百人以上」や「自治体の条例で指定した税額控除対象」などなど。

 誰かの名前を使ったり、お金はこちらで出すから名前だけ貸してくれなどと言って寄付されたことにすれば、たった30万円で認定NPO法人になれるのだ。

 さらに、自治体が条例で指定ということは、公益法人になれなかった天下り団体や外郭団体を条例で指定し、税額控除対象にすることも簡単にできる。

 また、設立5年以内のNPO法人を対象に「3年間の仮認定制度」もできたが、3年以内の正規認定までの間に、それをうたい文句にお金を集め、そのままドロンと消えてしまう団体も増えそうだ。法人が消えたら、遡って控除がふいになるので、善意の人たちに追徴課税の嵐が吹きそうだ。

 そんな簡単な脱法行為が想像できないのだから、まったく幸せな人が多すぎる。特に、これを率先して進めていった議員やNPO関係者は、こうした犯罪に対してすべて責任を持つべきだと思う。

 本当に素晴らしい法律を作ることは難しいが、幸せな人々だけで法律を作らない方がよい。さあ、どんな犯罪が出てくるのか、来春あたりから新聞記事に注目だ。





特定非営利活動法人 国際ボランティア事業団
理事長 福島 達也
(平成23年6月)

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