福島達也理事長コラム
第96号 会計基準が変わる
 NPO法人の会計基準が初めて策定された。これは、NPO法人に統一された会計基準が存在しないことに起因する各種の問題を改善し、NPO法人の信頼性を向上させることを目指して、全国のNPO支援組織で構成した協議会が主体となって作ったものであるが、いつからどのように使うのか、法人側にも戸惑いが広がっている。

 今回の会計基準の一番の狙いは、NPOの会計の信頼性を向上するためにはフローの計算書である活動計算書と貸借対照表がつながりやすいものにしようということで、次期繰越正味財産が貸借対照表とつながるよう、「収支計算書」を「活動計算書」に変えるというものだ。それぞれの活動にどれぐらいのコストがかかったのか、それをどのような形で資金を調達していたのか、その結果、正味の財産がどれだけ増加したのかという活動を表す形となるので、確かにわかりやすい。

 また、経常費用の部というところを、事業費と管理費に分けた上で、さらに事業費と管理費を人件費とその他経費に分けるというような表記にすること。無償・著しく低い価格の施設の提供やボランティアによる役務の提供等を会計に取り込むことなどが特徴的である。(ただし、あくまでこれは任意規定という位置づけとなる。)

 こうして確かにわかりやすいものなのだが、法人側がそれに対応できるかが問題だ。どの団体もすぐれた会計士が常についているわけでもないので、4万の法人がいつまでに対応できるだろうか、疑問が残る。

 さらに気になることもある。それは、今回のNPO法人会計基準は、民間が主体となって作成したもので、法的拘束力はなく、適用が義務付けられているものではないという点だ。だから、変更する余裕がないという団体からはそっぽを向かれるかもしれない。

 多くの団体が気にしているのは、次の事業報告書から変えるべきなのかということだが、答えはNO。行政側がまだそれに呼応していないからだ。

 つまり、新しいスタイルにして所轄庁に提出しても「前の形に直してください」と言われてしまうかもしれない。そのあたりは混乱を避けるために、早く所轄庁も対応して欲しい。  せっかくいいものができたのだから、その普及に全力を挙げて欲しいし、我々もそれに協力していきたいと思う。そういう意味で、体制が整い次第、各NPO法人に対して適用を働きかけていく予定だ。



特定非営利活動法人 国際ボランティア事業団
理事長 福島 達也
(平成22年9月)

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