第133号 高額報酬がもらえる国会議員って本当に必要?

 今なぜか選挙が行われようとしているが、選挙のシーズンになるとよくあるのが、国会議員の待遇をほんの少し下げたり、経費を削減したりというパフォーマンスだ。
 そこでよく思うのが、いっそのこと国会議員をボランティアにして、政治に信念を持った人や見識を持った人が政治をやったらどうだろうということ。

 スウェーデンの国会議員はボランティアがやっているのをあなたはご存知か?
 スウェーデンは福祉で有名だが、社会福祉の費用が大きくなって消費税は二桁になり財政が悪化した。そこで、国会議員の待遇をゼロにして、政治に強い意思のある方がやるようにしたのだ。
 本来、政治家というものはそれくらいの犠牲をはらっても良いのではないだろうか。国を良くしようという人が、たくさんのお金をもらえるというのはどうもよくわからない。NPOの人たちなどは「地域のため、人のため」にほとんど無報酬で頑張っているが、そっちの方が国会議員よりもよっぽど偉いと思う。
 国会議員に出す給料があるのであれば、それを10等分して、10人の優れたNPO事業家に配るべきだと思う。何なら国家公務員の給料も2割くらいはそうしてもよいかもしれない。
 日本のように、国会議員は毎年何千万円もお金がもらえる職業だから胡散臭い人ばかりになるのだし、利権に群がるやからが多くなるのだ。
 ここだけの話だが、落選した人が直後に破産するケースが実は多いのだが、当選した人も一部の議員を除いたら、ほとんど破産寸前で当選していることをあなたは知らないだろう。金持ちが国会議員をしていると思っている市民が実に多いのであるが、実は全く逆だ。金が欲しくて国会議員をしているのだ。

 つまり、国会議員は「世のため人のため」なんて演説しているが、実は「自分の生活のため」という人がほとんどなのだ。スウェーデンのようにそろそろ消費税を2ケタにしようという国なのだから、本気でボランティア議員を考えてほしい。
 これだけ市民が苦しい生活を強いられているのに、国会議員はのうのうと暮らしているから市民と感覚が違ってくるのだ。豊かなのは一部の上場企業の役員ばかりで、一般社員その他大勢の市民はぎりぎりの生活をしていることを早く知ってほしい。
 国会議員を主婦やサラリーマンがボランティアでやるようになれば、景気対策も打てば響くような政策がどんどん出てくることだろう。

 もし、国会議員の報酬をゼロにするという政策を打ち出す政党があったら、私は全力で応援しようと思う。誰かそういう政党を作ってもらえないだろうか?「ボランティア議員党」とか「無報酬議員新党」なんてのはどうだろう・・。

 えっ、あんたがやれって? いえいえ、私の場合、仕事もボランティアに近いので・・・それは勘弁してください(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年11月)

第132号 NPOにも融資してくれるの?

 経済産業省が、中小企業信用保険法の改正案を来年の通常国会に提出するらしい。その中に、NPOを信用保証の対象に入れる制度も盛り込むようだ。
 信用保証制度では、借入時に保証料を信用保証協会に納めれば、金融機関への返済が不可能になった場合、協会が肩代わりしてくれるというものだが、そうなると、今まで出し渋っていた金融機関もNPOに融資しやすくなるだろう。これでNPOは事業拡大がかなり容易になる。
 しかし、ここでいう「NPO」とは一体どの範囲だろうか?NPOと言ったって、人が3人集まればNPOなのだから、これだけではよくわからない。NPO法人?一般社団法人は?などなど。
 しかし、どうやらここでいう「NPO」とは、NPO法人のうち、さらに限定された「事業型NPO法人」のことらしいのだ。
 この動きは、経済産業省の中に作った「NPOなど新たな事業・雇用の担い手に関する研究会」が中心に進めているものだが、この研究会の中間報告によると、「事業型NPO法人」を以下のように定めており、この路線で定義していくらしい。

 ①特定非営利活動で継続した収益事業(課税事業かつ自主事業)をおこなっていること

 ②①の収益事業からの収益により雇用を創出していること

 ③多様な主体と連携し、地域の課題解決や活性化につながる活動を行っていること

 ④市場の競争において有利になる税制上の恩典を有していないこと

 の4つをメルクマールに、さらに検討を深めていくことが重要とのこと。

 つまり、定義はまだ詰められていないが、少なくとも今回の制度は「事業型NPO法人」のみを中小企業施策の対象にしていくという方向性のようだ。
 一般社団法人等については、報告書の「おわりに」で、「今回の論点整理をひとつのきっかけとして、今後、中小企業政策の対象としてこれらの新たな非営利法人(社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人)の位置付けについても検討していくことが必要と考えられる。」とあり、今後の検討課題という位置付けで、今回は事業型NPO法人のみ対象のようだ。

 信用保証だけ?と思う人もいるだろうが、それでも相当の前進だ。さらに、経産省は、このほかにも創業や経営の支援で、NPOを中小企業と同等に扱うようにするらしい。
 となると、小規模企業共済をNPO法人の経営者でも使えるようになるとか、中退共にも加入できるようになるとかそんな感じだろう。
 今まで、NPO法人だからという理由ではじかれてきた様々な壁をようやく突破できる日が近づいているように感じる。
 報告書では、具体的な支援策も検討されている。
 まず経営支援という観点では、「地域課題解決型事業を展開する事業型NPO法人は、中小企業・小規模事業者と同様の経営上の課題を抱えており、商工会・商工会議所などによる経営支援が有効と考えられる。」とあるが、「しかしながら、商工会・商工会議所が中小企業・小規模事業者と同等にNPO法人を支援する場合には、都道府県との調整や、NPO支援センターとの役割分担を整理する必要がある。加えて、支援機関として、地域課題解決型事業といった先進的な取り組みに対する知見や、NPO法人特有の会計や税制などのスキルをまず習得し、ノウハウを蓄積することも必要である。」としている。
 なんだか、NPOを支援したいけど、自分たちがよくNPOのことをわかっていないので、一から勉強します!みたいな感じで、ホント大丈夫なの??と言いたくなる。

 でもなぜ、国はNPOを支援しようとするのか?
 それは、建設業や製造業などの中小企業が衰退しつつある地方で、NPOの活性化により雇用を拡大することができるとみているからなのだ。
 さらに、地方自治体の合併などで縮小する行政サービスを補完できるのはもはやNPOしかないということもわかってきたのだろう。NPOの役割がどんどん大きくなってきていることがわかる。

 一方、内閣府の調査によると、NPOの約7割が資金の借入先を「個人」と答えており、金融機関の割合は小さい。これは、金融機関がNPOを嫌っているからなのだ。というよりも、NPOの役割や経営実態が十分に理解されず、リスクが高いと判断されがちと言った方がよいだろう。
 最近は、国民政策金融公庫がNPO融資にかなり力を入れているようだが、今度は保証協会を使えることで、NPOの融資も徐々に増えることだろう。しかし、最初からあきらめているNPO法人も多いので、来年度以降はぜひ融資もチャレンジしてほしい。

 ただ、無条件で融資をするわけではない。
 経産省は、NPOが同制度を利用する際には、安定的な収入があることを証明するために、事業活動計画の作成と適切な会計処理の実施を条件とする見込みなのだ。
 恐らく活動計算書も作れないようなNPO法人は最初から舞台に上がれないだろう。
 すべてのNPO法人は会計面を強化する必要がある。NPO法人会計基準をしっかりと理解した上での会計処理が必要になるだろうから、内部にそのような体制がないNPO法人は、弊社のような会計に強い中間支援団体を利用してもよいだろう。

 さあ、来年の通常国会に法案が提出されるということなので、みんなで今から準備しよう!
 「がんばろう福島!」じゃなくて「頑張ろうNPO!」だ。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年10月)

第131号 NPOか?それとも社団・財団か?

 最近、弊社への法人化の依頼もだいぶ様変わりしてきている。
 以前は、NPO法人の設立がものすごく多く、社団や財団の設立などというのはそれこそ盆暮れくらいのものであった。しかし、最近は一般社団法人を設立したいという団体がとても増えてきているのだ。
 理由は簡単だ!設立が簡単だからである。許認可もないし。
 以前の法律では、社団法人や財団法人の設立といえば、宗教法人の設立と同じくらい、いやむしろそれよりも困難だった。
 かつて私が住んでいた市では、国際交流センターを財団にしようとがんばったが、市が1億円、市民が1億円を寄付したにもかかわらず、3億円に1億足らないという理由で財務省から門前払いを食らったものだ。当時の中央省庁所管の財団は、基本財産が最低3億というのが常識だったからだ。
 社団法人はお金ではないが、今度はシェアがネックだった。業界団体として、その業界のシェア率が70%とか80%とか言われていた。ライバル団体があろうものなら、まずシェア率でふるい落とされたのだ。
 そんな時代を知っている私にとって、こんなに簡単に社団や財団が作れていいのかいまだに疑問である。社団は会員2名で作れるし、財団は設立時財産が300万円だ。さらにいうと、許認可は全くいらなくなったので、会社を作るように簡単に作れてしまうのだ。
 もちろん名前は以前と変わって、社団財団の前に一般と付くのだが、そんな違いは市民にとってはよくわからない。一般社団法人だって、社団といえば、立派な団体を想像してしまうだろう。
 このように入口(設立)が簡単だから、きっと出口(決算)が厳しいのかな・・・と想像してしまうだろうが、非営利型であり非営利事業しかしないと、法人税の税務申告もいらないのだ。会社は必ず税務署への税務申告が必要だから、税務署に監督されることになるが、税務申告しないとなると、監督されるところはどこにもないことになってしまう。だから、収益事業をしていても、それすらわからないという現象も起き始めているのだ。
 この辺りはとても危険である。やはり、昔のように許認可を与えるか、またはすべての法人に税務申告を義務付けるか、どちらかにしたほうがよいと思う。
 非営利型の一般法人は収益事業のみが課税されるのだが、それってNPO法人のように認証を得た団体だけが享受されるべきなのではないだろうか?
 一般法人の場合、自治体に対する法人住民税の均等割(約7万円)は課せられる、税務署と違い自治体では税務調査というのはほとんどやっていない。NPO法人のように所轄庁への決算報告もないのだ。
 ただし、一般法人の上にある公益法人(公益社団・公益財団)は行政庁の監督がとても厳しい。
 箸の上げ下げまでしっかり見られるうえ、決算書のチェックも相当入念に行われているのだ。
 さて、ここでNPOと社団(または財団)の違いとは何か考えたい。税制上の違いは先述したが、それ以外の違いは何だろうか?
 NPOを所管する行政庁の中には「会員の入会制限ができるのが一般社団法人。監督もないし、審査もないから簡単に早く作れてお勧めですよ。」などとNPO法人をあきらめさせようとするところも出てきている。しかし、それが理由というのもちょっとおかしい。
 ではどこが違うのだろうか?

 模範解答は、NPOは会員制だが、主たる目的は会員サービスではなく公益事業。世のため人のために活動をするが、活動をするために会員制にして、みんなで協力して頑張ろうという組織。
 一方社団は、主たる目的は会員向けのサービス提供。もちろん公益事業がほとんどだが、特に公益事業をやらなくてもよい組織。財団は、会員制ではないので限られた人たちで、財産を元手に公益的な事業を行う組織。
 これが正解だろう。間違っても、非営利団体だから利益を上げない組織・・・なんて答えをしないように。社会主義国家じゃないのだから、利益をあげなければ存続できない。他人のお金をあてにしないで、自分たちで稼ぐ必要があるのは、会社だけではなく非営利団体にも言えることなのだ。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年9月)

第130号 少子化?いや消滅化でしょ!(下)

 さて、前々号から続いた「人口減・消滅化」の最終回。この欄は非営利法人コラムだが、一般法人や社会の動きはどうなるかについて語ろう。

 先日、日本3大予備校の一つである代々木ゼミナールが校舎の7割を閉鎖し、さらに全国模試も廃止するというニュースが流れたのをご存じだろうか。バブル時代には多くの浪人生を集め、講師もまるで芸能人のようにもてはやされていた日本一の予備校が、3割閉鎖ではなく、7割も校舎を閉鎖するのだ。

 私もお世話になったことのある予備校だけに、ショックは少なからずあったが、しかし、ニュース的には驚くどころか当然という感じだ。

 私のコラムを毎回読んでいるあなたにとっては、「やっぱり」でしょう。30年後には、ほとんどすべての会社がそうなるのだ。もちろんあなたの会社もだ。
 というよりも、潰れない会社を探すのは難しい時代もやがて来るだろう。私は、社員が3000人を超える企業は50%程度倒産すると予想している。つまり上場企業は半分になるだろう。

 ここまで読んで、「またバカなことを言って、人口が半減するのはわかるが、社員を半分リストラすれば大丈夫だよ」なんてあなた思っているでしょ。わかっていてもそうできないのだ。

 代ゼミがなぜ多くの校舎を閉鎖することになったのかには訳があるのだ。

 代ゼミは90年代初頭の私大バブル期に全盛期をむかえた予備校だが、会社側の説明によると「18歳人口が増えたのに合わせて全国展開してきたが、減ったところでそれに合わせた校舎運営ができなくなったため」だという。

 そうなのだ。一流企業とは、「継続と成長」を最も大事にする組織である。いくら人口が減るとわかっていても、自ら縮小する勇気はなかなかないのだ。縮小する中長期計画なんて作ったらきっとその時点でクビになる。
 だから、どんな時代でも企業は、新しい分野に手を出したり、新しい製品を創り出そうとしがちなのだ。

 あなたの組織のトップもそうだろう。
 先日の朝礼で何をしゃべったか思い出してほしい。人口減のことを社員に話さないような会社は、もうとっくに潰れているだろうから、きっと前回の朝礼でこう言ったはずだ。「これからの人口減に向けて、同じパイを追いかけていてはダメだ。少子高齢化時代に必要となる新しい分野や新しいサービスを開発しよう」と。

 一見もっともだが、それではダメだ。だって、みんなそう考えているのだから。どんな新しい分野やサービスも、対象となる人口が急激に減ってくるのだ。だから、まずは身を削ることから始めるべきなのだ。代ゼミはその点で先見性がある。

 校舎を削減することで全国サービスを受験生に提供できなくなったから全国模試を廃止するなんてことが、他の企業にはできるだろうか? 代ゼミの全国模試と言えば、日本で一番の模試だったのだから、どんなに数が減っても、それに合わせたやり方で何とか続けようとするのがパイオニア企業の宿命のはずなのに・・・。なんて潔いではないか。

 きっとこの時点で早々に動いた代ゼミはこれからも生き残るだろう。
 だって、校舎はみんな主要駅のそばで便利だし、代ゼミに馴染んだ高齢者もたくさん増えるのだから、独り身の高齢者が文化や芸術を学んだり、趣味やスポーツにいそしむ新しい「代々木シニアゼミナール」「代々木シニアホーム」として(笑)

 さて、それでは他の企業はどうすればよいのかだが、まずは世界進出や全国展開という拡大路線をやめるべきである。
 企業が生き残る必殺技は、支店と営業所をすべて閉鎖することだと思う。私が社長なら、本社以外はすべて売却かのれん分けをするだろう。もちろん、関連企業として残るだろうが、独立採算にすることで、リストラするにも社会的にそれほどインパクトはない。

 ソニーやパナソニック、シャープはそれができず、3万人とか1万人とか毎年のようにリストラしているが、そもそも本社に1000人残して、あとは違う会社になっておけば、「あの会社いつ潰れるだろう」なんて思われなかったはずなのだ。

 そういう意味で、代ゼミは先見性があった。潰れる前に自ら縮小したのだ。切り離した校舎は、リストラ組や他組織が高齢者施設などにして生まれ変わるだろう。企業は細胞分裂することにより、地域や社会により対応しやすくなるし、ニーズを拾いやすくなる。そして何より人口減の被害も小さくなるのだ。

 さあ、あなたの組織もいつ縮小するかぜひ注目してみよう。縮小しない限りあなたの給料はいつか大暴落する日が来るのだ。もし、私の予言通りに自ら細胞分裂するなら、その企業はまず潰れないだろう。給料は若干下がるだろうが、傷は最小限に食い止められるからだ。
 そうとも知らず、こんな時代に、〇〇地区に進出とか〇〇県に初出店なんてニュースが流れたら、その企業に手を合わせておこう。「なむ~~~」

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年8月)

第129号 少子化?いや消滅化でしょ!(中)

 さて、前号から「人口減・消滅化」の続きだが、そんな時代に非営利分野はどうなってしまうのだろうか。考えてみよう。
 福祉の現場では、だいぶ前から人手不足が叫ばれており、外国人の看護師や介護士が増えているのは皆ご存じのことだろう。しかし、ボランティアの分野を外国人に頼っているなんて聞いたことがないはずだ。
 確かに、外国人もボランティア活動には積極的だが、日本人もそれなりに積極的なので、今のところ人手不足で困っているということはあまりない。
 しかし、高齢者のボランティア活動は盛んになっても、若者はパイが激減するので、力のいる活動はやはり誰かに頼らなくてはいけないだろう。しかし、移民は稼ぎに来ているわけだからボランティアはしない。となると、やはりこの分野も人手不足が予想されるのだ。
 だから、ボランティアの世界では、若い力に頼らない仕組みや、子育て中のお母さんや高齢者などでも簡単にできるような工夫をそれぞれ考えておくべきだろう。

 さて、ボランティア以外の非営利ビジネスはどうなるだろうか・・・。
 こちらは劇的に活性化するとみた!
 だって、前号で書いたとおり、行政も相当スリム化するわけだから、お役所仕事は、きっと50年後はすべて非営利ビジネスなどが担っているはずだ。国家公務員もかなりスリム化して外部委託になるだろうが、地方公務員に至っては、市町村そのものが半分くらい消滅するのだから、役所職員、警察、消防、教員などは相当激変するだろう。
 役所は今でもアルバイトが多いが、「課長はパート」なんてこともきっと現実になるだろう。警察は、機密的な部分は守られるだろうが、交通整理とか交通違反取締なんてのは警察官がやっていること自体ナンセンスである。諸外国では、刑務所も外注するのが当たり前になってきているほど、外部委託が進んでいるのに。警察だって、セコムがやったほうがいいんじゃないかと思っている人もいるだろう。

 ただ、私が言いたいことは実は外部委託のことではないのだ。仕事そのものを非営利ビジネスが役所から奪ってしまう時代が来るということを言いたいのだ。
 かつて、役所がやっていた時代が長く続いた「病院」や「保育園」がよい例だ。今やコスト削減や効率化が得意である民間がほとんどそれを担っているが、私はこのようなパターンが今後どんどん進むとみている。
 建設や土木などの公共事業の担い手も、今やほとんど民間だが、公共事業のお金を集めたり、企画立案をしたり、選定したり、実行したりもすべて民間が役所に働きかけながらやる時代が来るだろう。
 ただし、民間にも人口減がやってくる。
 そこで、現在休職中や仕事をしていない又はなかなか仕事に恵まれない人は誰なのか考えてみよう。
 そう、それは子育て中のお母さんか高齢者、そして障がい者だ。それと移民も。
 かつて高齢化を前に「バリアフリー」とか「ユニバーサルデザイン」という考え方が急激に進行したが、これからは、時間や体力、知能など働く人の「バリア」をなくし、時間に追われない「フリー」な職場を作ることが人口減や消滅化から唯一社会を守る手段になることだろう。

 働き手のバリアをなくしてフリーな環境と言ったら、そう、非営利ビジネスの独断場だ!
 営利追求の会社というのは、コスト削減や効率化を意識するあまり、子育て中のお母さんや高齢者・障がい者を最も雇用しにくい職場になっているのだから・・・
 人口減や消滅化をマイナスと考えず、企業は確かに潰れるところが増えるだろうが、社会のため人のために働く「非営利ビジネス」が成長する時代と考えてみれば、決して悪い時代ではない。
 いよいよ、スモールビジネス・地域ビジネス・コミュニティビジネスが目を覚ますことだろう・・・。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年7月)

第128号 少子化?いや消滅化でしょ!(上)

 我が国の人口については、将来推計によると、総人口は今から34年後に1億人を割り、56年後の2060年には8674万人になり、5人に2人が65歳以上となることが見込まれている。このように、我が国は、今後、人口減少と少子高齢化の急速な進展が現実のものとなり、様々な問題が生じてくるのだ。
 あなたは、政府も経団連も最大の目標を「人口1億人維持」としていることをご存じだろうか?これを聞いても何となくピンとこない人が多いだろうが、経団連が最高目標にしているというところに注目してほしい。「法人税率の引き下げ」よりも「人口1億人」の方がずうっと大事なのだ。
 実はそこに大きな問題が隠されている。つまり、人口が1億人を切ったら日本経済は持たないということを暗示しているのだ。50年後に人口が3割減るということは、50年後に3割の企業が倒産することとほぼ等しい。なので、1億人維持は政府の隠された最高目標なのである。
 さて、企業や社会ではどのように対策をたてればよいのか。当然この動きをとらえ、新しい商品やサービスを創造しないと生き残れないはずだ。まず、マイナスに合わせた商品やサービスの提供が必要だ。物はコンパクトになり、買わないし売れない。働く人も少なくなるので、行政サービスはもちろんだが、企業のサービスもどんどん悪くなるだろう。「今日頼んだら明日届く」なんて、これから生まれてくる人は絶対に信じてもらえないだろう。「来月届く」の間違いじゃないかと。さらに、ファミレスやコンビニもなかなか探しても見つからない時代が来るだろうから、気軽に郊外で買い物や食事ができなくなる。バスも電車も銀行も病院もどんどん消滅し、最後は警察官も消防士も役所職員も半減するから、公共サービスというのはもはや夢物語となり、恐らく110番や119番はその日に電話が繋がるのは奇跡に近くなるだろう。ゴミは1年中道路に残っているはずだ。
 ここまで書くと、「なんて極端な話だ。ばかばかしい」と思う人がほとんどだろうが、そういう人がほとんどだったから今まで何も手を打てなかったのだ。つまり、こうなったのはだれの責任でもない、あなた自身だ!先日、ニュースで元総務大臣が座長を務める民間の有識者会議で「いずれ豊島区が消滅する」と発表があったが、「アホな」と思った人がアホなのだ。移民だけになれば他の区と合併するのは当り前なのだから・・・。
 このように少子高齢化が叫ばれている日本。しかし、いま多くの地方では高齢者すら減少し始めている市町村が急増している。地方は、いわば「老人経済」で成り立っているが、NHKの調査によると全国の5分の1に及ぶ自治体で高齢者がすでに減少していることが分かってきたのだ。「高齢者が減ると若者が増える」なんて喜んでいる能天気な人はいないだろうが、高齢者が減るということはいよいよ日本が消滅に近づいていることを意味しているのだ。
 年金で成り立ってきた地方経済が破たんし、雇用の場を失った若年層が首都圏に流入、地方では若年女性が消え"消滅自治体"が続出。といっても首都圏では子供を産まない女性が増加し、結果的に日本全体が縮小し消滅していく運命にあると言っても過言ではないだろう。
 「少子化」なんて言っている場合ではない。「消滅化」をどう食い止めるのかがこれからの日本の最大の課題なのだ。まず「少子高齢化」はやめて「少子消滅化」から始めよう。(つづく)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年6月)

第127号 公益法人とNPO法人の税金が高くなる?

 公益法人制度も昨年末に移行期間が終わり、NPO法の改正からもすでに2年が経ち、とにかく非営利法人の運営も徐々に落ち着き始めているようだ。
 新しい制度に対応して公益法人に移行した法人も、法改正で認定NPO法人になった法人も、やっと一息ついて「やれやれ」という感じだろうか。
 ところが、そんなまったりムードを一変させるような大変ショッキングなニュースが列島を駆け巡っている! なんと、法改正で勝ちえたメリットを今度は政府が奪おうとしているというのだ。何がって? 法人税の課税強化を検討しているのだ。検討どころか最終段階に来ていると言っても過言ではない。
 政府の言い分はこうだ!!「公益法人等を取り巻く環境が変わり、非収益事業とされる場合であっても、一般の民間法人と競合する分野が生じていることを踏まえ、イコールフィッティングの観点から、平成20年の公益法人改革で検討対象とされなかった特別法に基づく法人を含め、公益法人等の範囲を再検討すべきではないか。」というのだ。つまり、公益法人とNPO法人が民間企業の経営を圧迫しているから民間企業並みに戻そうということらしい。
 また、「収益事業課税の対象範囲、及び収益事業の範ちゅうであっても一部非課税とされている特定の取扱いについて、妥当性を再検討すべきではないか。」ときた。
 つまり、公益法人の場合は法人税法上の収益事業であっても非課税であるし、NPO法人の場合は34の収益事業に該当しなければ非課税であったものを見直すというのだ。
 公益法人は具体的に言うと、以前のように収益事業課税に戻すということを検討しており、これについては私も賛成だ。企業が出版しても課税だが、公益法人が公益目的だからということで出版したら非課税なんて不公平極まりない。さらに、保険の代理業なども公益目的だということで非課税になっている図々しい公益法人もあるのだ。もっとあるがこれ以上は控えておこう。
 しかし、公益目的事業が非課税になるから公益法人に移行した法人も多いだろうに、ホント、政府の心変わりでまたまた悲劇が起きそうである。この税制改正で、公益法人に移行した多くの法人はきっと後悔するのだろう。そして、今からでも法人税制が同じであるなら、自由で制約の少ない一般法人に戻りたいと思うことになるのではないだろうか。
 ただし、現法律では、公益法人から一般法人に引き返せないが、これについては法改正があるだろうから、公益法人は一般法人に移行するための準備を始めたほうがよいのではないか。
 次にNPO法人だが、現在の収益事業である34事業を拡大することになるらしい。または対価を得る事業はいったん課税対象にして、その中から免税事業を限定することも検討している。
 いずれにせよNPO法人の事業を課税対象にしようとしているので、NPO にとっては大打撃だ!
 だって、NPO法人の80%は自分たちの事業が非課税だと思い込んで税務申告さえしていないのだ。というか、本当は収益事業の範囲に入っていても、なんだかんだ言って、非課税と決めつけて申告しない法人がものすごく多い。しかし、今度の税制改正で、慈善団体以外のほとんどのNPO法人は課税対象となるだろうから、そうなると税務申告が必要になる。税理士に頼んだこともない団体が多いので、これから税理士さんの仕事も増えるだろう。それか、税理士に頼むお金がないので自分たちで鉛筆なめなめ申告するだろうか・・・。そうなると税務署の窓口はパンクするだろう。なむさん。

   さらに、政府はもっとひどいことをしようとしている。それはみなし寄付金制度の縮小または撤廃だ。政府の言い分は「 軽減税率については、収益事業に対して一般の民間法人は基本税率が適用されていることを踏まえると、基本税率との格差はなくすべきではないか。また、収益事業により生じた所得のうち一定割合をみなし寄附金として損金算入できる制度を認め、更に軽減税率を認めることは過度な優遇とならないか。」だ。
 ある情報筋によると「みなし寄付金制度」の変更はほぼ確定らしい。みなし寄付金制度とは、収益事業で利益があっても、すぐさま利益に税金をかけず、その利益を公益事業で使えば、それは経費と認めて、残ったお金に税金をかけるというものである。もっといえば、残らず使えば、たとえ収益事業で利益があっても法人税はゼロということになるのだ。
 これでは、その収益事業と競合する民間企業はたまったものではない。自分たちは約40%も税金を払うのに、公益法人は1円も払わないのか・・・と、企業の怒りが政府に届いたようだ。
 具体的にはどうするのかまだ決まってないが、恐らく平成8年当時に戻って、所得の20%程度が限度額になるのではないだろうか。それを超えたら課税ということだ。これまたこの制度があることを理由として移行した公益法人や認定NPO法人はガッカリだろう。やはり、一般法人や普通のNPO法人に戻りたいと思う団体が出てくるのではないだろうか・・・。

 そして、最後は、これが決まればあまりにも厳しい制度改正となるであろう、ひどいプランだが、「利子に課税する」という最終手段ともいえる改正だ。
 政府は「金融資産収益については、会費や寄附金収入とは異なり、公益法人等が事業活動の中で新たに発生した所得であること等から、一定の税負担を求めるべきではないか。」ときた。つまり、金融資産の利子や配当にも税金をかけるというのだ。
 もしこれが実現すれば、世の中の公益財団法人は、ほぼすべてなくなっていくことになるだろう。だって、大金を金融機関に預けて、その利子でもって事業をしているのが公益財団法人だ。利子が目減りしたら、きっと事業が立ち行かなくなってしまうだろう。
 ただし、こちらについては実現性が「まゆつば」だ。今後の少子高齢社会においては、政府や自治体に代わって、公益法人が新しい公共としてサービスを拡大しなければならない時代だから、その舞台から公益財団法人がどんどん消えていけばさすがに政府も考えるだろう。
 なので、私はこの実現性は20%以下と見た。

 さて、とはいっても、収益事業課税やみなし寄付金の縮小など、非営利法人の税制上のメリットはドンドン少なくなっていくだろう。何のために苦労して公益法人や認定NPO法人になったのか、本当にわからなくなってくるだろう。
 そして私たちの仕事も、これからは法人格の見直し事業が中心になるような気がしてならない・・・。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年5月)

第126号 オリンピックって平和の象徴?

 先月までの極寒がウソのように夏のような日差しで桜もきれいな今日この頃だが、ちょっと古いが今日はオリンピックの話題である。
 金メダルが1つしかなかったとか、転んだとか、落ちたとか、まあそういうことはどうでもよい。国家的な戦略で戦わない日本が強いわけがないのだから・・・。
 それよりも、国別メダル数を競わせ、1位なら国歌斉唱で万々歳、さらに賞金に家までもらえる国もあるのだ。一方、メダルも取れなかったら非国民扱いで途端に情けない奴・・・、みたいな煽り方はどうなのだろうか?
 そもそも、オリンピックって平等なの?
 13億も人口がいる国と、1万人くらいの国が争ったって結果は誰でも予想がつくだろう。人が多ければ多いほど、可能性も大きくなるだろうし、寒い国では夏の競技が難しく、暑い国では冬の競技は成り立たない。さらに、国家の予算も違えば、国の力の入れようもそれぞれである。それなのに皆平等で金メダルを目指すというが、私はどうも違和感を覚えてしまうのだ。

 国と国が戦ったり、個人と個人が競い合うのは確かに面白いが、国際的にはあまり国家を強調するのはよくないのではないだろうか。戦わせておいて「五輪は平和の象徴」っていう意味がよくわからない。いろんな国から代表者が出てきて、みんなで力を合わせて悪と戦うのなら、確かに「平和」だが、負けた国が勝った国を提訴したり、ネットで中傷したりするのが「平和」だというのだからどうも腑に落ちない。

   NGOの現場では、国境を越えて、様々な国の人々が力を合わせて人道支援や国際紛争の解決に日々力を注いでいるのだ。国を背負って戦うオリンピック選手は、試合で相手の選手に手を差し伸べないだろうが、NGOは国家とか人種とか宗教とか無関係で手を差し伸べる。時に命を落とすなど、犠牲になっても世界のために戦うNGOスタッフには、金メダルの国別獲得数は関係ないのだ。
 むしろ、人として何か世界のために役に立ちたいという気持ちこそ「平和の象徴」なのだと思
 そういう意味で、「NGOりんピック」はあってもよさそうだ。どこの国のどんな人がどこで頑張っているのか、それをどんどん報道して欲しい。
 世界のあらゆる国が、発展途上国支援や人道支援を競い合うオリンピック。それが実現したら、戦争も扮装も減るんじゃないのかな・・・と思う今日この頃である。
 最後に一つ。国って必要なのか? 国連が国になり、現在の国が州や県のようになれたらいいなあと思う。スパイだとか領土問題とか、争うことでどれだけの経済損失があるのか計り知れない。

 国がたったひとつだったら、もはや「向かうところ敵なし」だ!!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年4月)

第125号 消費税増税でも困らない?

 NPO法人や公益法人等で税金上問題になるのは、確かに法人税問題が圧倒的だが、意外と消費税で問題になるケースもあるのだ。
 例えば、行政関係の取引は消費税は関係ないと思っていたり、自分たちが消費税をとっていないのだから、消費税は関係ないと解釈している猛者のような法人もある。びっくりだ。
 そもそも、消費税の対象になる事業とは何なのかご存じだろうか?
 消費税の対象になる取引は、以下の4つの条件を満たしているものだ。

  ① 国内において行われるものであること
  ② 事業として行われるものであること
  ③ 対価を得て行われるものであること
  ④ 資産の譲渡、資産の貸付、サービスの提供のいずれかであること

 このうち、①や②は悩む人は少ないだろうが、③の「対価を得て行われる」というところが非常に問題なのだ。④の「資産の譲渡」とは、物の販売だと思えばよいが、販売以外にも人に何かを貸したり、サービスを提供したりするものも対象だ。
 では、③の対価を得て・・だが、行政からの委託事業は、対価を得ているが関係ないと思っている法人が多いが、これは違う。行政との取引であっても「対価性のある取引」は消費税の対象なのだ。
 「対価」とは、「他人に財産・労力などを提供した報酬として受け取る財産上の 利益」のことだから、行政との取引であっても、委託事業などは、「行政に労力などを提供した報酬として委託料をもらう」ことになり、対価性があるのだ。したがって、委託事業は消費税の対象だ。
 一方で、補助金や助成金であれば消費税の対象ではない。補助金などは、「何かを提供した報酬として受けるもの」ではないからだ。なので、「対価性がない」から消費税の対象外である。

 では、非営利法人お得意のイベントやセミナーの参加料はどうだろう?
 NPO法人などは、セミナーの参加料が3千円とか5千円とか区切りがよく、消費税はとっていないというところが多い。
 しかし、このようなイベントやセミナーの参加料は、明らかに「対価性」がある。つまり、イベントやセミナーというサービスを提供したことに対する報酬が参加料などになるからだ。
 したがって、このようなイベントやセミナーの参加料は、非営利法人自身が消費税を取っていようがいまいが、消費税として課税されるのだ。自分たちの都合で決めてはいけない。
 世の中、お客様が払いやすいように、切りのいい金額設定にしているところも多いが、そのようなものでも消費税はとられていることがほとんどなのだ。

 しかし、消費税では例外的に先述した4つの条件を満たしていても非課税になるものがある。
 住宅用の家賃もこの非課税取引の一種だが、非営利法人の非課税といえば、代表的なものが介護保険や障害者に対する事業だ。とはいえ、非課税事業というのは、その他は有価証券の譲渡や郵便切手類、商品券類、お産費用、 埋葬料、火葬料等であり、あまり多くはない。つまり、それ以外の対価性のある取引は、基本的に消費税の課税対象なのだ。
 法人税の対象ではないと安心している法人が多いが、その場合でも消費税の対象になることがほとんどだと思ってよいだろう。
 もっとも、消費税は課税売上高が年1千万円以下である場合には、仮に消費税の対象となる取引をしていても、消費税を納める義務はない。しかし、NPO法人でも年間1千万円以上の収入がある法人も増えているので、そのような場合には一度自分たちの取引は消費税の対象なのかどうか確かめてみるとよい。
 よく、入会金や会費には消費税がかからないと聞いて、研修会の会費やサッカーなどスポーツの指導料を、会費として徴収している法人もあるが、参加や利用のための利用者負担といった役務の提供を受けていれば、たとえ会費であっても課税対象になるのだ。法律は名前で騙されないのだ。
 また、会員に配布される会報の場合は、会費とは別に購読料として対価を受領している場合は課税対象だが、会員全員に無償で配布している場合は、対価性がないので、不課税となる。
 とにかく、法人税と違って、少々大きな法人の場合、消費税の対象にならない法人を探すことの方が大変くらいなので、この4月の増税は、非営利法人にとっても頭の痛い4月になるだろう。なむさん。

NPO法人等非営利法人の主な事業における消費税の課税関係一覧表
NPO法人等の営む事業の例 課税・不課税・非課税の別
入会金、会費 入会金、通常会費
研修会費、参加会費
実質的には購読料である
不課税(※)
課税
課税
補助金、助成金  国、地方公共団体 不課税 
土地 譲渡
貸付 
非課税
非課税(一時的貸付は課税)
建物 譲渡
貸付
 課税
店舗・事務所は課税、住宅は非課税
寄附金 会員からの寄附 不課税
受取利息 定期預金利息 非課税
販売収入 バザー 課税
介護保険事業 訪問介護 非課税

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年3月)

第124号 世界に誇れる少子化ニッポン?

 日本家族計画協会が先月の20日に発表したデータが世間を騒がせている。みなさんも一瞬びっくりし、そして納得したのではないだろうか?
 20代男性の42%が「異性と性交渉を持った経験がない」という衝撃のアンケート結果だ。昨年12月、全国の20~69歳の男女約10万人に電子メールで依頼し、回答した5千人を集計の対象にしたものであるが、男性に対して、20代女性で「ない」と回答したのは21%と、男性の方がはるかに「遅れている?」という結果だったのだ。
 この団体の専務理事で、性に関する問題の日本の権威である北村邦夫氏でさえ「男性の草食化が話題になる中、20代の男女差は顕著で驚いた」と話しているが、驚いているだけでよいのだろうか?そう、日本政府はこのまま何もしなくてよいのだろうか?
 恐らく政府は、このアンケートの続きで「性交渉の経験がない」とした30代男性が10%、30代女性で7%と言うところを見て、ホッとしているだろう。つまり、20代男性が奥手になっただけと思っているからだ。42%が10%に減ると思っているのだろう。あまりにも浅はかで悲しくなる。
 私は、今の20代と今の30代は、10年後の20代と30代ではないと確信している。つまり、42%の20代は、30代になっても、10%どころか、恐らく30%程度性交渉は持たないだろう。なぜなら「できない」「相手がいない」ではなく、「特にしたくない」「する必要がない」だからだ。もっと言えば「面倒くさい」が一番的確だ。
 この結果を見て、少子化は政府が考える統計よりもはるかに早く進行し、一人暮らし高齢者が世の中にあふれだすと私は思っている。平成22年に男性高齢者の11%、女性高齢者の20%が一人暮らしであったが、今度の統計で男性は15%、女性は25%になるだろう。そして近い将来、というか、今の20代が高齢者になる40年後は、私は男性も女性も一人暮らしになる人が半数を超えるのではないかと予想している。
 もちろん、こんな予想は日本で私一人しかいないだろうし、政府もきっと相手にしないだろう。しかし、もしそうなったら一人暮らしによる多くの問題が噴出するだろう。「介護難民」「孤独死」「身寄りなし」「保証人なし」・・・。
 サザエさんやちびまるこちゃんのような大家族はほぼ絶滅し、きっと誰も理解できなくなるだろう。そして、国民のほとんどが一人でテレビかパソコンの前に座っている絵を想像してほしい。
 「テレビとインターネットが友達」いや「恋人」いや「家族」という時代。何とかしなくてはいけないと思うのは私だけだろうか。
 安倍さん、尖閣諸島もいいけど、もっと早くやることあるんじゃないの? あっ、安倍さんもそういえば子どもいなかったっけ?
 こりゃ無理だ・・・。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年2月)

第123号 税制はどうなる?

謹賀新年。明けましておめでとうございます。
いよいよ平成26年が幕を開けました。皆様にとって幸せな年になることを祈念します。

さて、平成26年度税制改正の大綱が昨年12月24日、閣議決定された。
その中で、非営利法人に関係する主な改正事項は以下のとおりだが、果たして改善なのか改悪なのか、何とも判断が難しい・・・。

●寄附税制関係
公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例について。
公益法人等が寄附を受けた株式等を株式交換等(株式交換等に係る譲渡所得等の課税の特例の対象となる株式交換等に限る。)により譲渡し、その株式交換等により交付を受けた株式を引き続き公益目的事業の用に直接供する場合には、一定の要件の下で非課税特例の継続適用を受けることができることとする(個人所得課税・租税特別措置等)。

→これについては、非課税特定の継続なのだから改善ということになるだろう。公益法人等に寄付しやすい環境を整備しようとする国の姿勢には変わりはないようだ。
あとは、公益法人等が寄付を集める努力次第だろう・・・。

●固定資産税関係
特例民法法人から一般社団法人又は一般財団法人に移行した法人が設置する施設で、移行の日の前日において非課税とされていたものについて、平成25年度分まで固定資産税及び都市計画税の非課税措置を継続する措置を廃止する(資産課税・租税特別措置等)。

→これは、完全に改悪だ。しかも大問題。一般法人に移行した従来の公益法人の博物館や美術館等にとっては死活問題だ。
とりあえず25年までは従来非課税だった施設等は、移行後も非課税のままであったが、これからは課税ということになるのだろう。
一般法人に移行した施設系法人にとっては、完全にはしごを外された形になる。とりあえず一般法人へと行政側に促された公益法人にとってはまさに「騙された」ことになる。
今後大きな火種になるに違いない。

●登録免許税関係
子ども・子育て支援法等の施行に伴い、学校法人、公益社団法人及び公益財団法人、社会福祉法人並びに宗教法人が、認定こども園又は小規模保育事業、家庭的保育事業若しくは事業所内保育事業の用に供するために取得する不動産に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税を非課税とする措置を講ずる(資産課税・その他)。

→これは改善だ。子育て支援関連の施設運営者にとっては朗報だろう。これで、子育て支援を目的にした施設運営団体は、不動産の取得が少しだけ楽になる。めでたしめでし。

●法人税関係
公益法人等の収益事業に係る課税について次の見直しを行う(法人課税・その他)。
(1)母子及び寡婦福祉法の改正を前提に、母子福祉団体が都道府県から事業資金の貸付けを受けて行う事業を収益事業から除外する措置について、対象法人に父子家庭の父の福祉の増進を目的とする法人を加える等の措置を講ずる。
(2)次の事業について、収益事業から除外する措置を廃止する。
・公益社団法人等が行う児童福祉施設の児童の給食用の輸入脱脂粉乳の販売業
・公益社団法人等が独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構の委託を受けて行う年金福祉施設等の運営又は管理に係る医療保健業

→これも改善だろう。父子家庭支援団体が貸し付けを受けて行う事業等は、たとえ公益目的事業にならなくても非課税となるのだ。福祉関連団体のすそ野を広げようとしているのだろう。いい傾向だ。

さて、ここで気になるニュースがある。それは、寄附金税制だ。
一昨年の与党大綱において、「寄附金税制については、これまでの制度拡充の効果等を見極めつつ、そのあり方を総合的に検討する。」とされていたが、昨年12月の与党大綱においても「検討事項」とされたのだが、何とも心配の様相を呈してきた。その部分はこうだ。

第三 検討事項
 4 寄附金税制については、これまでの制度拡充の効果等を踏まえ、所得控除による対応を基本としている所得税において税額控除を適用する場合の対象範囲等についての考え方や、控除の選択制の適否を含めた控除方式のあり方等について、主要国の制度も参考にしつつ総合的に検討し、早期に具体的な結論を得る。

→これってどういうことだろうか。「考え方やあり方を検討する」という表現はあまり良い方向でないことが多いので心配なのだ。
寄付金の税額控除については、現在、認定NPO法人には無条件に与えられ、公益法人は一定の条件をクリアした法人のみが申請してやっと手に入れるものであり、当財団もやっと昨年末に申請して、現在結果待ちの状態。
税額控除は所得控除と違って、低所得者にもより恩恵があるので、低所得の給与所得者等が認定NPO法人等に寄付した時に、より多くのお金が国から還付されてくるのである。
高所得者は、税額控除ではあまり恩恵を受けないのでほとんど寄付金控除を利用することになるが、少しでも多くの人から寄付を受けたい団体にとっては、税額控除も必要不可欠なのだ。
この制度が検討されるのだろうか?良い方に? 悪い方に?
良い方だったら、公益法人や非営利型の一般法人等も認定NPO法人同様に無条件で適用されることになるのだろうか・・・。
悪い方だったら、認定NPO法人も条件が付いて、申請主義になるのか?それとも公益法人等の条件がもっと厳しくなるのか?いずれにせよ、それはかなり改悪だ。それだけはやめてほしい。

できれば、社会貢献を日常化させるためにも、すべての所得や財産のある国民が、必ず寄付しなければならない制度を作ってほしい。消費税のように、何かお金を払うときに無条件に寄付する制度はどうだろうか?寄付付き商品なども結構増えたが、まだまだ浸透していない。1%寄付もまだまだだ。
税金を払うか、それとも自ら基金を作って社会事業に投資するか、2者択一にするのはどうだろうか?税金を選ぶか社会事業支援家を選ぶか、究極の選択だ。
そうなると、当財団が扱っている「マイ基金」は国家予算に匹敵することになるだろう。
それが私の永遠の夢なのだが、ぜひ初夢で終わらないでほしい・・・。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成26年1月)
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