第152号 天からお金が降ってくる??

 昨年の10月、このコラムでも伝えたが、とうとう皆さんの金融機関の口座で10年以上放置されている「休眠預金」が召し上げられることになったのだ。
 休眠預金を民間公益活動の財源として利用できるようにする議員立法の法律が、本日2日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。
 人間とは忘れやすいもので、なんと「忘れ去られた預金」は、毎年1千億円以上あるというのだから、何とももったいない話である。そのうち、「あっ、こんなところに通帳があった」ということで、引き出されるのが400億円位らしいから、残りの600億円が、今後どんどん政府に召し上げられることになる。といっても、政府が公務員の給料にするのではなく、子どもの貧困対策や若者支援、福祉、地域活性化などに活用されるということなので、一安心ではある。

 ただ、注意したいのが、このお金、政府が主導でばらまくのではないという点だ。この法律では、毎年生まれる約1千億円という休眠預金を銀行の収入にさせず、それを預金保険機構が没収し、国が指定する中立的な「指定活用団体(1つの一般財団法人)」に渡す。その団体はその1千億円を、寄付や助成の実績がある資金分配団体(十数団体)に助成か貸付する。
 そして、分配団体が福祉事業をするNPO法人などに活動資金の助成や貸し付けをする。と、こういう仕組みなのである。
 わかりやすく言うと、休眠口座のお金をリレーして、最終的にはNPO等に配布するというものだ。
 つまり、政府からある指定活用団体にお金が移動し、そこから地域の財団等へ移動し、その財団等から公募で選ばれたNPOなどに振り分けられるというのだが、まったくややこしい。
 ただ政府が責任を回避し、誰かに押し付けるために、ややこしくしているといっても過言ではない。

 そもそもNPO業界ほど不公平な業界はない。
 民主党政権の時にNPOにばらまかれたお金は、皆さんの周りの団体に配られただろうか? 実は、ほとんどが特定の有名な団体ばかりに配られたことは記憶に新しい。しかも、今回も予想される資金分配団体は、民主党政権時にそのときの補助金を食い物にした団体ばかりなのだ。
 寄付や助成の実績がある団体という条件にして、以前の癒着団体にまたお金を流すのだろう。
 もう、こうした癒着は絶対に許してはならない!
 今回ばかりは、民主党政権時にバラマキに加担した団体を排除してほしい。と切に願う。
 そうしなければ、地域で小さいながらも頑張っている団体にはお金はいかず、誰もが名前を知るようだ団体ばかりに配られて終わりだ。

 公布後1年半以内に全面施行される。全面施行から1年経過後に発生した休眠預金が対象となるため、実際に現場で活動する団体にお金が届くのは数年後になるだろう。

 何としても、公平で公正な方法により、一生懸命に地域で頑張っている小さな団体、そして、その団体の周りで困っている人や輝けないでくすぶっている人々を救いたい。
 今度こそ、小さな灯がやがて大きなうねりとなって、社会が明るくなることを、願ってやまない。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成28年12月)

第151号 本物のお金持ちがすること

 いまアメリカを騒がせている富豪といえば、不動産王のドナルド・トランプ。アメリカの大統領選挙では大きな混乱をもたらした張本人だ。その言動が賛否を呼んでいるが、お金持ちであることは間違いない。フォーブス誌によれば、2015年のビリオネア・ランキング405位で、総資産額は41億ドルだ。日本円にすると4200億円・・・確かにお金持ちだろう。
 405位ですら、日本円にして4200億円以上と、途方もない金額だが、ちなみに同ランキングの1位はビル・ゲイツ氏で、総資産額は792億ドル。日本人1位は柳井正・ファーストリテイリング創業者兼社長で、総資産額は211 億ドル(親族分も含む)と、日本人でも富豪がいることにびっくりだ。
 まったく、どうしてそんなに蓄えられるのか羨ましい話であるが、そんな中、お金を貯めることに熱心ではないお金持ちもいるのだ。
 というと、浪費家を想像するだろうがそうではない。変わり者と言えば変わり者だが、慈善家というよりも、「お金は社会からの贈り物だから社会に還元するべき」という感じで、実にスマートなお金持ちなのだ。それは、アメリカの俳優、キアヌ・リーブスだ。

 彼は、17歳から映画の世界に入り、映画「スピード」で一躍有名になったのち、映画「マトリックス」3部作で巨万の富と名声を得た。
 アメリカではこういうのはよくある話で、アメリカンドリームを手にした後に、プール付きの豪邸に住み、ブランド物に身を包み、毎日のようにパーティをして・・・という人は結構多い。
 しかし、他のハリウッドスターと違って、彼はそうではない。豪邸にも住まず、ボディガードも雇わず、ブランド品もほとんど身に付けず、時々ボロボロの靴を履いて、ホームレスのような格好で街をうろついたりもしている。実に質素だ。
 その典型的な姿は、彼が46歳の誕生日のこと。自分に買った小さなカップケーキにロウソクを立てて、道端に座って一人誕生日を祝っていたらしい。その後ホームレスに声をかけられると、自分のケーキを分け与えていたのだ。
 まだまだある。彼は高級外車に乗らず、運転手付きのハイヤーでもなく、地下鉄に乗って移動するし、車内では礼儀正しく女性に席を譲ったりする。ステキ!

 そんな彼のお金はどこに行ったのだろうか?

 高級車を買わない、自分の好きなバイクだけに乗る彼は「マトリックス」の報酬の7割を病院に寄付してしまったそうだ。
 さらに「この映画の成功はスタントマンがいたおかげだ」という理由で、スタントマンを務めた12人にそれぞれハーレーダビッドソンをプレゼントし、さらに、2作目「マトリックス リローデッド」で得た報酬1億ドル(約100億円)のうち7500万ドル(約75億円)を映画のSFXスタッフや衣装デザイナーたちに均等に与えたのだ。彼曰く「裏方の彼らが最も大変な仕事をし、最も偉大なのだ」そうだ。
 なぜ、そんなことができるのだろうか?
 彼は言う。「金銭は私にとって最も気にしないものだ。今の富は数世紀も生きていけるほどなのだ。ならば、最も必要とする人に差し上げた方が良い」と。
 すべてのお金持ちに彼の爪の垢を飲ませてあげたいセリフである。実にカッコイイ!

 いったい、どうやったらそういう心境になれるのだろうか。
 それは彼の生い立ちに理由がありそうだ。
 彼は3歳の時に両親が離婚したため、各国を転々とする生活をした。幼少の頃、父親が刑務所に収容されてから、父親と会うことはなかった。27歳の時に親友を亡くした。35歳の時に恋人ジェニファー・サイムが妊娠8カ月で女児を死産。その1年半後、彼女は交通事故で帰らぬ人となってしまった。さらに、彼の妹は重い白血病を患っている。妹のために、自宅に設備の整った病室を作り、彼はできるだけ時間を作って妹の面倒を見るようにしている。
 そう、「マトリックス」の報酬の7割を寄付した病院は、白血病の専門病院だそうだ。

 彼は神か?
 いや違う、彼こそが本当のお金持ちなのだ。
 このような人は、誰かに言われてそうなったのではない。生きている過程において、お金よりも大切なものを見つけたのだろう。

 お金よりも大切なものとは何だろう。
 家族、友達、知人、地域の人々、世界中の人々・・・、自分を後回しにできる、そういう人は実に素晴らしい。
 世界中のお金持ちが、彼にように自分を後回しに考えるようになったら、世界は大きく変わるだろう。
 私も、あまりにもカッコイイ彼のマネがしてみたい・・・もちろんお金はないのだが、そういう気持ちを持ち続けることが大事なのだ。

 あなたはもし6億円の宝くじが当たったら何をするのだろうか?
 2億円の豪邸を建てて、好きなものを全部買って、残りは貯金して老後に備えて・・・。

 それよりもさりげなく7割寄付しませんか?キアヌ・リーブスのように・・・

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成28年11月)

第150号 小池さんの本音の本音?

 小池百合子・東京都知事は9月28日、就任後初めてとなる都議会の定例会で所信を表明した。あれだけ対決姿勢を鮮明にしていた都議会相手でかなり気合の入った内容であったが、「いきなり冒頭解散」という選挙公約に違反したことについては、都民は誰も気が付いていない・・・。

 さて、小池さんの所信表明は安倍ちゃんの所信表明よりもわかりやすいが、それでも腹の中からしゃべっていないので、私が勝手に腹の中の声を(カッコの中)で代弁しようと思う。小池さん、堪忍してや~。

 『豊洲市場の移転に関する一連の流れで、都政(というより利権に群がる都議会議員)は都民の信頼を失った。(おそらくあのドンだろうが)責任の所在を明らかにする。誰が、いつ、どこで、何を決めたのか。何を隠したのか。(自分のことは化粧の厚さも含め全部隠すつもりだが、前の奴らのことは)徹底した情報公開も必要だ。組織全体の体質や決定の方法に(都議会議員の利権が働いている)問題があるとすれば、(自分以外に利権が流れないように)今こそ変えなければいけない。
 都の自己改革(という名で都議会議員べったりの職員を左遷する)とともに、チェック機能を持つべき都議会(というよりも自民党のドン)の意味が問われている。(とはいっても、全部ひっくり返すことは到底できないので)経緯や安全性、経費を検証し、2020年東京五輪・パラリンピックの成功に影響しない(ために、とりあえずカッコだけでも何かしたことにする)対応をする。

 (私の)目的は常に「(税金を納める)都民ファースト(税金を納めない人は都民ラスト)」。(都議会議員の)なれ合いや根回しで丸く収めるのでなく、都民全体の利益(というよりも都民の税金支払い)を最大化するため議論をぶつけ合うのが新しい都議会の姿だ。

 そして「東京大改革」を推進する。肝になるのは(自分以外の)透明化と税金の(自分を支持してくれた人への)有効活用だ。(自分以外の)情報公開、2020年大会、(都議会議員排除のための)内部統制の改善策を検討する。改革の決意と姿勢を明らかにするため(議会で否決されることを知っているので)知事報酬半減を提案した。

 また、(子供がいないといずれ都財政がもたないので)待機児童解消に向け緊急対策を取りまとめた。「保育所などの整備促進」「人材の確保・定着の支援」「利用者支援の充実」の三つを柱にする。区市町村や事業者の早期着工を促す工夫も設けた。今年度の目標にさらに5000人を上乗せし、1万7000人分の保育サービスを整備(して他の県から若い世代を奪い取ることと)する。

 生活と仕事を両立できる職場づくりに向け都の全管理職が「イクボス(いくら働いてもうだつが上がらないボス)宣言」を行った。(公務員の得意技だが仕事をわざとゆっくりやって)夜遅くまで働いている職員を有能(YOU NO お前はいらない)と評価しがちな意識を改め、定時で確実に(残業代カットの)成果を上げる「残業(代)ゼロ」を目指す。

 働き方改革の輪を広げ、介護や障害者就労を支え、(他の府県がなくなっても)持続可能な東京を創る。(土建業界をよいしょするための)道路の無電柱化や液体ミルク普及など被災者目線に合わせた備えで東京の安全・安心を守り「島焼酎特区(くらいしか思いつかないほど何もない)」多摩・島しょ振興で活気を生み出す。

 2020年大会は「もったいない(お金がなくて都政がもたない)」の言葉を世界に広める。国や(あの憎っくきオヤジのいる)大会組織委員会と緊密に連携(という名の威嚇を)し、説明責任を果たしながら(安上がりの)解決法を見いだして(言うことか聞かなければ税金上げると脅しながら)都民の理解を得る。』

 という感じだ。

 さて、小池さんもそうだが日本の政治家はトランプさんやフィリピンの大統領のように本音を言わない。本音を隠してどこまで改革できるのか、大変見ものである・・・。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成28年10月)

第149号 106万円の壁で奥さん走る??

 私の昨年12月のコラムの予言通り、この夏から大不況が始まりそうだ!
 というよりも、あのコラムを書いた次の月に株価大暴落というミニバブル崩壊があり、「来年夏」どころか「すぐ」だったと反省していたのだが、地震を次々当てる村井・早川両教授に負けじと、経済不況を次々当てる「謎のおじさん」として今後も頑張りたいと思う(笑)

 ということで、イギリスのEU離脱が決定し、とうとう世界的に本当の不況が始まるだろうが、まあ政府も企業もそろそろ不況慣れしてくるころだろうから、それよりも家庭が心配だ!

 人口減と円高株安による大不況により、今後企業の業績は一段と悪くなるだろう。リストラは今までの何千人カットどころか、恐らく職員3分の1カットくらいまで進行するだろうし、在宅勤務などの拡大により、残業代カットから給料カットへ、事務所縮小からビル売却へ、合併から倒産へ・・・と留まるところを知らないほど、経済がどんどん縮小していくだろう。
 そうなると、家庭の主婦もいよいよ主婦でいられなくなる日が来る。恐らく50年後は主婦という言葉もなくなっているだろう・・・。
 「主婦? 料理人(シェフ)のことですか?」なんていう時代はもうすぐそこだ!
 ということで、家庭の主婦もいよいよ走り始めたのだが、そこで重い十字架がのしかかる。
 それが103万円と130万円の壁だ!
 パートタイムで働く妻は「ソンしない収入はいくらまでか」について常に高い関心を持っているが、パート収入には、自分の税金や社会保険料、夫の税金などによって「壁」と言われる節目が複数あるのをご存じだろう。
 ここでおさらいすると、「103万円の壁」とは税金の壁のことで、自分の収入に所得税がかかりはじめ、夫の配偶者控除がなくなる境界線だ。
 それに対して「130万円の壁」は社会保険の壁のことで、130万円を超えると夫の社会保険の扶養から外れるため、自分で社会保険料を負担することになる境界線。

 このうち一般的によく知られているのは「103万円の壁」で、税務上、夫の扶養から外れると大きくソンをすると考える人が多く、だから、週3日6時間とか週4日5時間とかにパートを抑えているのだ。
 しかし実際には103万円を超えても配偶者特別控除を受けられるため、世帯の手取り収入に大きな変化は発生しないのだ。
 これに対し「130万円の壁」は、壁を超えた時点で妻に社会保険料負担が発生するため、手取り収入に大きな影響を及ぼすことになる。だから、週5日8時間パートで働くという主婦はほとんどいないのだ。
 しかし、その壁に新たな壁ができるのをご存じだろうか?
 それが、今年10月から新たに始まる「106万円の壁」だ。
 パートタイマーの現行の厚生年金加入基準は「労働時間が正社員の4分の3以上(週30時間以上)」だが、今年10月からの法改正により次のように変更される。(ただし学生は適用除外)

 ①労働時間週20時間以上
 ②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
 ③勤務期間1年以上見込み
 ④従業員501人以上の企業

 上記の要件を満たすパートタイマーは社会保険に加入し、厚生年金・健康保険・介護保険の保険料を負担することになってしまうのだ。130万円が106万円とは、大変な激震だ!!

 具体的に対象となる働き方をイメージしてみよう。
 1日5時間、週4日働くと、労働時間は週20時間。時給が1100円なら、月額8万8000円で対象者になってしまうのだ。こういった働き方をしているパート主婦は結構多いはずだから大変だ!
 ただし、当面は「従業員501人以上の企業」が対象なので、該当するのは25万人程度と見込まれている。
 ということで、まずは大企業をやめる主婦が続出するだろう。大企業もパートの主婦を集めにくくなるので大変だ。
 まあ、従業員501人以上の大企業は、今後どんどん縮小して、ほとんどなくなってしまうだろうが・・・。そうなると、501人が301人、201人と下がってくるかもしれない。そして最後は全企業対象に。そうなる日も近い。

 さあ、これで選択肢は3つだ。
 103万円までに抑えて働くか、106万円以上130万円まで小さな会社で働くか、130万円以上バリバリ働かくか・・・・。
 いっそのこと当面のことは無視して、妻もバリバリ働き、厚生年金保険料を払ってしまうという人が増えるかもしれない。そうなれば、将来の年金額は確実にアップするのだから、長期的な視点で働き方を考えるのもよいだろう。
 いずれにせよ、家族会議の悩みは尽きないか・・・。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成28年7月)

第148号 一億総貧困社会にまっしぐら!

 「世界のトップ62人の大富豪が、全人類の下位半分、すなわち36億人と同額の資産を持っている」ということをあなたはご存じだろうか?

 これは、国際貧困支援NGO「オックスファム」の報告で明らかになったことなのだが、大ざっぱに言えば、1台の大型バスに収まる程度の金持ちが、世界の人口の半数を養える額、約180兆円を持っているということなのだ。

 世界ということであまりピンと来ないかもしれない。

 だったら、日本国民の半数が持っている資産と同じ額を、たった一人の日本人が持っているとしたら、あなたはどう思うだろうか?

 実際には、まだそこまではいっていないが、もうすぐ日本でもそのような現象が起きそうなのである。

 今から約25年前(1990年)以降は日本国民の年収は下がり続け、戻ることなく現在にいたっている。そして平成26年にはついに年収300万円以下の人口が全給与所得者の4割(40.9%)を占めているのだ。つまり日本の労働人口の40.9%は年間の収入が300万円以下であるということになる。

 どうして日本はそこまでダメになってしまったのか?
 その大きな理由は、政治の失敗による不況だ。高度経済成長がいつまでも続くと信じたバカな政治家たちが、将来の対策もろくにしないで自分たちのことばかり考えてきたツケである。

 この不況の中で非正規社員やパートタイマーが増加し続け、さらに急激な人口減が進む中で生産労働人口が減少したことも理由になるだろう。
 これだけ不況に陥っているのに、ここで非正規社員をなくそうとしたり、時給や給料を上げようとする政策を打ち始めたことは、もはや体力のない人に急きょマラソンに出場させることと同じだ。もっと言えば、貯金のない人に家をローンで無理やり買わそうとしていることと同じなのである。

 そう、もちろん、もうすぐ日本経済は破たんするだろう。経済を知らない政治家たちに政治を任せた国民のせいかもしれない。自業自得だ。

 一方、世界の総資産額ランキングのトップは、マイクロソフト創業者、ビル・ゲイツ氏の約9兆円。以下、メキシコの通信王カルロス・スリム氏、投資家ウォーレン・バフェット氏と続く。日本のトップであるファーストリテイリング・柳井正社長は、資産総額約2.5兆円だ。

 著書『21世紀の資本』が日本を含め世界中でベストセラーとなった、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏は、同書の中で「資本主義社会では、長い目で見ると、格差がどんどん広がってゆく」「20世紀は、戦争などの影響でたまたま格差が小さくなっただけ」と、科学的裏付けをもとに主張し、大反響を呼んだ。

 そんな大富豪が、数千万円、数億円をじゃぶじゃぶ使う一方で、世界には1日100円足らずの生活費で暮らす極貧層が約12億人、200円以下で暮らす人がおよそ30億人いる。全人類の半分近くは、雀の涙のような収入で何とか生きているという状況なのだ。

 日本でも安倍ちゃんが声を大にして「一億総活躍社会」と言い続けているが、実は人口減による労働生産性が減り続けていて「一億総貧困社会」が確実に広がっているからこそ、「一億総活躍という名の一億総労働社会」にシフトさせようとしているのだ。減った分の労働者を主婦や高齢者で補うしか手立てがないのだ。

 貧困層は確かに貧困だが、日本のサラリーマンは中流だからそんなに心配ないと思っている人も多いだろう。
 本当にそうだろうか?

 中間層と呼ばれる一般的なサラリーマン世帯が貧困層へシフトチェンジし始めていることをあなたは知らないだけである。

 中流と言われている年収600万円という数字は一見して十分な年収に見える。
 結婚をして家族を養い、ある程度の文化的娯楽を楽しむには十分な給料だ。いや正確に言うと「十分な給料だった」。
 今は違う。実は年収600万円でも家計はギリギリという家庭も少なくないのだ。

 例えば一戸建てに家族と住む年収600万円のサラリーマン世帯の場合、年収600万円の中から税金や社会保障費を除くと450万円程度になる。そこから住宅ローン(150万円)、生命保険(50万円)、子供にかかる学費や教育費(200万円)を引くと残りは50万円。

 この残り50万円の中から食費や雑費、交際費や燃料費などを捻出しなければならない。家族4人が年間50万円で暮らして行かなければならないとなるとギリギリ?いや完全な赤字だ。
 つまり、中間層はもはや破たん寸前であり、貧困層といっても過言ではないだろう。

 中流と下流が大半の日本では、その影響がもろに子供に来ている。
 日本の子供の貧困率は先進国の中でも最悪のレベルなのだ。全国の平均所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子供の割合は過去最悪となり、今では6人に1人が貧困に直面している。

 これで先進国とはおこがましい。私は、日本はまさに「過去先進国」「下降途上国」がふさわしい呼び名だと思う。

 私が総理大臣だったら堂々とそれを認め、先進国首脳会議(サミット)から早々に抜けて、「下降途上国からの脱却と発展途上国への転換」と宣言し、同レベルのアフリカ諸国や東南アジア諸国とともに、なりふり構わない経済政策を実行するだろう。

 日本にとって必要なことは「過去の亡霊」を早く忘れて原点に戻り、戦後の復興期のように、明日のご飯にありつくために、着の身着のままに地べたを這ってでも戦うことが必要なのである。
 もちろん自分の政党のポスター標語は「ぜいたくは敵だ!」だ(笑)

 「ぜいたくは敵!なんて、なんて時代遅れな」・・・という人もいるだろうが、そう思うあなたこそ時代遅れだ。
 実は、子供の貧困は深刻なものであり、学校給食が唯一の食事という子供、保険証がないことから病気や怪我で病院に行けない子供、家庭崩壊からホームレス同様の生活を送っている子供などが相当増えていることを知らないからそんなことが言えるのだ。

 子供の貧困にはさまざまな理由があるが、中でも問題になっているのが母子家庭や父子家庭の貧困であり、これは世界でも1位の貧困率なのだ。

 一人親の場合、なかなか貧困から抜け出せないという現状があり、3組に1組は離婚する時代を迎えつつあるが、まさに今後もっと子供の貧困は増えそうだ。

 ただ、草食系が増えて、結婚しない人が増えるのはかえって幸いなのかもしれない。
 結婚→離婚→子供の貧困、未婚→子なし→貧困なし、となるから。
 でも、未婚や子供を作らない人が増え、人口がどんどん減ると、ますます日本は経済破たんを起こすことになるから、それも本当は困るのだが・・・。

 さて、世界でも有数の経済大国となった日本が、今や世界でも有数の下降途上国になりつつあるが、とうとう貧困率は世界第4位となってしまったことをあなたは知っているだろうか?

 不思議なことに日本では毎年新しい億万長者が生まれているから、平均所得はこういった一部の億万長者の影響で底上げされてしまうので、平均所得や平均年収を見ると、一見豊かな生活を送っている人は多いのではと思ってしまうが、実はそうではないのだ。

 実際には日本国民の6人に1人は平均所得の半分以下で生活をしており、平均所得に満たない収入の貧困層がかなりの数で存在しているのだ。そして生活保護受給者もますまず増加の一途である。なのに億万長者は毎年生まれている。
 だから、バカな政治家たちもなかなか深刻に考えようとしないのである。早く貧困社会を認め、「下降途上国からの脱却と発展途上国への転換」と宣言し、なりふり構わない経済政策を実行しないと手遅れになるだろう。

 前号でも話したように、中流という名の貧困層がどんどん増え、中間層が消滅することで貧困層は更に増加していくのである。このことから、日本は一部の富裕層と大多数の貧困層という、まったく好ましくない二極化になってしまうのである。

 富裕層と貧困層が激しく二極化することによって日本人の未来はどうなってしまうだろうか。
 実際に貧困の格差が進むことによって、考えられるような日本総貧困社会のパターンは以下の通りだ。

 まず、雇用や収入の不安定さから結婚をする人が減り、少子化がさらに進む。
 しかし、中には結婚し子供を作る珍しい人もいるが、子供を産んだものの生活能力がなく貧困に陥り子供への虐待が増える。
 さらに、経済的な問題から勉強をすることができない子供たちが社会に出ることで日本の生産力はますます低下する。

 こうして一億総貧困社会が完成するのである。

 私の考えが間違っているかどうか、100年後の日本を知ることができる人はいないから判断できないだろうが、これらはすでに起こっている問題の一部であり、NHKスペシャルでも頻繁に取り上げていることを考えれば、どうも嘘ではないということが分かっていただけるだろう。

 今後ますますこういった問題は深刻化し、働いても働いても生活が楽にならないという状況は更に悪化していくのだ。

 日本では今、上位1%の富裕層が、国富のおよそ1割を持つようになった。豊かな「一億総中流社会」が終わり、貧しい「一億総貧困社会」になりつつあることは、あなたもある程度は気づいているだろう。

 何かと近隣の外国人を非難したり、かと思えば「日本はやっぱりすごい」「日本人は優秀だ」と自画自賛したりする近年の日本の風潮は、実は、もうすぐ「繁栄が終わり、大恐慌がやってくる」という予兆を誰もが感じ取っているからなのかもしれない。

 著書『これからの「正義」の話をしよう』がベストセラーになった、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授は、「カネを持っているということが、休暇のあいだに贅沢をしたり、豪華なヨットや自家用飛行機を持つ権利がある、ということだけを意味するのであれば、あまり大した問題ではない。でも実際には、高度な教育、手厚い医療、安全な暮らしといったものも、金持ちほど手に入れやすいわけです。政治権力への影響力もカネ次第です。事実、大富豪がやると決めた戦争で、今も庶民や貧困層が死んでいる」。という。

 サンデル氏が教えるハーバード大学でも、学生の親の平均年収は約5000万円。金持ちの子は最高の教育を受けてエリートになり、ますます富と権力を得る。貧乏人の一族は、何代経っても貧乏なまま。今や、それが米国の常識なのだそうだ。

 経済学者のピケティ氏は「金持ちと貧乏人の格差が、日に日に大きくなってゆく。すでに日本も、そんな超格差社会へ突入している」と、警告している。

 「日本の場合、少子化で人口が減っていることが大問題だ。子供の数が少ないということは、これからは相続のとき、一人の子供に多額の資産が集中する。当然ながら、金持ち一族に生まれた子と、庶民の家に生まれた子では圧倒的な差が出てきてしまう。出生率を上げない限り、日本国内の格差は今後、広がり続けるだろう」と言う。

 しかし、日本の政治家は全く危機感がない。
 国民に対しては、不安を紛らわそうと「グラスタワーのてっぺんに注がれたシャンパンは、グラスのふちから溢れ出し、やがて最下層まで流れ落ちる(トリクルダウン)。同じように、大企業が潤えばカネは末端まで行きわたり、庶民も豊かになる」と言い続けている。

 だが、アベノミクスの主唱者の一人、元経済財政担当相の竹中平蔵氏や安倍総理以下、政権幹部もトリクルダウンを否定するようになっているのをご存じだろう。

 その表れが、今春から所得の低い65歳以上の高齢者に配られる「臨時福祉給付金」だ。
 予算額およそ3600億円。これで1250万人に一律3万円を支給できるというのだが、ファーストリテイリング・柳井正社長が持つ2.5兆円のうち、5分の1にも満たないが・・・。
 それでも、この給付金は参議院選挙対策だとマスコミやほとんどの国民が分かっていながらもなぜやるのか。
 それはもう、格差を埋める手段がこれしかないからなのである。
 1%の富裕層が、国富のおよそ1割を持ち、99%の貧困層が誕生しつつあるが、その格差を埋める手段がないことを宣言したようなものである。
 「一億総活躍社会」という言葉を聞くたびに「一億総貧困社会」と腹の中では思っている政治家たちのことが腹立たしい。しかも、それを回避する手段を放棄して、高齢者や学生、子供にお金を配り続けるだけの政府でよいのか?

 もちろん、自力で成功した経営者は世の中に貢献しているから、お金をたくさん稼いでも悪くはないと思う。彼らは大きな会社を作り、何万人という雇用を生んでいる。そして、多くの家族を養っているのだから。

 ただ、日本では海外の富豪のように寄付をするなど、儲けた分だけ社会に還元するという文化が根付いていないことが、日本の金持ちの最大の問題点だ。
 どんな億万長者も、その事業にカネを払ってくれる庶民がいるから成功できたのだ。
 一人の優秀な人が砂漠の真ん中で事業を起こし、そこで砂嵐を相手に商売をしても成功はできない。
 だからこそ、自らの手で、グラスタワーのてっぺんにシャンパンを注いで、最下層まで流れ落ちる(トリクルダウン)ようなことをするべきなのである。それが寄付だ。

 もし、今後も日本の富裕層が今のようにそんなことに興味を持たないで、ごく少数の人々が、圧倒的な富と力を独占していくとどうなるだろうか。

 恐らく、庶民の怒りが形を変えて噴出してくるだろう。そう、それがテロだ。

 この「異常な貧困社会」がますます大きくなっていくということは、その危険を常にはらんでいるということの裏返しなのかもしれない。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成28年4月)

第147号 日本に寄付文化は根付くのか?

 先日、日本ファンドレイジング協会主催のファンドレイジング大会が開催された。
 私も、財団として出展し、基金設立のPR活動をしてきたのだが、主催者には大変申し訳ないが、マンネリ化しているような気がした。
 参加者数も、こういう毎年恒例の行事にありがちだが、当然主催団体は増加していると発表するだろうが、私の感想では減っていると思う。というのも、私の知り合いも、新鮮味に欠けてきて、毎年参加者は減ってきているから、そう思うのかもしれないが・・・。
 このイベントは、寄付文化の醸成と寄付社会の推進のために毎年開かれるものだが、一向に日本中に寄付ブームは起こらない。もちろん、東日本大震災のような突発的な大災害などがあれば別だが、それは寄付文化が根付いたことにはならないのだ。
 アメリカのように、たとえ豊かでない人でも募金することが癖になっているように、日本人にも素晴らしい活動をしている団体を自分のお金で応援してあげようという文化がなぜ根付かないのか、それを変えていこうとして大々的に活動しているのが日本ファンドレイジング協会であり、今回のファンドレイジング大会なのだ。
 しかし、参加者のほとんどが寄付をもらいたいというNPO団体がほとんどであり、講演の中身も、ほとんど「どうやったら寄付が増えるか」「寄付を受けるための様々な手法」に集中している。
 私はその中でも、自分に関係する「遺贈」についての講義を2つ聞いたのだが、内容は昨年と全く同じだった。初めての参加者もたくさん来るので同じ内容でもよいのだが、毎年参加している人にとってはちょっと物足りないかもしれない。そのあたりの工夫も欲しかった。
 登壇する人もほとんど毎年同じだ。これも、「2年連続同じ講師を登場させない」としたら、内容もガラッと変わってきて面白いだろう。ぜひ参考にしてほしい。しかし、この分野で活躍している人はあまりにも少なく、2年連続はダメというルールを作ったら、2年目は講師がいないということになるかもしれない。そのあたりも寄付文化推進の大きな課題かもしれない。
 さて、また政治の話で恐縮だが、この前の国会でも面白い攻防があった。
 私が毎回のように取り上げている、安倍ちゃんが私たちのような助成財団の活動をまねて、子どもの貧困対策のために寄付を募っている「子供の未来応援基金」のことだ。
 鳴り物入りで登場したこの基金だったが、思うように寄付が集まらない。そこで、民主党の蓮舫代表代行が参院予算委員会で費用対効果の悪さを指摘していた。「2億円以上の税金を使って呼びかけているのに、集まった寄付は約2千万円。その2億円を基金に入れれば良かったのではないか」と追及したのだ。なるほど確かにいいところをついている。
 しかし、平成21年の総選挙で、麻生内閣が倒れ、民主党が大勝し、歴史的政権交代が起きたにもかかわらず、見事にそれを裏切って国民を地獄のような暮らしに向かわせた政党の議員が何を言ってもあまり響かないのは、悲しいかな時代の流れだろう。寂しいものだ・・・。
 話を元に戻すが、国がお金をかけて宣伝しても、寄付はそう簡単に集まらない。では、どうすればよいのか。実は答えは簡単なのだ。寄付を生活の一部にすることなのだ!
 小さいころから募金やチップに慣れている欧米人に寄付が多いのは、大それたことをしているという気持ちではなく、寄付することが空気を吸うことと同じくらい簡単で大事なことだということが身についているからなのだ。
 だから「寄付をしないと税金を2倍にする」「寄付をすれば税金が安くなる」というような飴とむちのような政策をいくら作っても、それほど大きな変化は生まれない。それよりも、日常の生活の中で、誰でもさりげなく寄付をする習慣を身につけさせるようなシステムや政策が必要かもしれない。
 例えば、どこかの公共的なサービスを利用するためには、どこかの団体や分野に寄付をしなくては利用できないようなシステムがあってもよいだろう。図書館をタダにするのではなく、利用者は常に10円とか100円の小銭を、自分で選んだ団体に寄付して本を借りるようにするとか、どこかの団体に10円寄付しないとインターネットを利用できなくするとか、ちょっとした工夫で自然と身についてくるのではないだろうか。

 ということで、これを最後まで読んだ皆さんは、とりあえずどこでもよいので10円寄付しておいてください(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成28年3月)

第146号 年頭所感、三本のホラ

 本年1月1日の安倍ちゃんの年頭所感が分かりにくいという人が多い。一億総活躍って何?何が言いたいの?何を目指しているの?というのがもっぱらの評判だ。
 そこで、私が「独断と偏見」で、安倍ちゃんの年頭所感をわかりやすく皆さんに解説したい。カッコ部分が本当の気持ちを私が予想し付け加えた。もちろん、憶測100%ということを予め断っておくが。

 『本年、新たな挑戦が始まります。少子高齢化という(税収が大幅に減ってしまう)構造的な課題に、真正面から、立ち向かう。「一億総活躍(という名の労働)社会」への挑戦です。
 半世紀前、初めて、日本の人口が一億人を超えました。高度成長の真っただ中で、(学歴社会で頭の良い人と少々の)頑張った人が報われる、今日よりも明日はもっと豊かになる。(若い人には信じられないと思いますが)その実感があった時代です。
 半世紀後の未来でも、人口一億人を維持する(ことはもちろん無理ですが、)お年寄りも若者も、女性も男性も、一度失敗を経験した人も、難病や障害のある方も、誰もが、(年金や補助金でノウノウと暮らすことができないような)「一億総活躍(という名の労働)」の社会を創り上げることは、今を生きる(まだ年金がもらえる)私たちの、(年金がもらえなくなるであろう)次世代に対する責任です。
 「(ハッタリですみませんが)戦後最大のGDP600兆円」、「(絶対無理とわかっていて申し訳ありませんが)希望出生率1.8」、「(厚労大臣もビックリの)介護離職ゼロ」という3つの明確な「的」を掲げ、新しい「三本の(ホラ)矢」を放ちます。いよいよ(もう障害があっても高齢でも休ませない)一億総活躍(という名の労働)・元年の幕開けです。
 いずれも、(ほとんどハッタリですから)最初から設計図があるような、簡単な課題ではありません。困難は、もとより(国民が本当のことを知ったらかなり怒ることも)覚悟の上です。しかし、「未来(という名のお金や安心)」は、(安々と行政や)他人から与えられるものではありません。私たち(は議員年金があるので関係ありません)が、(皆さんは年金も補助金もカットしますので、死ぬ前まで働き続けて)自らの手で、切り拓いていくべきものであります。
 そのスタートを切る本年は、(参議院選での)挑戦、(腹痛を治す)挑戦、そして、(国民をだます)挑戦あるのみ。未来へと、果敢に、「挑戦する一年」とする。その決意であります。』

 どうです?こうするとわかりやすいでしょう。結局はお金がないから、高齢者も主婦も障害があっても、みんな補助金や年金をもらわないで働き続けろということなのだ。
 さらに、安倍ちゃんは民主党政権が作った「新しい公共」ではなく、自分が作った「共助社会」を目指すために「全員参加で」と断言しているが、この共助社会というのもわかりにくい。
 しかし、これも先のような解説を付けると、みるみるわかってくるのである。では、昨年の安倍ちゃんの「成長スピーチ」を年頭所感のように勝手に憶測をつけてみよう。

 『我が国経済を再生(することは無理だと思う)し、成長を持続的(に徐々に下降させるよう)なものとするためには、「すべての人材が、それぞれの持ち場で、持てる限りの能力を活かすことができる「(高齢者も主婦も障害者らも働く)全員参加」が重要であり、(自分たちの責任である)自助・自立を第一としつつも、自助・共助・公助のバランスのとれた政策を検討していく必要がある。
 (補助金や年金という)公助について財政上の制約がある(のでもうやめたいと思う)中で、(人口減でどんどん廃れていく)地域の課題に対応し(無駄な努力であっても)活性化を図っていくためには、(行政の力を一切借りないで、みんなで助け合う)共助の精神によって、人々が(誰かのお金で誰かを助け)主体的に支え合う活動を促進することで、活力ある社会にしていくことが必要である。』

 我が愛すべき安倍ちゃんには迷いも狂いもない。目指すべきところの一貫性はある。本当のことをを知らないのは、悲しいかな国民だけなのである・・・(涙)
 しかし、百歩譲って「共助」は我々非営利団体の独断場である。「共助社会」が最後の砦だとしたら、それは何としても成功させなければならないだろう。
 私も「ホラ」ばかり言っていないで、その実現のために全力で取り組みたいと思う。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成28年2月)

第145号 寄付するアメリカ人、もらいたがる日本人

 昨年の暮れに、若干31歳のフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が、保有するフェイスブック株の99%、450億ドル(約5.5兆円)相当を「人の可能性の追求と平等促進」のために寄付することを明らかにしたのはご存じだろうか?
 彼と奥さんの名前をもじった「チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ」を設立して、ここを通じて教育や医療、ネットの普及などの分野で慈善活動を支援してくのだという。
 5.5兆円がどれだけすごいお金なのかもよくわからないほど、常識を完全に超えている。
 長女誕生を祝して・・・ということだが、それなら10人くらい子どもを作ってほしいと願ったのも私だけではないだろう。それにしても素晴らしいことではないか。

 しかし、これは売名行為、企業宣伝、税逃れだなどと批判する人も多いが、私はそう思わない。
 巨額の富を持つ人でも、日本人だったら、お金を外国の銀行に預けたり、地下室や仏壇の後ろに隠したり、節税のために有能な税理士を雇って、知恵を絞らせたりする人が多いだろう。慈善団体にポンと寄付をしてしまうなんてことは、なかなかできないものだ。
 さらに日本の場合、寄付というと、「あげる」というよりも「もらう」と考えてしまう人やNPO団体も多いだろう。
 その点アメリカ人は違う。お金がある人もない人も、一定のお金は社会のために寄付するものだという考え方が浸透していて、自然とそういうことができるのだ。

 しかも、ザッカーバーグ氏はこれが初めてではないのだ。これまで教育、医療、移民を中心に慈善事業を行ってきている。このように、お盆から水があふれだしたら、それは土にしみこみ、そのまま社会に還元されていくというのが、彼らの考え方なのだろうか?
 覆水を一生懸命お盆に返そうとしている日本人を見ていると、情けないを通り越して悲しくなってくる。

 ただ、アメリカの場合、寄付に対してものすごく大きな優遇税制が適用されているのも見逃せない。
 例えば、ある人が百ドルで買った株式が値上がりして千ドルになり、その株式をそのまま慈善活動へ寄付したとしたらどうだろう?
 その場合、その人は資産益にかかる税金を払わなくてよいだけでなく、千ドルの控除が受けられるのだ。寄付を受けた慈善団体も、千ドルの株式をそのまま売ってしまえば資産益にかかる税金を納めなくてよく(慈善団体は資産益に対する納税の免除対象)、千ドルが手元に残る。寄付する側もされる側も、win-winの結果になるのだ。
 この話を日本人にすると必ずこう言われる。「でも、せっかく百ドルで買った株式を全部寄付してしまったら、千ドルの損とは言わないまでも、間違いなく百ドルは損しているよね」と。
 あなたはどうだろうか?
 あなただけではない。ほとんどに人はそう思ってしまうだろう。まるでこの例はリトマス試験紙と同じで、そう考える人には、ザッカーバーグ氏の考え方は理解できないだろう。
 彼はきっとこう考えたのだ。
 こんなに儲かることができたのも神様のおかげなのだ。でもこれを自分のものにしてしまったら、そこで幸せは終わる。これを社会に還元すれば、そこから目が出て花が咲き、もっともっと大きな果実をつけることになるだろう・・・と。

 日本の場合は、残念ながらこれと同じように値上がりした株式を寄付したら、みなし譲渡課税というものが課せられてしまう。さらに、寄付する個人の所得控除にも上限があるのだ。
 私が代表をしている公益財団法人にも税制優遇があり、これと同じように、寄付を受け付けてそれを社会に還元するような助成活動をしているが、個人は所得の約4割まで控除できるが、企業が寄付をした場合の税の恩恵はそれほどでもない。
 前回の会報にも掲載したが、安倍ちゃんも我々のような財団の真似をして、子どもの貧困対策として基金を作り、国のお金を使わずにNPO法人などへに助成するということで、経済界に寄付を呼び掛けているが、全然集まっていないらしい。それもやっぱり税制が悪いからではないだろうか?メンツ丸つぶれだ。
 政府もこの辺りはもう少し考えてもよいのではないだろうか。

 さて、今年はどのような年になるだろうか?年初から株が暴落して、不景気の波が刻々と押し寄せてくるような気がしてならないが、そんな年だからこそ、明日への期待を考えてほしい。

 慈善活動に寄付することは、世の中に変化をもたらすだけでなく、あなたの納税負担を減らすこともでき、幸せをみんなで共有できる究極の方法だと思う。
 ザッカーバーグ氏に刺激を受けたなら、今日からでも始めてみませんか?

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(平成28年1月)
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