第186号 あなたも「スルー」する??

 謹賀新年 今年もよろしくお願いします。

 NHKのニュースを発端に「忘年会スルー」という言葉がいま話題となっているのはご存知だろうか?
 意味は簡単。「忘年会スルー」とは、年末に職場などで開催される忘年会に参加しないことで、友人や同窓会などの忘年会のことではない。
 誰もが知っているSNSのラインで始まった「既読スルー」のように、「無視する」といった意味だと思うとわかりやすい。

 そして、この「忘年会スルー」。特に若い世代からはかなり支持されており、「一刻も早く日本の新しい常識として定着してほしい」という声も少なくない。
 かねてから「金を取られて、業務時間外に上司の説教やくだらない武勇伝を聞かされるなんて拷問・・・」らしい。
 「えっ、忘年会に出ないなんてそんな勝手なことが許されるのか?」という年配の方もいるだろうが、今はまさにそういう時代なのだ。

 ではなぜ忘年会に参加しないのだろうか?
 参加しない人にはいくつか理由があるだろうが、その組織で働いているからといって、必ずしもその職場の人を好きか?と言えば、あまり職場に馴染めず、嫌いな人もいたりすれば、やはり行きたくないだろうし、他に時間を使った方が有意義だという人もいるだろう。
 つまり、忘年会スルーは「労働者というのは、就業時間にきちんと仕事さえすれば、他の時間はどう使おうが自由なはずだ。仕事なら多少の我慢もわかるし、組織が会の費用を負担する、あるいは育児中などの職員に配慮して就業時間内に社内で気軽な会を開催するのはいいと思うが、就業時間外の飲み会を、お金を払って我慢してまで出るなんて、貴重な時間と労力と精神力とお金の無駄」なのだ。
 何ともさびしい時代ではないか・・・。 こんな奴らと仕事しなければならない上司も大変だ。

 さて、私はどうかというと、「忘年会スルー」や「社外行事スルー」はあまり良くないと思っている。
 その理由は、何でも反発したり、自分の意見を通そうとする最近の傾向は、組織そのものを機能させなくなるからだ。
 最近の若者のように、嫌なことや面倒なこと、興味のないことを「スルー」してやり過ごすだけでいいのか?と思ってしまう。
 だって、忘年会レベルならいいのかもしれないが、もっと大切なことまで「スルー」する風潮があるのも事実だからだ。
 選挙や自治会活動などもそうだが、恋愛や結婚、子育てなども「スルー」する人が多いことは、まさに人類の危機だろう。

 もちろん、だからと言ってパワハラやセクハラを肯定している訳ではない。
 忘年会がレクリエーションの集いになっておらず、相も変わらずパワハラ、セクハラ、アルハラの温床になって会社もまだまだ存在するようだが、「嫌と言えない」「間違っていることに対してNOと言えない」「何でも我慢しなければならない」ということではない。悪いことにはきっぱりNOと言っていいに決まっている。
 しかし、大して嫌なことでもないものでも、気が進まないとか何となく興味がないから「スルー」してよいわけではない。
 会社や学校の決まりを簡単に自分流に曲げたり、無視したりする者が多くなっているように感じるが、それがいつか自分が上に立つときに自分に降りかかってくることをまだ知らないから、そんなことができるのだ。
 いつかリーダーになった時、チームの士気を高めようと、ボーリング大会やカラオケ大会を開催したとして、そこに誰も来てくれなかったらどう思うだろうか?
 自分がしてきたことの裏返しがそこにあるのだ。
 「皆のことを思って行動する人に従わない人には、結局誰もついてきてくれない」のだ。
 それとともに、何でも権利権利と声高に叫べば許されるという風潮も完全におかしい。
 私が教える大学でもまったく同じことが起きている。
 誰も言わないので私が暴露するが、人口減で生徒集めが大変なのと同時に、下にいる者の権利を重要視する日本社会の間違った政策のお蔭で、最近は、教員よりも学生の方が立場が上になっている。
 訴えに対しては、それが理不尽であっても、何でも聞かなければならなくなっているのだ。

 一番ひどい例を教えよう。
 「自分はパニック症候群ではないが、それに近い症状があり、人が周りにいると落ち着かないので、一番後ろの席にして、自分の前の席を空けておいてほしい」という学生がいる。
 そんな勝手な言い分が通ると思うだろうか?
 そう、通ってしまうのだ。
 つまり、学生様の言うことは殿様の発言と同じ。それを聞かなければならないのだ。
 こんなことが通るなら学生はどんどん助長するだろう。
 「自律神経失調症かもしれないので、私だけ試験は免除してほしい」とか「発作がたまに起きる可能性があるので、私だけは当てないでほしい」とか、そのうちきっと「躁うつ病の傾向があるので、テンションが下がらないように美人でグラマーの先生に変えてほしい」などなど・・・。
 間違いなくそういう時代が来ると私は断言する。

 会社も同じだ!
 「上司がキモイ」とか「隣の席の服装の趣味が合わない」「同僚の目つきがイヤラシイ」という理由でしょっちゅう異動や戒告の連発だ。
 大学も成り立たなければ会社もほとんど機能しなくなり、いずれ日本は破滅するだろう。
 「人権」というものがどんどん拡大解釈されてきて、「人剣」となり、日本はついに「人剣学生」や「人剣職員」がはびこり、「人剣社会」の到来になるのだ!
 上に立つものはいつ切られてもおかしくない!

 えっ、私の会社はどうかって?
 うちは大丈夫!
 だって、うちは忘年会も社員旅行も歓送迎会も研修旅行もボーリング大会も花見も存在しない、まさに「行事スルー」なのだ(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2020年1月)
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