第228号 今日もどこかで運転見合わせ?

 先日、大阪出張の際、約束の時間まで少し時間があったので喫茶店で時間を潰すことにしたのだが、隣にそれぞれご主人に先立たれた70代後半くらいの高齢の御婦人がお二人座って食事をしていた。
 最初は二人で、私たちもよくここまで長生きできたと讃え合っていたのだが、その理由が、「交通事故にも遭わず、通り魔にも遭わず、詐欺にも騙されずに長生きできた」と感慨深げに話していたのが印象的だった。
 普通は「健康で長生きできてよかった!」だと思っていたが、「通り魔にも会わず、詐欺にも会わず・・」というところが現代的だなあと笑ってしまった。
 それほど高齢者を取り巻く環境は、年々いろいろな意味で厳しくなってきているのだろう。
 その証拠に、その後は、電話にどれだけ詐欺電話がかかってくるか、携帯のショートメールにもこんなのが届くと、詐欺電話や詐欺メールの自慢大会が始まってしまった。
 詐欺だとわかっているので安心したが、認知症などが進むと、それに気が付かなくなってしまうのかと思うと、少し怖くなってきた。
 どれだけ高齢者を騙そうとする輩が多いのか、本当に許せない時代だ。
 中国では、麻薬の取扱いで一発死刑だが、日本もそれに見習って、高齢者騙したら一発死刑とかにしたらどうだろう。
 だって、高齢者を騙す会社や詐欺をする人は、生きていてもほとんど意味がないし、存在していること自体、社会のガンだろう。
 病気のガンは、何としても取り除こうと本人も病院も躍起になっているが、社会のガンは、政府も警察もなかなか消し去ることができないというのは何とも皮肉な話だ。
 今日もどこかで、振込詐欺やロマンス詐欺の被害者が続出しているだろう。本当に悔しい。
 さて、しばらく詐欺メールで盛り上がっていた高齢のご婦人たちだが、その後は、電気製品の話に移っていた。
 エアコンを二人とも最近買い替えたらしく、それがとても快適だそうだ!よかったよかった。
 電気代がもったいないからと言ってエアコンを節約する高齢者も多いと聞くが、お金よりも命の問題だから、寒い日や暑い日は、朝から晩までエアコンをつけておいて欲しいものだが、それがなかなかできないのも高齢者の特徴だろう。
 でも、最新式のエアコンなら、前のエアコンと比べて電気代も恐らく5分の1くらいに下がっているだろうから、その分5倍くらい使ってほしいのだが・・・
 話は、エアコンの次は電子レンジだ。
 そっちはまだ動くから買い替えていないらしいが、最近変な音がするらしい(笑)
 「電子レンジは大事よー」と2人で語気を強めていたのが不思議だったのだが、その後の冷凍庫の話で納得した。
 なんと冷凍庫には、ごはん、食パン、うどん、カレー、豚まん、大福と何でもかんでも残り物は冷凍庫に入っているらしいのだ。
 食材の余りは、片っ端から冷凍庫に入れてしまうようだ。
 そう!そういう意味で、冷凍したものを解凍するために電子レンジが重要なのだ!
 「何かあったら困るものね?」と2人で納得していたが、何かとは何なのだろうか?
 阪神大震災?
 いやいや、恐らく、身体の具合が悪くなって買い物とかに行けなくなることなのだろう。
 そうなると、冷凍庫と電子レンジの出番なのだ!
 でも、具合が悪くないと毎日買い物に行って、余ったらそれも冷凍庫行きだろうから、冷凍庫にしまったものはいつ出てくるのだろう。
 話を聞いていると、とにかく何でもかんでも冷凍庫に入れるようで、そんなに溜めておいて商品は大丈夫なのだろうかと思っていたら、次は賞味期限と消費期限の話だ!
 消費期限と違って、賞味期限到来までに冷凍すれば、賞味期限はそこでいったんストップするから、もう賞味期限は関係ないらしい・・・
 なるほど、それが高齢者の常識ってやつか!
 そして、そんなパンパンの冷凍庫の強敵は保冷剤だ!
 いつ使うのかもわからないのに、保冷剤が場所をかなり取っているようだ。
 保冷剤というのは、冷凍庫に入れるまでに溶けないようにお店でもらうものだから、冷凍庫に入れたら保冷材は不要になるので捨ててよいはずなのだが、それもどうしても捨てられないようで、「いざという時に必要だから捨てたらだめ」と、いざという時って何かと思ったら、「冷蔵庫が壊れた時」らしい(笑)
 それもわからなくもないけど、いつ来るかわからない冷蔵庫が壊れる日のために保冷剤をしこたま冷凍し続けるっているのも、やはり、「もったいない高齢者」の特徴なのだろう。
 高齢者の「いざという時」という口癖は割と頻繁に出てきるのだが、いざということがないように、電気製品は適度に買い替えてほしいものだ。
 単身高齢者でさえも、冷凍庫はパンパンだそうだが、家族のいる家庭はなおさらパンパンのようだ。
 つまり、「冷凍室の容量不足」問題というのは、どの家庭でもかなりの家庭問題になっているようだ。
 そのうち、冷蔵庫や冷凍庫ではなく、家に冷凍室を作ってしまう時代が来そうな気がする(笑)
 そんな電気冷蔵庫のルーツともいえる機械式の製氷機(冷凍機)は、1834年にアメリカの発明家パーキンスによって考案されたらしいが、これは、エーテルなどの揮発性の液体を冷媒としたもので、空気ポンプ(手押し)で減圧して冷媒を蒸発させたとき、周囲から気化熱を奪って冷却する方式で、このガス圧縮方式と呼ばれるしくみは、今日の冷蔵庫でも変わりないそうだ。
 そして、アンモニアを冷媒とする製氷機は、明治初頭に日本にも渡来し、明治3年の夏に福沢諭吉が熱病にかかったとき、大学東校(東京大学の前身)の教授が使い方をマスターし、これを慶応義塾の塾生に伝授して、熱さまし用に製氷したのが日本の人造氷の始まりといわれている。
 東大の先生が慶応のボスを助けるという、今ではあまり見ない光景だが、そこから日本に広がったことを考えると、福沢諭吉さんは、やはり影響力のある人だったようだ。
 1万円札の福沢先生は、とても涼しい顔をしているが、それもそのはず。冷たい氷で快適な生活を送っていたようだ。
 さて、その福沢諭吉がデザインされた1万円札など現行の3紙幣の製造もこの9月ですでに終了したらしい。
 これからは新しい1万円札の顔は実業家の渋沢栄一氏になるのだが、どうせ国は、財政再建もそっちのけで、国家財源が足りない分、バンバンお金を刷り続けていくのだろう。
 庶民が余った食材も捨てず、冷凍庫に保管して節約しているのだから、政府もお金をただばらまくことばかりではなく、冷凍庫ならぬ金庫に保管して、使い方をきちんと考えてほしいものだ!
 さて、今年もいよいよ終わる。コロナも落ち着いて経済が再起動し始めているが、政治の世界では、総理大臣の歴史的な支持率の低さが気になる。
 来年は、何もしていない総理に、いよいよ国民の怒り爆発が起きそうな予感がする。
 せめて皆様には穏やかな年末年始を過ごして欲しい。今年もありがとうございました。

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年12月)

第228号 今日もどこかで運転見合わせ?

 最近、ニュースをチェックしていてよく目に着くのが、人身事故で電車が止まっているというニュースだ。
 私の住む関東の場合、毎日どこかで人身事故が起きているどころか、1日で3路線くらい人身事故が起きていると言っても過言ではない。
 昨年の日本の鉄道人身事故路線ランキングを調べてみると、1位東北本線(32)、2位中央本線(30)、3位京王線と宇都宮線(27)、5位中央快速線(25)、6位西武池袋線(24)、7位東武伊勢崎線(23)、8位東海道線(22)、9位西武新宿線と京急本線(21)とほとんどが関東だ。
 関東の人は特に鉄道自殺が好みのようで、関西や九州、北海道などは毎年ランキング10位に入ってこないのも不思議だ。
 人口だけでなく、何か理由があるのだろうが、いろいろと考えたが、それはさすがにわからないので、わかる人がいたら教えて欲しい。
 中央線なんて、中央本線と快速線を併せるとダントツ1位の55人と、毎日とは言わないが、毎週飛び込み自殺がどこかしらで起きているのだから、利用者にとってはたまったものじゃないだろう。
 電車の自殺だけでなく、昨年1年間に自殺した人の数は2万1881人と、前の年より874人も増加しているのも困ったものである。
 特に、男性は前の年より807人多い1万4746人と、13年ぶりに増加に転じているというのだが、逆に言うと毎年男性は自殺が減っていたというのも不思議だ。
 それに対して、女性は7135人で、3年連続で増加しているが、男性の半分以下というのはなぜだろう。
 何となく女性の方が多いかと思っていたが、減っているとはいえ男性は女性の2倍以上だったのもショックだ。
 やはり男性の方がある意味「打たれ弱い」のではないだろうか。
 厚労省の分析では「コロナ以降の社会に起こったことが影響しているのではないか」とのことで、まあ普通に考えると、コロナで職を失ったとか、お金や家族や恋人を失ったとか、そういうことなのだろう。
 自殺というのは、社会的にも経済的にも何とかして防がないといけない重要な事項だが、私が一番悲しいのは子供たちの自殺だ。
 昨年自殺した小学生から高校生までの子どもは512人と、前の年よりも39人増え、やはり過去最多だったのだ。
 高校生の自殺の原因や動機について分析したところ、全日制では「学校に関する問題」、定時制・通信制では「健康問題」の占める割合が大きかったのだが、統計のある1980年以来、子だもたちの自殺が過去初めて500人を超えてしまったのは、大問題だろう。
 512人の内訳は、高校生の352人(前年比38人増)が最も多く全体の7割を占め、中学生は143人(同5人減)、小学生17人(同6人増)となっている。
 少子化が叫ばれる一方、生まれてきた子どもたちの自殺は近年、増加傾向にあるのだから、少子化対策の前に、こうした自殺防止をもっと積極的に考えないといけないはずだ。
 大人の自殺は圧倒的に病気が理由だからある意味仕方がないかもしれないが、子どもの自殺はほとんどが病気ではないのだから、防げるはずだ!
 厚労省も、子どもたちの自殺の原因は学校の悩みが多いと断言しているにもかかわらず、対策が追い付いていないのだろう。
 そういえば、昨年は、現役女子高生シンガーのAdoさんが歌う「うっせぇわ」が、中高生を中心に話題になっていたが、この曲の背景は、社会に不満を持っている子供が多いから、子どもたちに受けたのではないだろうか?
 若者の間で、心が病んでいる人が急増しているのは誰もが知る事実だが、WHOの報告書によると、世界の若者の主要な死因の1つが「自殺」。
 しかも、世界の自殺者の総数は年間約80万人で、40秒に1人が自殺している状況だが、そのうち、若者の自殺が約3分の1を占めているのだ。
 つまり、子どもの自殺は、日本だけの問題ではなく世界共通の問題なのだ。
 もちろん、その中でも、日本は若い世代の死因1位が自殺で、これは先進国(G7)のなかでは日本のみという、子ども自殺大国なのだ。
 10万人に何人が自殺するという自殺率16.3%という数値は、他の国と比較しても圧倒的に高く、先進国ではないが、お隣の韓国とほぼ同じ水準らしい。
 何となく、学歴社会が強く就職が厳しい韓国も、メンタル的に落ち込んでいる気がしていたが、まさにお隣さんも同じ悩みだった。
 こうした若者のメンタル、自殺まで追い込まれている心の叫びが「うっせぇわ」という曲に垣間見え、日本の若者たちが抱えている心の叫びなのだろうが、以前我々が子どもの頃は、尾崎豊さんの歌にもあるが「バイクを盗んで走り出す」といったように、不満=行動に表していた人が多かったので、やんちゃな不良や暴走族が当たり前のように存在していた。
 しかし、今は、親に言われるがまま優等生のように育って、自分の本音を吐き出すことが苦手な人も多いのだろう。
 優等生で真面目な人ほど自殺してしまうのではないだろうか。
 かつての鬱々とした若者は、いわゆるツッパリ(不良)や校内暴力などヤンチャな方向に向かうことが多かったわけだが、今の若者はそうではなく、あくまで大人しく、しかし一方でSNSという匿名性の世界では過激な発言をしたり、同調圧力でネットいじめをしたりする方向に流れているのだろう。
 普通じゃないとか、変なヤツ、としてはじかれてしまうと、アピールできず、孤立して悩んで自殺してしまう傾向にあるのだから、内にこもらないよう、ハッキリとものが言えるようにしてあげるべきだろう。
 それでも言えない人も多いだろうから、社会としては多様性を重視する教育も必要だ。
 昔は、「人と違うことをすると人様に迷惑がかかるから良くない」などと言われたが、今はそうではなく、「人と違うことは個性であり、独自のことをやるのは大事でありカッコいい」と評価してあげるべきだろう。
 それと重要なのは、SNS自殺を防ぐため、SNS利用の時間を減らし、リアルなコミュニケーションの機会を確保できるよう、外出機会や対面機会を増やす取り組みも必要だ。
 「SNSはリアルではなく、やはりリアルなコミュニケーションが最高だ!」と思ってほしい。
 ということで、これを読んだ皆さんには、ぜひとも、子だもたちとリアルなコミュニケーションを増やす機会を作ってほしい!
 あっ!とはいっても、道を歩く子どもたちにいきなり話しかけたりしちゃダメですよ!!
 不審者として逮捕されますからね!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年11月)

第227号 子ども食堂が増え、大人の食堂が無くなる?

 子どもに無料や低額で食事を提供する「子ども食堂」が全国で急増しているのはご存じの人も多いだろう。子ども食堂という言葉もほぼ定着したような気がする。
 昨年末のデータで恐縮だが、前年比1317カ所増の7331カ所となっているとのことで、今年も伸び率は鈍化したかもしれないが、恐らくその傾向は続いているだろう。
 それだけ、貧困家庭が増えていて、ちゃんと三度の食事にありつけない子どもが増えているのだから、とてもつらいことなのだが、増えていることで救われる命があればうれしい限りだ。
 そこでよく聞くのは、学校に行けば給食があるが、夏休みが明けると痩せて登校してくる子どもが多いということで、そういう意味では、とても重要なのが給食や学食なのだが、ここにきて雲行きが怪しくなってきたのだ。
 広島県や大阪府、京都府などの高校や特別支援学校を中心に学食や給食の運営を手がけていた会社が、契約する計約150施設で、9月上旬から次々と事業を停止し、とうとう9月25日付で広島地裁から破産手続き開始決定を受けてしまったのだ。
 学食運営は一般的に、食堂施設の使用料や光熱費まで業者が負担することになっていて、メニューは生徒の出費に配慮し、契約元となる学校やPTAなどと協議して安く設定され、もともと業者の利益は少ないと言われている。
 しかし、最近では肉や野菜などの生鮮食品で値上げが相次ぎ、学食から撤退したある業者によると「仕入れ値はコロナ禍前と比べ、調理油で2倍以上、肉類で3~4割増えた」「ここ数年で、年間で数%あった利益がほぼゼロになった」らしい。
 「確かにその通り、じゃあ、値上げしてあげるべきだ」と思う人もいるだろうが、文部科学省によると、小中学校の学校給食費は20年前からすでに15%ほど値上がりしているそうで、さらに食材費の一部を自治体が補助するケースもあるらしい。
 そもそも自治体や学校では給食の予算は決まっており、給食費の値上げは保護者らの理解が必要だが、その保護者達も、生活は徐々に困窮していくのだから、そう簡単に上げることもできないのだ。
 一方、義務教育ではない高校の学食では、自治体による業者への補助は原則ないので、メニューの値上げで価格転嫁しようにも学校側の了承が必要だし、さらに、コロナ禍での一斉休校や、感染予防策による席数削減などで利用が制限され、苦境が深まっているのだ。
 それを裏付ける調査結果が明らかになったのだが、帝国データバンクの2022年度の調査では、国内で学食や給食を手がける企業374社のうち3割強の127社が赤字。29.1%の109社が減益だ。
 つまり、とんでもない危ない業界とはまさにここなのだ!
 こんな儲からない業界だから、企業が撤退した自治体の給食を引き継ぐ業者も見つからず、学食が閉鎖されたままの学校が徐々に増えているのだ。
 他の業者が後を継いで受注しようとしても、契約金額が低すぎて『うちでは受けられない』と入札にも参加しないらしい。
 さらに近年は、食材費や人件費が高騰し、入札で契約金額が決まるため、コストが想定を上回ったとしても、飲食店のように独自の判断で価格転嫁することが難しく、採算割れとなる事業者は増える一方だ。
 まさに私の先月のコラムのように、最低賃金が上がれば、こういう業界はこの世の中から消えていくのだ。
 百歩譲って、価格の低い業者を選ぶ入札方式を続けて次の業者が決まったとしても、すぐにそこも倒産だ。
 そういう意味では、保護者も『給食は安くて当たり前』という意識を変えなければいけないのだ。

 さて、生徒や学生の食堂が窮地に陥る今、大人の食堂事情はどうだろう。
 さすがに、大人の食堂というのはレストランのような外食しかなく、学食のようなものは存在しない。
 だから、夕方にスーパーに食材を買いに行き、夕食を作るというのが一般的だ。
 しかし、その大人の食事を支えるスーパーもまた危機に瀕しているのだ。
 9月、百貨店の売り上げ3位の西武池袋本店が米投資会社に売却され、また4月には中堅スーパーマーケットのいなげやがイオングループ傘下に入ることを発表するなど、流通業界は大きな変化に直面しているのだ。
 あなたは今、全国で地方スーパーマーケットの倒産がものすごい勢いで進んでいるのをご存じだろうか?
 2022年の食品スーパーの倒産は22件。沖縄県のナカハラストアー、広島県の因島スーパー、京都府ではツジトミなど全国に及び、前年の13件を大幅に上回り、3年ぶりの増加となっている。
 今年に入っても地方の食品スーパーの倒産は増え、2月にはJA鳥取系列の閉鎖(13店舗)が発表され、青森県では上位のスーパー佐藤長など1~9月ですでに15件が倒産と、今後の動向を考えると今年は昨年をさらに上回る倒産件数が考えられ。
 何でこんなに倒産ばかりなのかって???
 もちろん、地方では人口減、高齢化で顧客が減少、さらに大手スーパーとの安売り競争による収益の悪化が大きな原因だが、そこに今回の最低賃金の大幅上昇だ。
 一般的に、スーパーなどは学生でもアルバイトができるので、安い時給で学生を雇って何とか人件費を削って頑張ってきた業界だから、最後の砦(時給安)が崩れ去った今、つぶれるのが当たり前の業界に成り下がってしまったのだ。
 地方の住民の買い物環境を支えてきた食品スーパーの倒産は、日常の買い物が困難な状態に置かれる人々、いわゆる買い物難民を急増させることになるだろうから、もう子どもも大人も食べるのが大変な時代になったと言っても過言ではない。
 若くて元気な人はまだしも、高齢者等を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる『買い物難民』『買い物弱者』が増えてきそうである。
 そして、買い物難民の増加は地方だけの問題ではなくなっていくだろう。
 「アルバイトに依存している業界はすべて縮小していく」というのが私の持論だ。
 そう考えると縮小してなくならない業界を探す方が難しいのだが、確かに店舗系の生き残る道は険しいが、店舗系ではない業界はまだ救いがある。
 大手企業のように、機械化し、自動化し、オンライン化し、遠隔化するだけでなく、いかに社会や情報の変化に対応できるか、価値(バリュー)やサービスを進化させ続けていけるか、起こり得るリスクや失敗を想定し対策を講じているか、人材の成長や育成に力を入れているか・・・
 そんなこと誰でもわかるけど、それって、零細中小企業では難しいことばかりだ。
 このまま、零細中小企業がどんどん潰れていくと、地域に密着した、儲からないけど、地域の人々に喜ばれている大手企業のサービスではできないような細かなサービスは誰がやってくれるのだろうか。
 いよいよ不便な時代が訪れようとしている・・・
 そうならないように我々ができることは一つだ!!
 小さなお店を利用し、小さな会社を使おう!
 ということで、お仕事お待ちしておりまーす(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年10月)

第226号 最低賃金アップで、ついに日本ギブアップ!

 岸田首相は8月31日、最低賃金(時給)の全国平均について「2030年代半ばまでに1500円となることを目指す」と表明し、10月から最低賃金が全国平均で時給1000円を上回り1004円に決めた。
 これで、初めて全国平均で時給1000円の大台に達することになったのだ。
 最低賃金は企業が従業員に支払う賃金の最低ラインで、全労働者に適用されるから、労働者にとっては喜ばしいことに違いない。
 しかし、昨今の物価上昇は激しく、物価変動を除いた実質賃金は14カ月連続でマイナスだから、賃金の伸びより、物価上昇が大きく、実際に最低賃金が上がる10月には、国による電気・ガスやガソリン代の補助が終わり、物価はもう一段上がると言われている。
 また、それよりも深刻なのは、増税や社会保険料引き上げだ。
 恐らく、最低賃金が1000円を超えても、社会保険料は確実に増えるだろうから、最終的な手取りは減り、生活が楽になることはないだろう。
 家計にとって最低賃金の上昇は「焼け石に水」というよりも「絵に描いた餅」に過ぎないだろう。
 そして何よりも恐ろしいのは、最低賃金の上昇で企業、特に中小零細企業の経営がさらに厳しくなることだ。
 人件費の高騰やコロナ禍での「ゼロゼロ融資」の返済も始まり、2023年上半期の倒産件数は3割増となっているが、さらに最低賃金が上昇する10月以降は、中小零細企業の倒産はさらに急増するのは間違いないだろう。
 私の予想では、飲食店は恐らく半分くらいは消えてなくなるだろう。
 インバウンド需要が復活して、街に人があふれてきているのに、何でそんなに閉店したり、倒産するかって???
 そう、それは「人手不足閉店」「人手不足倒産」なのだ!
 最低賃金が上がることで企業の人件費が上がり、経営を圧迫する要因になるのは誰でもわかるだろうが、実は人件費以外の部分でも最低賃金の引き上げは企業経営に影響を与えているのを忘れてはいけない。
 それは何かというと人手不足の加速だ。
 最低賃金の引き上げと人手不足がどう関係するの?と思うかもしれないが、その理由は俗にいう「103万円の壁」だ。
 例えばサラリーマンの夫がいる妻が仕事をする場合、扶養の範囲を超えないように多くの場合年収103万円を超えないように働くのをご存じだろう。
 税制上は103万円を超えても世帯の手取り所得が減少しないような仕組みにはなっているが、この「壁」は税金以外に社会保険など色々な要素があり、103万、106万、130万、150万円など色々な壁があり、よく分からないから取りあえず103万円を超えないように働くという人がメチャクチャ多いのだ。
最低賃金が上がっても、この実質的な壁の金額は以前と変わらないので扶養の範囲で働きたいと考えるパートタイマーがほとんどだから、時給が上がると、それに合わせて労働時間を少なくしようとするのだ。
 だから、企業やお店が最低賃金をあげれば上げるほど、人はどんどん減っていくことになるので、どんどん苦しくなって、閉店や倒産に至るというわけだ!
 つまり、「最低賃金が上がる」結果として「生産性が上がる」なんてのは夢でしかなく、勝手に総理大臣が人気取りのために最低賃金をあげても、世の中の仕組みが付いてこないので、どんどん日本経済は苦しくなっていくのだ。
 つまり、最低賃金アップというのは、先にやるのではなく、「生産性が上がる」結果として、「最低賃金が上がる」という、正しい因果関係の元にやらなければならないのだ。
 今回のように、人気取りだけを考える浅はかな総理大臣が、最低賃金を5%ずつ10年間引き上げ続けたら、最低賃金は5年間で1.28倍に、10年間で1.63倍になるが、これによりアルバイトやパートで成り立っている店舗の大半は、5年もしないうちに倒産か廃業に追い込まれるだろう。
 恐らく、地方のコンビニエンスストアなどは慢性的な赤字になり、世の中から去っていくだろう。
 コンビニという言葉も、都会の人にしかわからなくなる日も意外と近いだろう。
 ではなぜ、私のようなものだけでなく、多くの経済学者が口をそろえて、このことを言い続けているのに、最低賃金を大幅にあげるのだろうか?
 政治と経済の闇の部分をこっそり教えてあげよう。
 実はこのことはあなたが知らないだけで、政府はよく理解しているのだ。
 そして、最低賃金が低いから経営が成り立っているような中小零細企業や飲食店など小売業は、さっさと淘汰されるべきと考えているから、実行するのだ。

 なぜ?って
 それは、この世の中からゾンビ企業と言われるような中小零細企業の淘汰が進めば、日本の生産性は上がると思っているからなのだ。
 嘘だと思ったら、仲の良い政府関係者にこっそり聞いてみるとよいだろう。
 この世の中から息も絶え絶えの企業や店舗を消し去り、しっかりとした大企業と健全な中小企業だけにしようとしていることを教えてくれるから。
 だがしかし、政府の思惑通りにいかないことを私は知っている。
 だって、今回のような最低賃金の引き上げで、廃業をしなければならない、あるいは、従業員を解雇しなければならない経営者が増えていくことになり、その時に失業に追い込まれるのは、低賃金ゆえに仕事にありつける、特別なスキルを持たない人々、底辺に近い一般人だ。
 要するに、最低賃金の行き過ぎた引き上げは、もっとも社会の助けが必要な人々を、さらなる窮地に陥らせることになるのだ。
 政府が考える、中小零細企業の淘汰を促すというのであれば、それによって失われる雇用が容易に他の雇用に移動できる環境を整備しておかなければならず、淘汰される企業や無くなっていく産業の代わりに、成長戦略によって既得権益を打ちこわし、生産性の高い雇用や産業を育成しておかなければならなかったのだ。
 ところが、失業者の新たな受け皿となる雇用や産業が育っていない現状では、10年後の失業率は直近の2倍に跳ね上がっていても不思議ではないだろう。
 さらに驚くべきことは、最低賃金の引き上げ幅を拡大していけば、地方の人々の所得を押し上げ、消費も拡大するというシナリオを政府が描いているということだ。
 国民が消費を抑え貯蓄に励んでいるのは、少子高齢化に伴う人口減少、社会保障不安から将来に対する備えが強く意識されているからであって、多少賃金が上がってもその考え方は変わらないだろう。
 それなのに、日本が構造的な問題を解決することなく、最低賃金の引き上げだけで消費が拡大するという未来は、幻想にすぎないのだ。

 内閣府の調査によれば、将来が「良くなる」と思っている人々は10%に満たないという結果が出ている。
 これは、国民が政府をほとんど信用していないという証拠であり、将来に備えるために貯蓄しなければならないという行動様式が当たり前になっているからだ。
 こうした国民の将来不安を和らげるのは、最低賃金をあげることではなく、政府が国民の認める成長戦略を実行すると同時に、少子化の緩和を実現していく道筋を示すべきなのだ。
 国民や企業が抱いている将来への不安を解消するという努力もせずに、中小零細企業に賃上げを強いたりするようなことがあれば、地方を中心に失業率が上昇し、景況感の悪化から企業はいっそう守りの経営に舵を切っていくことになるだろう。
 リフレ派のように「物価が上がれば、景気が良くなる」などと主張しているバカな経済学者たちにそそのかされた政治家たちによって、日本は破滅の道へと突き進むことだろう。
 だって、私の所得が上がれば、このコラムはもっと面白くなる???
 そんなわけ訳ないだろう(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年9月)

第225号 投資は天国への近道か、それとも地獄の入り口か?(下)

 前号では、NISAを勧めつつも、株も投資信託も必ず乱高下してたいして儲からないから、もっと儲けたいという人は、どういう投資をすればよいか?で終わったのだが、もちろん、このコラムは、投資を勧めるコラムではないから、これを参考に投資をするのではなく、実際どんな投資で人々は失敗しているのかをまずは知ってほしいと思う。
 まず、とにかく一獲千金を求めるギャンブル好きの人は、株や投資信託では満足せず、もっとリスクもリターンも大きいものを求める傾向にある。
 そして、そういう人は人の儲け話をすぐに信用してしまう。
 そんな人が行きつく先は大抵、「ワンルームマンション投資」「仮想通貨」「FX」だろう。
 それぞれ説明しよう。まずワンルームマンションだが、これはある意味、バブル時代のそごうや三越やヤオハンが行った錬金術と同じで、バブル期などのインフレ時代は地価が上がると、企業は含み益が出るので、それを担保にさらに借金して、投資をする。100万円借りて100万円の土地を買い、それを担保に100万円借りて、100万円の土地を買うといった具合で、無限に土地を買って大きくすることができた。
 もちろん、バブル崩壊ですべてが逆回転をしだすと、資金が持たなくなり不動産神話に走った企業は経営破綻したのだ。
 ワンルームマンション投資も同じで、たとえば2000万円でワンルームマンションを全額ローンで買い、その家賃で金利と元本を返済する。ある程度返済が進んだら、2軒目を同じスキームで買う。これを繰り返して物件をいくつも所有するという投資法だ。
 ローンは家賃で返済すればいいから、負担はほとんどないという言葉に騙されてしまうのだ。
 確かに買った部屋がつねに埋まっていれば、このようなビジネスモデルも持続可能だが、しかし現実には、そうはいかない。そもそも、日本ではワンルームマンションが余っている。空き室状態が半年も続けば、銀行の支払いが滞り破綻するリスクも高まる。ワンルームマンションを売ったとしても、売値は買値より当然安くなる。
 大抵この手の投資話にはサブリースがセットになっていて、サブリース契約が外れると銀行ローンは即時に全額返済を求められるケースが多いが、そもそもワンルーム投資をする人にはそんな余分なお金はないので結局は返済できず、サブリース会社に泣きついて買い手を紹介してもらうしかない。
 そこで相場より安い値段を提示されても飲むしかない。何を隠そう、サブリースをしているのはマンションを販売した会社やその関連会社だから、そんな詐欺師に紹介される買い手も高利回りを謳ってハメ込まれた次のカモなのである。
 ということで、ワンルーム投資は、投資の風上にも置けないほど、悪質な詐欺と同じだ。
 だが、不動産投資が一番確実に儲かる投資だと私は思っている。
 それは、儲かる不動産投資というのは、それなりの資金力があり、物件数を相当持てる人ほど有利になるもので、お金がない人や投資の素人には成功しにくいものなのだ。
 逆に、中古で安い戸建てやマンションを現金で買って、全く新築同様にリノベーションして売るなど、ある程度財力のある投資家には向いているのだ。
 危ない投資の2つ目がFXだ。確かに、2022年に突如として始まった今回の円安の流れの中、FXで儲けた人もさぞ多いだろう。
 FXは「外国為替保証金取引」のことで、為替差益で利益を得ようというものだから、たとえば1ドル=100円でドルを買い、150円になった時点で売れば、1ドルあたり50円の利益が出る。逆に150円で買って100円で売れば、50円の損失になる。
 今回のように急激な値動きがあると、短期間でいっきに儲けることも可能だから、たとえば1ドル120円の段階で1万ドルを120万円で購入、150円で手放せば30万円儲けたことになる。
 逆に損をした人もいただろう。148円のときに1万ドル買った人が、その後の円高に慌てて138円で売る。この場合の損失は10万円になる。
 もっともこの程度なら、たいした儲け話でも、悲惨な話でもないがFXの最大の問題点は、レバレッジだ。
 FXでは、証拠金の最大25倍まで取引が可能になる。たとえば証拠金として6万円を差し入れれば、150万円の取引ができる。わかりやすく1ドル=150円で計算すると、6万円で1万ドルを購入できる。もし翌日にドルが152円になれば、1万ドルの価値は150万円から152万円になったわけで、1日で2万円上がったことになる。
 つまり6万円しか投資していないのに、それを元手に買った1万ドルで2万円儲けたことになり、日利にすれば33%。闇金融も真っ青な儲け方なのだ。
 こんなうまい話があるはず・・・ない。
 これが逆の場合だと、どうなるか。1ドル=150円から一晩で140円になると、10万円のマイナスになる。預けている証拠金が6万円なら、4万円足りないので借金をすることになるのだ。
 手持ち資金の25倍まで勝負できるFXは、一攫千金の可能性がある代わりに、一瞬で元手を失うリスクがある。健全な資産運用とは言えないので、これをメインに考えるのはやめた方がいいだろう。
 もっとも、宝くじで当たったお金とか、相続で得た財産を、半分貯金して、半分で勝負するなど、よっぽど余っているお金だったら、やってみるのも手だが、たいてい、お金のない人ほど深みにはまり、自己破産するところまで突き進んでしまうのだ。なむさん。
 さて、危ない投資の3つ目の仮想通貨だが、これは近年マスコミで話題になることも多く、最も身近な「危険な投資」だろう。
 なかでも有名な仮想通貨がビットコインだが、値動きの激しさでも有名だ。
 2017年には、1月に8万4000円ほどだった1ビットコインが、12月には230万円まで上昇、じつに30倍近く値上がりしたことになる。その後も乱高下を繰り返しながら、一時は700万円台をつけた。
 変動幅の大きさから仮想通貨に手を出す人もかなり多いが、忘れないでほしいことは、そもそも仮想通貨は通貨ではないということだ。

 ふだん我々が使っている通貨は「法定通貨」と呼ばれるもので、税金を払うこともできるし、銀行に持っていけば他の通貨と交換してもらえる。店で買い物もできる。
 これに対し仮想通貨は、基本的に買い物に使えない。もちろん税金も払えない。一時、家電量販店のビックカメラがビットコインでも買えるとアピールして話題になったが、利用している人はいるのだろうか?
 700万円台まで上がったビットコインは、その後200万円程度まで落ちることになる。そして、今日現在は477万円だ。簡単に倍にもなるが、簡単に半分にもなる。
 これだけ値動きが激しければ、とても安心して持っていられないだろうから、こちらも余裕資金向け、つまり金持ち向けの投資だ。
 ただ、一方で中央銀行によるデジタル通貨の発行計画は各国で着々と進んでおり、中央銀行が、デジタル通貨を発行するようになるのだ。
 価値は現在の円のまま、決済や送金における利便性は、より高まる。
 そうなると、いまの仮想通貨が通貨としての利便性ゼロなのとは大違いで、デジタル円が出るとわかればビットコインなど仮想通貨を所有する意味はほとんどなくなるから、やはり仮想通貨には近づかない方がいいだろう。
 ということで、2回にわたって投資の話をしたが、結局はどんな投資にも穴があり、儲け話は要注意ということだ。
 なーんだ、いい話を聞かせてもらえると思って楽しみにしていたのに~という人もいるかもしれないが、一番の投資は自分への投資だろう。
 「自分の価値を高める自分への投資を、できるだけ少ないお金でやる。」ことが一番だ。
 その見つけ方やどういう投資をすればよいかは人によって大きく異なるので、自分をよく知る徳のある目上の人に、自分に足りないもの、自分に相応しい投資を聞いてみてほしい。
 それが天国への一番の近道になるだろう。

 そうそう、友達や同僚に聞くとどうなるか? それは間違いなく地獄への入り口だ(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年8月)

第224号 投資は天国への近道か、それとも地獄の入り口か?(上)

 日本の株価の上昇傾向がなぜか続いている。
 とうとう日経平均株価は、バブル景気の時期の1990年7月以来、およそ33年ぶりの高値を付けたと今年の5月29日に大きくニュースに取り上げられたので、ご存じの方も多いだろう。
 その後乱高下もあるが、今日現在はバブル期の高値よりもさらに上がっている。
 コロナ禍に始まったゼロゼロ融資の返済が始まり、飲食店をはじめ多くの中小企業が音を立てて倒産し始めているというのに、いったいこれはどういうことなのだろうか?
 そこで思い出すのが、昨年末、岸田政権の打ち出した「資産所得倍増プラン」だ。
 「資産倍増」と聞けば誰もが喜びそうな話だが、たいていそういう話はウソが多い。詐欺師が騙すときに使うフレーズとそっくりだ。
 何が資産倍増かというと、それはNISA制度の抜本的拡充・恒久化が主な政策であり、国がお金を配って倍にするのではなく、国民が投資をして儲けて自分で倍にしろという話なのだ。
 そもそも、「NISA」って何のことかわからない人もいるだろう。アメリカの宇宙基地と間違ってしまうと話しが進まないので簡単に説明しよう。
 日本では通常、投資で得られた利益には、誰でも原則として約20%の税金がかかるのだが、この税金をゼロにできる制度がNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)なのだ。
 まあ、財務省の天才たちが一生懸命考えて、アメリカのNASAがカッコいいので、それにあやかろうと、ゴロをまねて作ったことは、可哀想なので内緒にしておいてやろう(笑)
 このNISAが、来年の1月から大きく拡充されることになったのだ。
 2023年7月現在は、NISAは主に「一般NISA」と「つみたてNISA」に分かれていて、これを「成長投資枠」「つみたて投資枠」と改め年間投資枠を広げ、非課税保有期間をなんと無期限化し、さらに両投資枠の併用も可能にするなどして、とにかく国民のタンス預金を投資に回させようとするのが、「資産所得倍増プラン」だ。
 お金がもらえると思っていた人はがっかりだろう。
 でも、投資による利益の非課税枠が広がり、かつそれが無期限化されるのだから、投資を知っている人には「利益が出ても非課税だから、投資しよう!」という誘因となり、依然として日本の主な金融資産となっている預貯金がじゃんじゃん株式市場に流入して、どんどん株高となり、投資している人の資産は確かに倍になるかもしれない。
 だが待てよ。岸田首相は就任当初、株式市場を軽視し、ひょっとしたら「株での儲けには、課税を強化するのが公平」という考えを持ち、「金融所得課税の見直し」を掲げていたはず。
 そう、投資によって生じた所得への課税を、強化しようとしたのが岸田政権だということを忘れてはいけない。
 結局、岸田さんは世論の反発と株価下落に遭い、どうするかと思ったら「その件については、当面は触ることを考えていない」とごまかしたのを覚えている人も多いだろう。
 そんな人が、今般「資産所得倍増プラン」を掲げたが、今までの経緯を考えると、岸田政権には結局、明確な経済政策がうかがえない感もあり、どうも信用できない。
 一方、安倍政権の「アベノミクス」の場合、資金の流通量とその循環をよくし、「物価上昇」→「企業の売上上昇」→「賃金(家計の所得)上昇」→「消費増大」→「物価上昇」という循環を促すことが狙いだったことが明確にわかり、それによって、株価も上昇させるという目論見があったから、NISA制度も、安倍政権下でスタートしたのだ。
 実際に、暗黒の民主党政権が終わった2012年11月に8,000円台だった日経平均株価は、安倍首相辞任発表の2020年8月には2万3,000円弱となっていたので、アベノミクスはまあまあ成功だったわけだ。
 ただし、すべてが安倍さんの思惑通りにいったわけではなく、本人の意向か、他の誰かの意向かは不明だが、アクセルを踏みながらブレーキを踏むように、任期中に消費税の増税も行い、物価や賃金の上昇も、思ったほど上がらず、道半ばだったが・・・
 結局、どのような政権であれ、政府の方針に左右されてもその通りになるかはわからないのだ。
 だから、「ああ言ってるけど、実現するかどうかはわからない」「こう予想されてるけど、そのとおりになるかどうかわからない」と常に疑いの気持ちを持っておかなければならないだろう。
 私の予想では、岸田政権の「資産所得倍増プラン」も、その成果に期待しつつ、一方で期待外れに終わる可能性もあるとみている。
 では、どうすればよいのだろうか?
 常に投資をしている私としては、投資を完全に否定するわけではないが、だからと言って投資はすべて素晴らしいものではない。だから国民は投資とはどういうものがあり、どういうリスクがあるということをしっかりと勉強しておくべきだろう。
 まず、来年から始まる統合NISAの「つみたて投資枠」では、現行のつみたてNISAと同じく、金融庁の定めた基準を満たす投資信託やETF(上場投資信託)に投資できる。その2つだけだ。
 一方、「成長投資枠」も、基本は現行の一般NISAと同じで、「上場株式」「ETF」「REIT(不動産投資信託)」「投資信託」に投資できる。こちらはかなり幅広い。
 そして、一番の関心ごとは生涯の投資枠だが、年間の限度額は少ないが、生涯の最大非課税限度額は1800万円あるのだ。
 これが岸田さんの言うように倍になるなら、3600万円だが、もちろん半分の900万円になる可能性だってあるのだ。
 ただ、ここで注意したいのが、2024年からNISAを始めると、生涯1800万円までしか投資できないが、2023年のNISA投資限度額(一般NISA120万円・つみたてNISA40万円)を使って購入した商品は、2024年からの新しいNISAにおける最大非課税限度額(1,800万円)には含まれないということだ。
 NISAを始めたいなら、2024年からではなく2023年中に始めるべきだろう。
 どんな投資信託がよいかよく聞かれるが、それは私にも神にもわからない(笑)
 だが、一番有名で比較的安心な投資信託を一つ上げるとしたら、世界の株式に広く分散投資する「全世界株式インデックスファンド」だろう。これにコツコツと積立投資すれば、倍までは行かなくても、世界の経済成長によって資産が増えることもあるかも・・・。
 もちろん、2024年から世界恐慌が起き、株価が暴落すると予想する投資のプロもいるので、株式に投資する投資信託ではリスクが高すぎると思うのなら、株・債券・不動産など複数の資産に分散投資しているバランス型投信を選ぶとよいだろう。
 もしうまくいって、生涯投資枠が1,800万円でも、資産総額がいつの間にか1800万円を超えたら税金がかかるのか心配な人もいるだろうが、その心配は不要。統合NISAの生涯投資枠は「投資元本ベース」で管理されるため、資産総額がいくらになっても非課税で運用できる。
 極端にいえば1800万円が5000万円になっても非課税というわけだ。
 といっても、やはり、株や投資信託は必ず乱高下もあり、それほど儲からないという人も多い。
 では、もっと儲けたいという人は、どういう投資をすればよいのだろうか?(下に続く)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年7月)

第223号 岸田政権の少子化対策で少子化に拍車!

 1月号のコラムでも紹介したが、2022年の出生数はコロナ禍の影響もあり、80万人を割り込んだ。
 これは1899年の統計開始以来、最低の数字だ。多くの国でもコロナ禍で出生数は落ち込んだが、その後、リバウンドしたのに対し、日本では婚姻数の戻りさえ限られる。
 婚外子が少ない我が国では、婚姻数は出生数の先行指標となるため、今回の出生数の落ち込みは一過性とは言い難い。
 1月号では、結論として、若者が結婚しないことが最大の原因だと指摘したが、それなのにその政策もしないで、「産めよ増やせよ」という、岸田政策は、ほぼ無策に等しいのだ。
 何度も言うが、異次元の少子対策っていうくらいなら「多夫多妻制の導入」や「未婚の母親過剰支援」くらいやらなければダメだ!
 「一夫多妻」ではなく「多夫多妻」だ!
 だって、子どもを増やせる能力や環境の整った人は、男性だけでなく、女性もいるのに、日本では夫婦の約5分の1が何らかの不妊治療を受けているが、不妊の責任は統計上、男性側の「もろもろの原因」が約半分なのだ!
 でも、きっとあなたは、「多夫多妻制の導入」や「未婚の母親過剰支援」って聞いて私を「バカな奴」と思うだろうが、そう思うあなたの方がよっぽどバカだ!
 なぜなら、あなたには岸田政策くらいしか思いつかないだろうから。
 もし「多夫多妻制」を実行したら、確実に人口は1割増えるだろう。
 さらに、結婚しないで子どもを産む「未婚の母親」を本気で支援、例えば未婚出産者なら税金を徴収しないとか、すべての政策で未婚の母親を既婚者よりも優先(例えば労働基準法を変えて、未婚母親を2割以上採用しないと法人税倍増とか給料を1.5倍にするとか、国がシッターさんを無料でつけるとか)したら、結婚に抵抗がある人も子供は欲しいという人が多いので、もしかしたら人口は3割増かも・・・。
 間違いなく第3次ベビーブームが起きると断言してもよい!
 さあ、私を少子化担当大臣にするか、日本を地獄に落とすか、二つに一つの選択だ(笑)
 と、自信満々に叫んでみても、「倫理観の欠如」という日本人独特の思想で、多夫多妻制も未婚母親過剰支援も実現しないのだ・・・悲しい。
 だから日本は地獄に落ちればいいのだ!!
 出生数急減という国難に対し、岸田政権は「異次元の少子化対策」という無策を実行するために、医療保険など社会保険料のさらなる上乗せで対処しようとしているのをあなたは知っているのか?
 社会保険料上乗せというのは、企業の人件費を膨らませるのだ。そうなると、当然賃上げへの悪影響を避けることはできない。
 それだけではない。社会保険料を財源にすると、むしろ少子化を助長する恐れがあることを、誰か岸田さんに教えてやって欲しい。
 財源の手当ては増税が筋だが政治的に反発が強い。それでも防衛費のように、4分の3を事実上の赤字国債で賄い、将来世代に返済を強いるのは、将来の日本を守るためということで、何とかごまかせるだろう。
 しかし、少子化対策として増税をして赤字国債を発行すれば、将来世代がそれを背負うことになるので、さすがに将来の子どもを増やそうとしているのに、それは本末転倒ということで、歳出改革で賄えない場合、医療保険など社会保険料からの拠出金で対応するしかないのだ。
 取りやすいところから取るというのが、いつもの政治的には有効な選択肢だが、2000年代の経験を踏まえると、そのことが長期停滞の大きな原因の一つであったと同時に、少子化を助長したということをなぜわからないのだろう。
 2000年代に高齢化が加速した際、膨らむ社会保障給付を我々はいかにして賄ったのか覚えているだろう。
 当時、小泉純一郎政権は、早い段階での消費増税を封印した。それにも拘わらず、膨張する社会保障給付を何とか賄えたのは、歳出改革等が進んだからではない。主に現役世代の社会保険料の引き上げで対応したのだ。
 2004年の100年安心プランで知られる年金制度改革では、被用者の社会保険料を14年間で、労使合わせて約5ポイント引き上げている。
 社会保険は民間保険に比べれば応能負担の性質を持つとはいえ、保険料が頭打ちとなる所得水準が比較的低く、所得税のように収入の増加に応じて税率が変わることはないから、頭打ちとなる水準までは一定率で徴収されるため、高所得者ほど負担が軽くなるのだ。
 つまり、2000年代の社会保険料の引き上げは、高齢化に伴う社会保障給付の増大を主に被用者の社会保険料で賄った結果、正規雇用の人件費が増大し、経営者が非正規雇用を増やす大きな誘因になった。
 そして、非正規雇用は、十分なセーフティーネットを持たないため、所得が増えても予備的動機で貯蓄をせざるを得ず、結婚をするとか子どもを作るなんてナンセンスなのだ。
 結果として、低所得層の被用者の生活を圧迫し、経済的に不利な立場に立たされた人々の婚姻のチャンスや出生率を低下させたのだ!
 これと同じく、岸田政権がやろうとする少子化対策は、むしろ少子化推進政策になり、ガンガン少子化が進み、20年後30年後の人たちからきっと笑われるだろう。
 あなたの国の総理大臣が今やろうとしているのがこれなのだ。でも一番悪いのは、総理大臣を選んだ議員を選んだあなたが悪いのだ!
 だったら、野党に政権を取らせれば解決するかといえば、恐らく、日本を地の底に落とした前の民主党政権の二の舞だろう。
 そう、今のシステムで政治家を選んだら、結局、だれを選んでも同じ結果になるだろう。
 本当に国をよくしたければ、政治家の選挙は試験にして、最高の知能の人しか選ばれないようにすることと、政策はすべてコンペにして、コンピュータがその未来予測のもとに判断するようにすることしかないだろう。
 おっと、忘れてた!
 それと私を少子化大臣にすることだ!
 何? それだけはあり得ないって??
 いや、あったら、そっちの方が地獄だろ(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年6月)

第222号 おバカだけの問題ではない犯罪が増える?

 つい先日、銀座の時計店で起きた、若者たちによる白昼堂々の強盗事件をテレビで見てビックリした人も多いだろう。
 これだけではない。最近、全国各地で押し入り強盗事件が続発し世間を脅かしている。
 そのほとんどが、SNS上の闇バイト募集で集められた素人集団による犯行だ。
 最近は、振込詐欺などの特殊詐欺よりも手早く稼げる強盗に簡単に手を出す若者が急増してらしいが、それって本当??
 だって昔は、強盗なんて相当な悪者がやる犯罪だったわけで、そんな凶悪な強盗を、いとも簡単に若者が手を出してしまうというのは本当に不思議だ!
 強盗とは犯罪の古典タイプで、統計に記録された事件の数は社会の治安動向を測る指標となる。
 法務省の『犯罪白書』に、毎年の強盗事件の数(警察認知数)が出ていて、これを人口当たりの数にして、過去から現在までの推移を描くと面白いほど世相がわかる。
 まず、1950(昭和25)年では、年間に7821件の強盗事件が起きていた。当時の人口(8412万人)で割ると、10万人あたりの事件数は9.3件。今に至るまで、この時期の犯罪が最も多いのは、戦後間もない混乱期であったので、何となくわかるだろう。
 その後、高度経済成長により社会が安定化するにつれて強盗発生率は下がり、平成初頭の1989年には1.3件と最少となる。そう、バブルの時期だ。
 しかし平成不況の影響からか再び急増し、2003年にピークとなった後、現在まで低下傾向が続いているのだ。
 だから、直近の2021年の強盗事件数は1138件で、人口当たりの数も戦後初期の頃よりずっと少ないのだが、今後どうなるかは分からない。
 なぜならSNSなどにより、犯行要員を募ることが容易になっていて、コロナ禍以降、経済的に困窮した若者が急増し、それに伴い、簡単に悪の手先として釣られやすくなっているからだ。
 いつの時代でも、強盗の動機として最も多いのは「生活困窮」だが、本当にそれだけが理由だろうか??
 わたしはもっと根本的に違う要素があるとみている。
 まず一つ上げられるのは、「おバカな人が増えている」ということだ。
 それが証拠に、昨今の「迷惑動画」の拡散事件を思い出してほしい。こうした店舗の業務を妨害する迷惑動画(不適切動画)の拡散は、いかにおバカな若者であっても、ちょっと考えれば、刑事や民事の両面で法的責任を問われるかもしれないという、結果の重大性はすぐに分かりそうなものだが、それでも後を絶たない。
 しかし、それよりも問題なのは、インスタグラムとかYouTubeなどのSNSで、嘘のようなものすごい成功した世界やキラキラした成功体験が簡単に見れることではないかと思う。
 自分も同じようになりたい、なれるかもしれないという気持ちが強くなり、そこに手っ取り早く稼げるという誘惑が出てきたら、その募集を見た若者が、軽く考えて応じてしまう可能性がある。
 憧れるのは良いが、それをどうしても獲得したいと思い、努力するのではなく、闇バイトに向かってしまうのが本当に残念でならない。
 しかも、闇バイトの連絡や指示は、秘匿性の高い「テレグラム」というアプリを使うらしいが、誰にも知られず、もちろん履歴書もなしで名乗らずに、簡単にお金が手に入るなら、とそう考えてしまうのだろう。
 このように、闇バイトに手を染める若者が急増しているようだが、こうした求人情報が、手頃にツイッター、インスタグラムとかで、ちょっと探したらすぐに見つかるということが実は最大の問題だろう。
 若者にとって、SNSは有用なコミュニケーションツールだから、その中で簡単にこのような情報に触れてしまう環境があることはなぜ防げないのか?
 そんな簡単なことができないのなら、「情報社会なんて要らない」とさえ思ってしまう。
 おバカな人が増えていると先に書いたが、もちろんどんな若者でも悪いことをしている認識はあるだろう。
 しかし、ケースバイケースではあるが、やっぱり悩んで悩んで悩み抜いた上で、結局最終的に悩みに取りつかれた状態になると、もう善悪というものに対して、冷静に判断する思考能力が失われてしまい、まさに"思考停止"の状態になって犯行に及ぶケースが多いのではないだろうか。
 やはり、深層心理の中では、「闇バイト」「1日10万」、 結局これはやばいことやるんじゃないかという人間心理はあるはずだからだ。
 でも目先の問題で、ギャンブル、ゲーム課金、投げ銭、推し活(自分の好きなアイドルやライバーなどに、お金を使うこと)などなど、どうしてもお金が欲しくなって、悩み抜いた結果、最後に思考停止して善悪が度外視され、犯行に及んでしまう。そういう状態なのだ。
 だが、若者の問題と思われているが、仕掛けているのは大人だ。
 この種の闇バイトで犯罪を仕掛けた場合は、刑法を改正し極刑にするなど厳罰化すべきだろう。
 おバカで思考停止した若者とそれを利用しようとする悪い大人。簡単に本当かウソかわからないような夢のような世界が簡単に見れて、悪い連絡も誰にも知られずに簡単にできてしまう情報社会。
 絶対に防げない問題ではないではないはずだから、サミットの議題にするなど、政府もそろそろ本気で腰を上げてほしい。
 そうしないと、他人事ではない、次に誰が闇バイトの犯罪の被害にあるかわからない、そのくらい切羽詰まった問題なのだ!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年5月)

第221号 あなたの仕事がなくなる日が来るって??

 2023年に入ってからビジネス界において最も話題のサービスといえば何か???
 そう、もちろん「ChatGPTとは」だろう。
 チャット?? GPT??? と全く知らない人もいるかもしれないが、恐らく来年の今頃は、そう言っていた人も使っていることだろう。いや、今年の夏までにかも・・・
 簡単に言うとChatGPTとは、OpenAI社が開発したチャットボットのことで、人間のような会話のやりとりを行うことができるツールのことだ。
 もっと簡単に言うと「ビジネスで困った時のあなたの助っ人」のことだ!
 GPTというのは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、 「オリジナルのアウトプットを生み出す、あらかじめ学習済みの人工知能」という意味だが、仕事をしているとよくぶつかる壁「書類作成や調べもの、アイデア出し」の時に、勝手に文書の自動作成や要約をはじめ、自動学習した内容をもとにしたテキスト生成をしてくれるのだ。
 秘書よりも役に立つので私はあえて「助っ人」と呼ぶことにした。
 その歴史はとても浅く、まだ半年もたっていないのだ。
 昨年11月30日にリリースされると、わずか5日でユーザー数が100万人を突破し、2023年1月には1億人を突破した。
 これはTikTokやInstagramなど他のサービスと比べても史上最速となっており、ChatGPTがいかに注目を集めているかがわかる。
 つまり、あなたがこのコラムを読んでいる間に、ユーザーが500万人くらい増えていることだろう。
 仕事で困ったときに、頼めば何でも考えて書いてくれるのだから、それはもう最高の武器だろう。

 そんな、人間のように自然な受け答えができる高度な性能を備え、世界で急速に利用が広がる対話式AI「ChatGPT」を開発したアメリカのベンチャー企業のCEO・サム・アルトマン氏(37)が来日し、NHKの単独インタビューに応じたので紹介したい。
 アルトマン氏は『ChatGPT』が社会に与える影響について、「新しいテクノロジーが登場すると、今日では想像できない方法で、私たちすべての生活の質を向上させることができる。このテクノロジーがすべての製品やサービスに組み込まれることで、人類の創造的な発信は何倍にもなると思う」と自信満々だ。
 その上で、AIの進化が人類の危機を招くのではないかという懸念については「AIは、SFの世界では人類を奴隷にする殺人ロボットのように何十年も描かれている。しかし、私たちは人間がルールを設け、止められるように作っている」と述べた。
 しかし、頭のいい奴や悪い奴らはそれを利用するだろう。
 人口減でどうにもならなかった産業側にとっては、「人が要らない」という、最大のメリットがあるが、それについて、アルトマン氏は「ChatGPTが雇用や教育に悪影響を与えるのではないかという懸念が出ていることについては、「これまでも技術革新によっていくつかの仕事は無くなり、いくつかは変化したり新たに生まれたりしてきた。しかし、企業が新たなアイディアを生み出す能力は想像を超えていて、今回もこれまでと同じようなことが間違いなく起こると信じている」と述べ、人が要らなくなることは仕方がないことだと言い切った。

 でも、ビジネス社会では、人口減対策として最高の武器になるかもしれないが、学校現場は深刻だ!
 宿題だってやってくれるのだから・・・
 それについては、「ChatGPTは教育を破壊するという指摘もあるが、教室で禁止すべきではないと思う。子どもも大人も新しいツールを使用すれば、新しい方法で学ぶことができる。電卓が登場した時のようにその使い道を考えるべきだ」と述べ、考えない子供が増えそうで怖い。

 これに対して、我らが東京大学は、すぐさま大学のホームページでChatGPTなどに対する見解を公表した。
 この中で「パソコンやインターネット、スマートフォンの登場時と同等、あるいはそれ以上の社会的な影響があると思う」と評価した上で、「現在の社会は法律や制度面においても、今回のようなAIの登場が織り込まれていない。下手をすると失業者の増大、産業構造の変化など様々な悪影響が生じる可能性がある」と指摘。さすが東大!!
 その上で「人類はこの数か月でもうすでにルビコン川を渡ってしまったのかもしれない」として、AI開発が後戻りできない一線を越えた可能性があるという認識を示した上で「有害な存在として利用を禁止するだけでは問題は解決しない。むしろ、どのようにしたら問題を生じないようにできるのか、その方向性を見出すべく行動することが重要だ」と指摘した。
 つまり、もう「なすすべはない」し「あとは野となれ山となれ」というのだ。
 禁止しないで規制するなんてできないのに、その方向性を見出せとはどういう意味だろう。
 正直、意味不明・・・

 ChatGPTをめぐっては先月、イタリアの当局が膨大な個人データの収集が法律に違反している疑いがあるとして、一時的に使用を禁止するなど規制する動きが出ていて、今月29日から群馬県で開かれるG7デジタル・技術相会合でも、AI技術にどう対応していくかが議題となる見通しだ。
 世界的に「喜びモード」ではなく「心配モード」に突入したと言っても過言ではない。
 だって、こういったテクノロジーが現れると、私たちの働き方や職業に対しての影響がささやかれることも少なくないからだ。
 そう、「そもそもあなたは必要な存在なのか」「あなたの仕事は人間がやる仕事なのか」だ。
 正直に言うと、AIがこのまま発展すると確実に一般のサラリーマンは必要なくなるだろうし、あなたの仕事も人間がやるのはあと3年ちょっとかもしれない。
 それは、将来AIが仕事を奪うレベルになるとしたら個人がどんなにあらがっても無力だからである。
 ちなみに、今月のコラムは、福島達也ではなく、ChatGPTが書いている。
 なので、いつもよりもまともだ(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年4月)

第220号 コオロギ食べる前にやることない?

 政府のデジタル大臣が試食し、最近になって物議をかもしているコオロギ食だが、何でそんなに政府はコオロギ食べさせたいのだろうか?
 もちろん、これは日本に始まったことではなく、2013年に国連の食料産業機関が人類の食糧危機の解決策として昆虫食を推奨したことに始まるのだが、これに拍車をかけたのは、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みにも関係し、食用や飼料のために養殖する場合のコスト(餌代、水、エネルギー代など)が食肉や農産物より有利とされ、環境負荷の低さやSDGsの観点からこれらに関心の高い欧米を中心に注目されているというわけだ。
 さらにこの機運が高まっているのは、新型コロナのパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻で、世界的に食糧安全保障が脅かされたからだろう。
 確かに、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなど、食肉に匹敵する栄養素を持つ昆虫を食料にすれば、人類の食糧危機の解決につながるという理論はわかるが、昆虫は食品衛生とのネガティブなつながりも強く、多くの人が昆虫と聞くと、不衛生を連想したり感染症や食中毒を引き起こす病原性の微生物が付着しているのではないかと心配してしまうだろう。
 正直に言って、動物や植物など、生き物を次々に殺して食べる人間が、いまさら昆虫ごときでガタガタ言うな!と言われるかもしれないが、私は嫌だな・・・
 何でって、何となく貧相じゃない???
 もちろん、数年後、それが当たり前の世の中になれば違ってくるだろうが、今までの人生、普通の人よりも数倍仕事をしてきて、少なくとも国の非営利法人政策には多少は貢献してきたのに、イナゴの佃煮くらいは数回食べたことがあるが、毎日の食事に当たり前のようにコオロギなどの昆虫が出てきたら、何となく悲しくなってしまう・・・
 これってわがままだろうか??
 さすがに、姿があるのはどうしても抵抗がある。
 ところが、米国のミシガン大学の研究者によれば、コオロギは他の昆虫より粉末にしやすいなどの加工性で優れているので、原型を連想させないように粉末にし、クッキーなどのなじみ深い食品に混ぜて提供することが効果的としている。
 うーん、クッキーなら食べれるかな(笑)
 でも、いくらクッキーでも、ゴキブリだったらやっぱり嫌だ!
 ということで、コオロギのクッキーなら我慢して食べようと覚悟した矢先に、とんでもないニュースが入ってきた。
 「生乳の生産抑制のため、牛を殺処分したら、1頭あたり15万円の助成金が国からもらえる」というとんでもないニュースだ!
 国はこの事業で、4万頭の削減を目指しているらしい。
 何で???
 答えは、簡単に言うと牛乳を飲まないからだ。
 2020年に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、学校給食が減り、さらに外食や観光需要が落ち込んだことで、牛乳の消費量が激減して、生乳の供給が過剰となったため、とにかく乳牛の数を減らしてお金を配るということなのだ。
 日本の生乳の生産の半分以上を担う酪農王国・北海道では、過去最悪レベルともいわれる"牛乳ショック"に直面し、搾りたての牛乳はかなり廃棄され、手塩にかけた子牛は価格さえつかないこともあるらしいのだ。
 酪農家では女性陣が子牛の面倒を見ることが多く、手塩にかけて育てた子牛が無残に薬殺される場面を見て「耐えられない」と精神的に追い込まれてしまう人も多いという。
 そのため、廃業を決断する若手酪農家も出始め、超巨大ファームまでも経営危機に直面しているらしい。
 さらに、ロシアによるウクライナ侵攻後、飼料穀物の高騰も大きな影響のようで、ほとんどの酪農業の経営は苦境に陥っているのだ。
 乳牛のエサの半分近くを海外からの輸入に頼ってきたので、トウモロコシを主原料とする配合飼料は、この2年で1.5倍以上に高騰。アメリカやオーストラリアから輸入する牧草も円安の影響などで値上がりし、年間のエサ代は経営コストの8割を占めるそうだ。
 廃棄せざるをえない牛乳・・・コオロギは食べろ食べろという政府が、なんで牛乳は捨てなきゃならないのか・・・本当にやるせない
 牛乳だけの問題ではない。コメも安値が続いており、農家は政府から「減反」を強いられている。
 実業家のひろゆき氏は自身のツイッターに、乳牛の殺処分に対し、1頭あたり15万円の助成金を出すという国の方針について言及した。
 「乳牛を殺すと1頭15万円の助成金が出るのは未来の食糧確保に逆行している。食えるかわからないコオロギ食に税金使うなら、牛の餌代に使うべき。乳牛殺しは現在の問題であり未来の問題でもある。『未来の可能性を探る試み』に金使うより乳牛を生かした未来の食糧確保が優先」と私見をつづっている。
 確かにそうだ!
 どうせいつか大震災などが来て「牛乳が足りない」なんて日が来るのだ!だから牛を殺さないで、生かしてあげるべきと考えるのは私も全く同感。

 アメリカでは、コロナ禍の経営難に苦しむ農家に対して総額3・3兆円の直接給付を行い、3300億円で食料を買い上げて困窮者に届けている。
 また、緊急支援が必要ない平常時にも、アメリカ、カナダ、EUでは設定された最低限の価格で政府が穀物や乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持している。
 なぜ、日本で同じことができないのか。牛乳が飲みたくても飲めなくて死んでいく赤ちゃんが世界にどれほどたくさんいるかわかっているのか!
 今後近いうちに必ず海外からの輸入に頼れない事態が起こり、乳製品が足りなくなる。
 政府の言うままに牛を淘汰してしまえば、種付けから搾乳まで最低3年はかかり、いざ必要な時に間に合わないだろう。
 だが、日本の政府は、援助政策がアメリカの海外市場を奪う可能性があり、アメリカの怒りを買うことを恐れているのだ。
 そのため目先の牛乳の在庫を減らすことにばかりに執念を燃やし、酪農家を救おうとする気持ちはさらさらないと言っていいだろう。ひどい国・・・
 だったら別の方法だ!!そう、牛乳の消費を増やすのだ!!
 ここで政府の出番!
 「マスクしろ」とか「ワクチン打て」なんて馬鹿なことばっかり言ってないで、「毎日牛乳を1人1L以上飲むことを義務にすればよいのだ。
 普通の健康な若者は1Lくらい飲んでいるだろうが、中高年などは割と飲まないかもしれない。
 でも牛乳はまさに健康飲料そのものなのだから、中高年だけでなく、すべての国民に義務として呼びかければよいだろう。
 「コオロギを1日10匹食べろ」は絶対に従わないが「牛乳1L」なら、従う人もたくさんいるはず。
 もっと良い方法がある。
 それは、すべての飲食店に、どんなメニューを頼んでも牛乳1本付けることを義務化するのだ。
 もし、付けなければ営業停止という処分をすればよい。
 そうすれば、牛乳の消費が一気に進み、酪農業者が倒産しなくても済むだけでなく、乳牛たちが簡単に殺されなくなるのだ。
 飲食業は保健所の許可制なので、国はそれが簡単にできる!!!
 うーん、またしてもこれはノーベル賞級のアイデアだろう(笑)
 なに???
 コオロギ食べたくないから言い逃れだって???
 いや、いつかはクッキー食べるけど、その前にやることあるってこと!!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年3月)

第219号 心の豊かさって何ですか?

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって今月24日で1年だ。
 まさか、こんなに長引くとはだれ一人予想もしなかっただろうし、どうやって終わるのかも全くわからないような、さらに混迷を深めている様相だ。
 1年も戦争状態が続くなんて本当につらい。
 建物は次々と破壊され、多くの人が命を落とした。厳寒のなか、停電が続き、職を失う人もいて、絶望的な状況だと思う。
 当然、巻き込まれるのは人だけではなく、動物も多くが犠牲になったから、動物好きの私にとってはダブルショックだ。
 「なんてかわいそうなウクライナ・・・神様、どうかウクライナを助けてください」と誰もが祈り続けた1年ではなかっただろうか。
 しかし、ウクライナを心配するほど日本人は幸せなのか、そして豊かなのだろうか・・・
 日本は豊かな国だと言われている。しかし貧困問題に悩む人々がいるのは確かであり、深刻化してきていることも事実である。
 今戦争真っ最中のロシアやウクライナは、天然資源が豊富で、食料自給率も高く、国土も広い。
 天然資源もほとんどなく、食糧自給率の低く、国土の異様に狭い日本にことをウクライナの人が知ったら、きっと「可哀想に・・」と哀れんでくれるかもしれない。
 いや、資源や食料自給は少なくても生活面では断然豊かだって???
 日本の生活は先進国の中でも最も貧しい国だと断言できる。
 だって、多くの若者は、狭いアパートに住み、満員電車に揺られ、昼食は短時間でカップ麺かコンビニ弁当で済ましている。
 さらにいうと、スマホばかり見て、芸術や文化に触れる時間はほとんどないのだ。
 そんな生活に満足し、そこから抜け出そうとしないから、高齢になっても、労働しないと生活できず、趣味や余暇を楽しむゆとりは一生ないだろう・・・。
 これのどこが豊かなのだ!
 きっとウクライナの人がこの現実を知ったら、物資の代わりに、豊かな芸術や素晴らしい音楽を届けてくれるだろう。
 だからこそ、今の日本にとって必要なことは、実質的な生活面の支援とまさに豊かな心を持てるような支援が必要なのだと思う。
 そこでうちの財団では、コロナで下ばかり向いている生活が続く日本だからこそ、上を向いて、鼻歌を歌いながら、ニコニコしながら暮らせるような事業に特に注力している。
 一昨年からは、デヴィ夫人が審査員長を務める「イブラ・グランドアワード・ジャパン・コンクール」という名の、クラシック音楽のコンクールに助成を行い、若手演奏家たちを支援するとともに、そうした演奏家たちが大きく羽ばたき活躍し、日本中で豊かな音楽を国民に提供してもらいたいと思っているのだ。
 また昨年からは、「公推協杯 全国若手落語家選手権」を開催している。
 これは、真打前の二つ目の若手落語家さんたちのコンクールだが、落語の概念を取っ払うような、コントと漫才と落語の融合のような、新しい落語文化を国民に知ってもらい、大いに笑い転げて、閉塞感いっぱいの日本をパッと明るくしてもらいたいと思って始めたものだ。
 お陰様で、盛り上がりが最高潮に達し、この2月6日に初代グランドチャンピオンが生まれ、新しい演芸文化が、いま日本に広がり始めているのだ。
 まだまだある。音楽、演芸とくれば次は芸術。
 我が財団に寄付された数百点の現代アートの中から、多くの人が現代アートの魅力に引き込まれるような素晴らしい作品を集めた展覧会をこちらも一昨年から全国各地で開催しているのだが、今年はまず、所沢の角川武蔵野ミュージアムで、2月4日から「タグチアートコレクション」が始まった。
 ぜひ多くの国民に、世界の最先端の本格的な現代アートに触れてもらいたいと思っている。
 アートの歴史は、確かに権力者や富裕層が自己顕示のために収集したことが基礎だが、現代アートは、どこにでもありそうなイタズラ書きのような絵画や何だか不思議な形の物体、頭の体操をするような映像などなど、何だかわからないなりに、貧困や差別、暴力やジェンダーなどの社会の様々な課題の解決に心が動かされるような、不思議な作品がいっぱいなのだ。
 まだ一度も現代アート展に出向いたことのない人はぜひ一度出かけてほしい。
 スマホの中で見るのと現地で見るのではえらい違いだということをぜひ知ってほしいのだ。
 貧困には「相対的貧困」と「絶対的貧困」の2種類があると言われている。
 相対的貧困とは、国、社会、地域などの一定母数に属する人々のなかで、大多数よりも貧しい状態を示しおり、いっぽう、絶対的貧困は、ある最低必要条件の基準に達していない状態のことで、例としては衣食住の不足、インフラの未整備などで、およその人が想像しうる人間らしい生活が困難な状況だ。
 絶対的貧困の条件は子どもの体重が平均を下回ることも意味し、海外ではストリートチルドレンの多くが該当し、住む家や衣類の心配に加え、成長や健康にも悪影響がおよぶと考えられている。
 ストリートチルドレンなどは日本に無縁だと思い、日本は豊かだと勘違いする人が多いが、物質的には確かにそうでも、文化芸術面では、明らかに日本の貧困は世界最低レベルだと思う。
 文科省によると、「今日の経済的な豊かさの中にあって、人々は単なる利便性や効率性だけでない快適さや心地よさといった本当の豊かさを必ずしも実感できていない」とのことだが、「芸術、伝統芸能、生活文化、文化財などの文化芸術は人々に楽しさや感動、精神的な安らぎや生きる喜びをもたらし、人生を豊かにするもの」だそうだ。
 さらに「豊かな人間性を涵養し、創造性をはぐくみ、人間の感性を育てるほか、他者に共感する心を通じて、他人を尊重し、考えを異にする人々と共に生きる資質をはぐくむもの」だと断言している。
 ならもっと、防衛費や社会福祉ばかりにお金を使わないでそっちにお金を使ってほしいという声が聞こえてきそうだが、それは別らしい(笑)
 まあ、だからこそ、民間でできることは民間でやらないといけない。まだまだ我が財団でやらなければいけないことは尽きそうもないなあ・・・

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年2月)

第218号 少子化対策の前にやることない?

 この4日、年頭の記者会見で、岸田文雄総理大臣が今年の抱負を語った。
 その中でも特に力を込めたのが"異次元の少子化対策"だ。自ら『ようやく政府が本気になった』と、思って頂ける構造を実現すべく・・・と語ったのである。

 気になるその中身だが、少子化対策のための3つの「基本的な方向性」として、1つ目は、「児童手当など経済的支援の強化」。2つ目は、学童保育や病児保育など「子育てサービスの強化」。3つ目は、育児休業制度をはじめとする「働き方改革の推進など」だ。
 東京都の小池知事も、同じ日に「0歳から18歳の子どもに対して、月5000円程度を給付する」と発表している。

 まあ、2022年の年間出生数が統計開始以来、初めて80万人を割り込む見通しとなった現状を踏まえ、少子化対策については放置できないと思ったのだろう。
 しかしだ。
 「異次元の金融緩和」が失敗だったのに、またしても「異次元」って、よっぽど政治家は「異次元」が好きなのか、たかが現状対策の延長や多少のバラマキで何が変わるというのだ!!

 まずバラマキ政策だが、現行の出産育児一時金は42万円で、今回は8万円増の50万円だそうだが、1回きり8万円増えるからもう一人産もうという人がいたら連れてきて欲しい。
 政府はさらに、出産前後で計10万円相当を配る「出産・子育て応援交付金」も新たに創設したが、これも1回きりだ。
 毎月10万円もらえるなら、もう一人産もうとなるだろうが、たった18万円で子どもが増えるのだろうか・・・?金さえ出せば子どもが増えるというのも乱暴な考えだ。
 まるで政府の対策は「お金を上げるから5人産め」というようなもので、少子化の原因は、婚姻対象年齢層の絶対人口の減少とそれらの婚姻数の減少なのだから、今いる人たちにお金で出産を促す前にやることがあるだろう。
 そう、それが結婚だ!!
 今一番問題なのが、若者が若者のうちに結婚できない問題だ。
 なぜ、若者の婚姻が減るのか、その対策もしないで、ただ「産めよ増やせよ」といっても「無い袖は振れない」のだ。

 ではなぜ、若者は結婚しなくなったのだろうか?? それって、晩婚化が原因???
 平均初婚年齢の長期推移を見ると、まだ皆婚時代だった1980年当時は、男性27.8歳、女性25.2歳だったのに対し、2020年は、男性31.0歳、女性29.4歳と男女とも年齢があがっているのだから「晩婚化」は確かに正しい。
 しかし、「晩婚化」というのは、年齢が遅くなっても結婚はするから「晩婚化」なのである。
 だとすれば、なぜここ25年にわたって初婚数は減少し続けているのか?
 多少の婚姻発生数の後ろ倒しがあったとしても、例えば10年単位で同数になるのでなければ、それは「晩婚化」とは言わないのだ。男性は25~34歳、女性は25~29歳での初婚率は確かに激減しているが、かといって晩婚化しているかといえばそうではない。実は35歳以上でみると過去40年、ほぼ変化はないのだ。
 女性に関しては、40年前も今も35歳以上の初婚率は完全に一致している。男性に至っては、むしろ1980年より2020年のほうが35歳以上の初婚率は下がっているのだ。
 そう、実は「晩婚化」ではなく「非婚化」「嫌婚化」なのだ!!
 だから、少子化対策でお金を配るよりも、結婚対策でお金を配るのが先だということが、なぜ政治家や専門家にはわからないのだろうか???
 「結婚したら100万円」の方がよっぽど効果あるということは明白だ!

   ではなぜ、若者は結婚できない(しない)のか・・
 もちろん、若者が若者のうちに結婚できない事情の大きな環境要因としてまず挙げられるのが、彼らの経済的問題だろう。
 国税庁の令和3年分 民間給与実態統計調査によれば、2021年の全体の平均給与は443万円で、これは前年比102%で増えたことになっている。しかし、国民生活基礎調査に基づくと、20代の2021年の年間可処分所得は、わずか272万円で、半数以上が300万円にすら達していなかった。
 1996年の可処分所得は281万円だったから、悲しいことに、25年も前の20代より減っているのだ。
 若者も現役世代全体も酷い有様で、どちらも可処分所得は25年前に届かない。平均給与が若干あがったとしても、実際の所得は大きく下がっているのだ。
 なぜだろう??

 平均給与があがっても可処分所得だけが減る理由は、直接税と社会保障費負担の増額だ。
 この25年間に、20代の若者は給料から天引きされる負担が、1996年の約63万円から約102万円へ1.6倍増になっているのだ。もちろん、現役世代の負担も1.5倍増。
 ただでさえ少ない給料の上に、がっぽり天引きされたのでは、お金がないのも当然だ!!
 そしてまた岸田総理は、増税の話を言い出している。
 どんだけ、国民の可処分所得を下げたいのか、ホント勘弁してくれと言いたくもなるが、それで結婚する気が無くなっているなら、それは大問題だろう。

 少子化対策に関連する国の予算は2021年ベースで6.1兆円あるが、そのうち5.8兆円が子育て支援に使われている。
 もちろん、それを削減しろとは言わないが、少子化対策の前に、その前提である婚姻増、結婚を希望する若者を増やさなければ、何も意味がないということを誰か岸田総理に教えてあげて欲しい。
 「若者の結婚が増えなければ子どもは生まれてきません」って!!
 じゃあ、異次元っていうくらいなら「一夫多妻制の導入」や「未婚の子供支援」、もっと進んで「男性に子宮移植」くらいやらないと異次元じゃないだろう(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年1月)
過去のコラムはこちら(旧サイト)