第218号 少子化対策の前にやることない?

 この4日、年頭の記者会見で、岸田文雄総理大臣が今年の抱負を語った。
 その中でも特に力を込めたのが"異次元の少子化対策"だ。自ら『ようやく政府が本気になった』と、思って頂ける構造を実現すべく・・・と語ったのである。

 気になるその中身だが、少子化対策のための3つの「基本的な方向性」として、1つ目は、「児童手当など経済的支援の強化」。2つ目は、学童保育や病児保育など「子育てサービスの強化」。3つ目は、育児休業制度をはじめとする「働き方改革の推進など」だ。
 東京都の小池知事も、同じ日に「0歳から18歳の子どもに対して、月5000円程度を給付する」と発表している。

 まあ、2022年の年間出生数が統計開始以来、初めて80万人を割り込む見通しとなった現状を踏まえ、少子化対策については放置できないと思ったのだろう。
 しかしだ。
 「異次元の金融緩和」が失敗だったのに、またしても「異次元」って、よっぽど政治家は「異次元」が好きなのか、たかが現状対策の延長や多少のバラマキで何が変わるというのだ!!

 まずバラマキ政策だが、現行の出産育児一時金は42万円で、今回は8万円増の50万円だそうだが、1回きり8万円増えるからもう一人産もうという人がいたら連れてきて欲しい。
 政府はさらに、出産前後で計10万円相当を配る「出産・子育て応援交付金」も新たに創設したが、これも1回きりだ。
 毎月10万円もらえるなら、もう一人産もうとなるだろうが、たった18万円で子どもが増えるのだろうか・・・?金さえ出せば子どもが増えるというのも乱暴な考えだ。
 まるで政府の対策は「お金を上げるから5人産め」というようなもので、少子化の原因は、婚姻対象年齢層の絶対人口の減少とそれらの婚姻数の減少なのだから、今いる人たちにお金で出産を促す前にやることがあるだろう。
 そう、それが結婚だ!!
 今一番問題なのが、若者が若者のうちに結婚できない問題だ。
 なぜ、若者の婚姻が減るのか、その対策もしないで、ただ「産めよ増やせよ」といっても「無い袖は振れない」のだ。

 ではなぜ、若者は結婚しなくなったのだろうか?? それって、晩婚化が原因???
 平均初婚年齢の長期推移を見ると、まだ皆婚時代だった1980年当時は、男性27.8歳、女性25.2歳だったのに対し、2020年は、男性31.0歳、女性29.4歳と男女とも年齢があがっているのだから「晩婚化」は確かに正しい。
 しかし、「晩婚化」というのは、年齢が遅くなっても結婚はするから「晩婚化」なのである。
 だとすれば、なぜここ25年にわたって初婚数は減少し続けているのか?
 多少の婚姻発生数の後ろ倒しがあったとしても、例えば10年単位で同数になるのでなければ、それは「晩婚化」とは言わないのだ。男性は25~34歳、女性は25~29歳での初婚率は確かに激減しているが、かといって晩婚化しているかといえばそうではない。実は35歳以上でみると過去40年、ほぼ変化はないのだ。
 女性に関しては、40年前も今も35歳以上の初婚率は完全に一致している。男性に至っては、むしろ1980年より2020年のほうが35歳以上の初婚率は下がっているのだ。
 そう、実は「晩婚化」ではなく「非婚化」「嫌婚化」なのだ!!
 だから、少子化対策でお金を配るよりも、結婚対策でお金を配るのが先だということが、なぜ政治家や専門家にはわからないのだろうか???
 「結婚したら100万円」の方がよっぽど効果あるということは明白だ!

   ではなぜ、若者は結婚できない(しない)のか・・
 もちろん、若者が若者のうちに結婚できない事情の大きな環境要因としてまず挙げられるのが、彼らの経済的問題だろう。
 国税庁の令和3年分 民間給与実態統計調査によれば、2021年の全体の平均給与は443万円で、これは前年比102%で増えたことになっている。しかし、国民生活基礎調査に基づくと、20代の2021年の年間可処分所得は、わずか272万円で、半数以上が300万円にすら達していなかった。
 1996年の可処分所得は281万円だったから、悲しいことに、25年も前の20代より減っているのだ。
 若者も現役世代全体も酷い有様で、どちらも可処分所得は25年前に届かない。平均給与が若干あがったとしても、実際の所得は大きく下がっているのだ。
 なぜだろう??

 平均給与があがっても可処分所得だけが減る理由は、直接税と社会保障費負担の増額だ。
 この25年間に、20代の若者は給料から天引きされる負担が、1996年の約63万円から約102万円へ1.6倍増になっているのだ。もちろん、現役世代の負担も1.5倍増。
 ただでさえ少ない給料の上に、がっぽり天引きされたのでは、お金がないのも当然だ!!
 そしてまた岸田総理は、増税の話を言い出している。
 どんだけ、国民の可処分所得を下げたいのか、ホント勘弁してくれと言いたくもなるが、それで結婚する気が無くなっているなら、それは大問題だろう。

 少子化対策に関連する国の予算は2021年ベースで6.1兆円あるが、そのうち5.8兆円が子育て支援に使われている。
 もちろん、それを削減しろとは言わないが、少子化対策の前に、その前提である婚姻増、結婚を希望する若者を増やさなければ、何も意味がないということを誰か岸田総理に教えてあげて欲しい。
 「若者の結婚が増えなければ子どもは生まれてきません」って!!
 じゃあ、異次元っていうくらいなら「一夫多妻制の導入」や「未婚の子供支援」、もっと進んで「男性に子宮移植」くらいやらないと異次元じゃないだろう(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2023年1月)
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