第238号 高校無償化を機に学校制度を見直すべき!

 すっかり、このコラムは政治家の悪口を言うボヤキコーナーになってしまったが、今回もそれに近いかもしれない(笑)
 そう、それは、東京都が2024年度から導入した、私学を含めた高校授業料の実質無償化における「所得制限の撤廃」の話題からだ。
 昨年12月、東京都の小池百合子都知事(通称百合ネエ)が都議会で、高校授業料の無償化について24年度から所得制限の撤廃を打ち出した。
 これまでも都立高、私立高共に、年収910万円未満の世帯は実質無償だったが、今回、保護者が都内在住であれば都外の私立高に通学する生徒も含めて全員、高校授業料が実質的にタダになったのだ。
 所得制限撤廃ということは、その最大の恩恵を受けるのはもちろん高所得者層なのだから、当然、百合ネエの高所得者対策の政策なのだが、まあ、年収910万円以上の世帯なんて、それほど多くないだろうから大したことはないと思う人も多いだろう。
 ところがどっこい、都民はお金持ちなのだ!
 その恩恵を受ける都民は想像以上に多く、昨年度まで無償化の対象だった生徒数は、私立高で約6万人(1~3年生)だったのだが、これが一気に約16万人へとおよそ10万人も増えたのだ。
 10万人が増えるということで、選挙対策しか考えない百合ネエが動かないはずはない。
 もしこれが、2万人だったらやらなかっただろう。
 ただ、12月と言えば、最後の三者面談もちょうど終わった頃であり、私立高の一般入試本番まで2カ月余りに迫った時期のサプライズ発表だっただけに、そこから志望校を変える人も多くないだろうから、激変するとしたら2025年度あたりからだろう・・・と言われていたのだ。
 ところがだ。時期的に、受験校選択にこそ影響がみられなかったものの、都立高入試の受検率に加え、合格後の進路選択において、これまでにない大きな動きが起きたのだった。
 都立高のうち、東京大学など難関国立大学や国立大医学部医学科の合格を目指す「進学指導重点校」に指定された7校の24年度入試における不受検率(入試欠席率。入試応募者数のうち、入試を受けなかった受験生の割合)が驚くべき数字なのだ。
 都立高最難関、日比谷高の22.9%を筆頭に7校中5校で不受検率が上がっており、頭の良い生徒は軒並み都立を敬遠しだしたのだ。
 ん???なんで??? 受験しないってどういうこと?と思っている人も多いだろから説明すると、東京都における国立・私立高の合否は都立高入試日の前に発表されるのだ。
 そのため、「私立に受かったのだから、授業料が実質無償なら合格した私立に入学を決めて、都立の受検は欠席しよう」という選択がなされたわけである。
 中学校の先生は、都立高校に落ちる子たちに配慮して、「私立に行きたいなら、都立は受験するのをやめなさい」と指導しなくてはいけないので、大学のように「記念受験」は許されないのだ。
 実は私の母校も、この東京都が指定する「進学指導重点校」なのだが、恐らく今後は凋落の一途をたどることになるだろう。本当に残念だ。
 受験率が下がるだけでなく、24年度入試で日比谷高が定員割れし、5年ぶりに2次募集を行ったことが話題となったように、都立高に合格したものの入学を辞退した生徒も難関校を中心に少なくなかったのだ。
 特に開成高や早慶付属高をはじめとする難関私立高の入学手続き率が例年以上に大きく上昇した結果、それらの私立高で補欠合格者の繰り上げ合格が減少し、従来、早慶付に合格しても都立高を選ぶ生徒が一定数いたが、今回の所得制限撤廃で私立高にほとんど持っていかれたわけである。
 さらに、都立高における授業料無償化の影響は、難関校だけでなく、競合する私立高が多い中堅校にも影響が出ており、具体的には、地域3~4番手以下、一般的な偏差値でいえば60以下の都立高では、おそらく私立高にほとんど生徒が奪われてしまうだろう。
 近い将来、都立高で生き残れるのは、競合する私立高が少ない学力下位校や過疎地域だけということになりかねない。
 もっと恐ろしいことに、都内の公立中学3年の生徒数は少子化の影響で、6年後の30年を境に生徒数が急減していくのだ。
 つまりパイの縮小が避けられない以上、都立高校はもう生き残れないだろう。
 ということはつまり、百合ネエの最大の目的は「都立高の統廃合」なのだ。
 都立高校を半分にしてしまえば、とてつもないほどの財政支出が減るわけで、今回の無償化というのは、富裕層の票が欲しいというだけでなく、ジャブジャブ使い込んでほとんど枯渇した東京都の財政を潤わせること、まさにそれに向けた布石なのだ。
 もちろん、この試みがうまく行けば、政治家たちもバカではないので、次に目指すのは国公立大学改革だろう。
 今でも一部の優秀な学生に対しては、国が関わる奨学金により、大学の学費も無償化になっているのだが、一部の優秀な学生だけでなく、ある一定の条件を満たせばすべて無償化などにする可能性もある。
 そうなると、貧富に関係なく優秀な学生が勉強に励むことができるよう「国公立大学」が存在していたわけだが、それもほとんどいらなくなるのではないだろうか?
 まあ、少子化で子どもの数が激減しているのだから、いきなり私立の学校への補助金をカットしてつぶすよりも、しれーっと公立の学校を消し去っていこうというのだろう。
 さて、ここまで読んで皆さんはどう思うだろうか。
 私はそもそも「大学を半分に」どころか「大学を10分の1に」という論者だから、この政策自体に反対はしない。
 しかし、公立ばかりを減らしてどうするのだろうか?
 一番先にやるのは、私立の学校への補助金をカットすることではないだろうか。
 令和5年度の私??学への補助金は約3000億円。私立高校は約1000億円だ。
 合計4000億円のカットができれば、相当助かるのではないだろうか。
 最大の国家詐欺である「社会保険料」を少しでも引き下げることができれば、世界で唯一、30年以上下がり続けている日本のサラリーマンの実質賃金も少しは上がるのではないだろうか??
 もちろん、それをやれば、生き残れる私立学校は1~2割くらいだろう。
 でも、このまま高校や大学の無償化が進めば、私立熱はますます高まり、特色ある教育やしっかりした教育をしている学校はきっと生き残れるだろう。
 さらに、そこに行きたいという生徒も増え、勉強も熱心にするようになるだろう。
 大学に入学できる生徒が10人に1人になれば、学びたい人に最高の教育を提供するという「真の教育」が実現できるし、日本経済の復活も間違いなく近いだろう。
 だって、日本が世界一の経済大国だったときは、大学の行ける人は10人に1人だったのだから!
 さて、ここまで言うと、学校関係者にものすごく反対を受けるだろうが、私も実際12年も大学教員をしてきて、まさに現場で一番わかるのは、「学生はいったい大学に何をしに来ているのか」だ。
 ほとんど大学に行くのが当たり前になっており、「学びたくて行く」のではなく、「みんなが行くから行く」となっているのではないだろうか。
 そのあたりも大きく変えられれば良いと思っている。
 私事だが、私が教えている大学から先日、毎年恒例の「来年度の出向のお尋ね」が来た。
 これは、「来年もお願いします」ということと、「何曜日の何限を希望しますか?」という意味なのだが、12年目の節目に当たって初めて、「来年度は希望しない」に〇をつけて提出した。
 教えるのが嫌になったのではなく、自分一人では大学も学生も改革はできないと思ったからだ。
 なのでそんな私が思う最大の教育改革は、「大学の数を減らすこと」だと思っている。
 自民党の総裁選や野党の党首選が近づいてきて、候補者も乱立して賑やかになってきているが、ぜひ総理やトップを目指す人には、「私立学校への補助金の見直し」を掲げて欲しい。
 真の日本を想う人なら間違いなくやれるだろう。
 そんな人が出てきたら、なりふり構わず応援したいと思う!!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年9月)

第237号 好き嫌いして幸せになろう??

 前号で、東京都知事である「ゆりネエ」のことをけちょんけちょんに書いたのだが、その後会った人に「よっぽど嫌いなんですね?」と言われたので、それで気が付いたことがある。
 確かに私はゆりネエのことが嫌いだが、普通の人の嫌いとはまたちょっと違うような気がする。
 普通は生理的に嫌いになると「あの人はキライ」「見るのも嫌だ」となるだろうが、私は彼女を生理的に嫌いなわけではない。何度も会ったことがあるが、魅力的なオバサマという印象しかない。
 ただ、やってきたこととやろうとすることが大嫌いなので、行動的・能力的に嫌いと言った方がよいだろう。
 例えて言えば、学校の学級委員に相応しくない人が、ただ目立ちたいとか皆に注目されたいというだけでビジョンもないのに、嘘をつきまくって学級委員になり、仲が良くまとまっていたクラスが崩壊して、皆がバラバラになってしまい、クラスの人がみんな嫌な気持ちになるという感じだろうか。
 うーん、自分ながらわかりやすい例えだ!
 まあ、好きか嫌いかと言われたらもちろん嫌いだが、人間的に性格が嫌いでも、政治家や社長など上に立ってほしいと思う人はたくさんいるので、逆に言うと政治家でなければ人間的には好きなのかもしれない(笑)
 「およそ、人生とは趣味や嗜好をめぐる争いなのだ」と喝破したのはドイツの偉大な哲人フリードリヒ・ニーチェだが、彼が言うように、私たちの人生を大きく左右する「好き嫌い」とは、そもそもいったいなぜあるのだろうか?
 好きな色、好きな食べ物、好きな動物、好きな人…などなど、どんな人にも「好き嫌い」はかならずある。
 たとえ「無趣味」「無趣向」などと断言している人がいたとしても、なにかを判断する際に「好み」は避けて通れないし、意識しているかどうかはまた別の話だ。
 ホストやコンカフェ(コンセプトカフェ)がかつてないほどに大流行で、それにはまっている女性が急激に増えている。
 昔はお金持ちの女性か水商売の女性がホストにハマるというのが当たり前だったが、今や、普通のOLや学生などが、推し(好きなホストなど)にハマっているで、かなり社会問題化しているのをご存じだろう。
 多額の借金をして返せなくなったり、とにかく推しに毎月100万円以上貢がないと愛してもらえないそうなので、そのほとんどの行く先が、パパ活や風俗営業だ!
 大久保公園に立って客引きをしている若い女性のほぼ100%が、推しに騙されて立っているのだ。
 なぜ、騙されていることに気が付かず、なぜそんな人を好きになってしまうのだろうか。
 そう考えると、どうして、人は「好き嫌い」が形成されるのだろうか?
 この問いに対して明快な正解を持っている人はおそらく存在しないのではないだろうか。
 要するに、フェルマーの定理よりも超難題なのだ(笑)
 とはいえ、何でも一刀両断してきた私が、そう簡単に引き下がるわけにはいかないので、わたしなりに考えてみた。
 まず、選択というのは好みの影響を受けるが、好みも選択の影響を受けるのではないだろうか。
 ひとつ結論めいたことを言えば、人は何かを選択するとき、間違いなく「好み」の影響を受けるわけだが、その逆も同じように起こり、つまり、「好み」は選択したものに影響を受けるということだ。
 たとえば、好きな色はどうやって決まるのかを考えてみてほしい。
 その前に、人間の避けられない欲求に食欲があるが、そのことを考慮すると、食べ物の「好き嫌い」は比較的早期に形成されると言っていいだろう。
 そして、「好きな食べ物」が決まると、日常的にその「好きな食べ物」を食べる機会や見る機会が増える。
 となると、「好きな食べ物の色」を見る機会も自然と増え、好きな色は、「好み」を選択したものに影響を受けるのだ。
 繰り返し「好きな食べ物の色」を見るうちに、いつのまにか、その色が「好きな色」になっているということが起こるらしい。
 イチゴが好きな人は赤やピンクが好きになり、メロンの好きな人は緑に好感を持ち、バナナが好きな人は黄色に興味を持つだろう。
 つまり、興味深いことに、私たちは好みが決まると、その好みに固執しようとしてしまう動物なのだ。
 アイデンティティが「自己同一性」を意味することからもわかるように、要するに「自分はこれが好きなんだ」と思い込もうとして、私たち人間は「自分は、○○な人間です」と決めつけてしまうのだ。
 もしそれが曖昧だと自分が不安になってしまいので、ちゃんと検証もしないうちに「自分は○○な人間だ」と思い込んでいるだけなのかもしれない。
 そんなわけで、自己演出的に好みを固定化しようとする傾向にあるから、「自己同一性」というのは、言ってしまえば、単なる「思い込み」でもあるわけで、だんだんと「行動」と「思考」にズレが生じてくるだろう。
 「私はウソが大っ嫌い」と言って、隠れて不倫している人や、「私は人を信用しない」と断言しているくせに、「今日のあなたの運勢」を見ようとしたり、友達に相談したりしている人はたくさんいる。
 だって、「自分は○○の人間だ」って決めたのは、コンピューターが解析したわけでもない、他の誰でもない、あなた自身が何となくそう決めたのだ。

 さて、ここまで読むと、摩訶不思議な「好き嫌い」の謎が多少はわかってきたのではないだろうか。
 とはいっても、私たちが生きるうえでもっと大事なことは自分がどんな「好き嫌い」をもっているかだろう。
 恋愛や人付き合いだけでなく、仕事や趣味など、自分の「好き嫌い」がわからなければ不幸になる可能性が高いのだ。
 そして何はともあれ、「好き嫌い」を知ることよりも、もっと大事なことは自分が幸せになることなのだ。
 さて、あなたはどんな「好き嫌い」があり、それがどう自分を幸せにしてくれるだろうか?
 それを判断するのに最適なアイテムがある。それはペットの好みだ。
 よく、犬派か猫派かという話題になることがあるだろう。
 これは、議論の尽きない永遠のテーマなのだが、飼うとしたら、自分の性格やライフスタイルに適したペットを飼うのが一番だが、あえて決めるならばどちらの方が幸せを実感しやすいのだろうか?
 シカゴ大学の独立研究機関「NORC」が2018年に実施した全米社会調査(GSS)の結果によると、犬を飼っている人は猫を飼っている人よりも幸せだという結果が出た。
 ペットについて尋ねたこの調査では、全米の家庭の約6割が少なくとも1匹のペットを飼っていることが明らかになったのだが、6割もペットを飼えるって、それだけで何となく豊かな国なんだなあと思ってしまう。
 その調査では、幸福度について尋ねたところ、ペットを飼っている人と飼っていない人との間で、幸福度に大きな違いはなかった。
 これを聞いて、ペットを飼っていない人もホッとしたことだろう。
 しかし、ペットの種類によって明確な差違がみられたのだ。
 犬を飼っている人(36%)は猫を飼っている人(18%)の約2倍、「非常に幸せ」と答える割合が高かった。
 その一方、猫を飼っている人はペットを飼っていない人(32%)よりも、かえって幸福度が低く、犬と猫を両方飼っている人(28%)の幸福度はその中間だった。
 いやきっと、このシカゴ大学の機関の責任者が犬派だからではないかと疑いたくなるが、実は別の調査でも、類似の傾向が確認されている。
 オンライン・プラットフォームの『ハピネス・トラッキング』が「犬の飼い主と猫の飼い主、どちらが幸せか」という調査を実施したところ、ペットの飼い主は全般的にみればペットを飼っていない人よりも幸せだが、なかでも特に犬の飼い主の方が猫の飼い主より幸せだとの結果が出たのだ。
 1万2167人の回答を分析したところ、犬を飼っている人の平均の幸福度が10点満点で7.29であったのに対し、猫では6.95となった。
 ただしNORCの調査結果と異なり、この調査では猫を飼っている人の方が何も飼っていない人(6.26)よりも幸福度が高い傾向が見られたので、猫派もホッとしただろう。
 それにしても、なぜ犬を飼っている人が幸福を感じやすいのだろうか?
 さまざまな研究結果を分析したサイコロジー・トゥデイの記事によると、犬を飼っている人はより健康を維持しやすいという。
 犬は定期的な運動が必要であり、それにより飼い主も活動的になることで、心身の健康状態が良好に保たれるようだ。散歩などの活動は、飼い主にとっても有酸素運動となり、心臓や肺の機能を向上させストレスを軽減する効果がある。
 さらに、犬と介護リスクについての調査では、犬を飼っている人は飼わない人に比べ、介護が必要になるリスクが0.54倍となっていることが確認された。ほぼ半減している状態だ。
 また、犬の散歩に出ることで、ほかの人と出会ったり友人と会ったりする機会が増える。これらはコミュニティへの所属感を生み出し、精神的な健康と幸福感を高める。
 それに比べ、猫は独立した性格であるため、犬ほど飼い主を活動的にすることはない。猫の場合は、飼い主同士の交流も少ない傾向がある。
 また、犬を飼うことで自己肯定感も向上するようだ。
 犬の飼い主は自己肯定感が高いとする調査結果が、スイスの科学誌「フロンティアズ・イン・サイコロジー」に発表された。
 サイコロジー・トゥデイは、犬が飼い主をリーダーと認め、従順なことも、自己肯定感の高さに影響しているとみる。
 さらには散歩中にペットを褒められる場面もしばしばあるため、これも気分の高揚に役立っている可能性があると記事は指摘している。
 このように各種調査では犬派に分がある結果となったが、一方で猫の飼育が幸せにつながらないかというと、そのようなことはないはずだ。
 ペットの猫と幸せに暮らしているという人は大勢いるため、猫派の人たちは、犬の飼育と比べて引け目を感じる必要はないだろう。
 サイコロジー・トゥデイは、猫は室内派に最適なペットだと説く。
 猫は自立心が強く、飼い主の家の中で過ごすことを好むし、外への運動が必要な犬とは違って、積極的な運動や社交活動を引き起こすことがない。
 そのため、外へ出る機会が少ない人や自宅で静かに過ごしたい人にとっては特に理想的だ。
 また、猫は人間から独立して行動する傾向があるため、飼い主の生活スタイルに影響を与える可能性が少ない。
 だから、飼い主は自分自身の時間を自由に使うことができることになり、自分の時間を大切にしたい人にとっては大きな魅力だ。
 猫はまた、その独特な性格が魅力でもある。
 ワシントン・ポスト紙はヘミングウェイの言葉を借り、「猫には絶対的な感情的正直さがある。人間は何らかの理由で自分の感情を隠すことがあるが、猫はそうではない」と代えがたい特性を表現している。
 また、前出の調査では犬を飼っている人の方が幸せとの結果が出たが、これは相関関係を示しているものの、必ずしも因果関係を示しているとは限らない。
 インデペンデント紙は、犬を飼う人は結婚して自宅を所有している割合が高いと考えられ、これらの外部的な要因が生活の満足度に寄与している可能性もあると指摘している。
 だが、最近の傾向では、結婚している人の方が何かと文句言っているように、結婚しない人に比べて不幸になる傾向が強く、そう考えると「結婚しない猫派」が何となく幸せの頂点を極めるような気がするのは私だけだろうか(笑)
 以上のように、統計上は犬を飼うことには多くの利点が認められるものの、最適なペットは人々の生活スタイルや性格によるところが大きいから、自分の性格や行動によって、犬か猫を選んで飼えば、幸せ度がグーンとアップするだろう。
 なに?? 自分は犬も猫も嫌い???
 そういう人は、動物好きな人を好きになればよいのだ!!
 そして、その人をペット代わりにして幸せになろう(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年8月)

第236号 東京都民は地獄行き?

 日本の首都のトップを決める都知事選がついに幕を閉じた。
 結果をみれば、逮捕も秒読みの「ゆりネエ」の三選だ・・・
 4年前にも書いたが、都民は本当にバカの集まりだ!
 いや、正確には、都民は頭がよいが、選挙に行く都民はバカの集まりなのだ。
 どうせ、これからまた4年間も続く小池都政にうんざりすることになるとも知らず、よくもまあ多くの都民は暗愚な首長に投票したのだろうか???
 はっきり言って、自己責任なのだから、東京はますます地獄のような状況になるだろうが、そうなっても、ゆりネエに投票した奴らに「ザマアミロ」と言ってやりたい!
 あんたたちは、ちゃんと政治というものを勉強したことあるのか??
 ゆりネエが2期8年で唱えた「7つのゼロ」は、ほとんどすべて未達成だって知っているのか???

・待機児童ゼロ
・介護離職ゼロ
・残業ゼロ
・都道電柱ゼロ
・満員電車ゼロ
・多摩格差ゼロ
・ペット殺処分ゼロ

 なんとビックリ、小池氏が就任当初から公約として掲げてきた「7つのゼロ」は、「ペット殺処分ゼロ」を除き、ほとんど達成されていないのだ!
 世界の歴史上、公約をほとんどすべて達成しなかった政治家は、100年前に遡っても、ゆりネエただ一人だろう。
 コロナ禍での「三密回避」「夜の街や飲食店への自粛要請」はいずれも非科学的で、とりわけ飲食業界に大打撃を与え、やばいと思って、今度は潤沢な東京都の財産をほとんど使って、お金をばらまいても、結局多くの飲食店はつぶれたか潰れる一歩手前だ。
 私の知人のおばさんがやっている多摩地区のスナックは、年間の売り上げが300万円(利益はほとんど0円)もなかったのに、1年で補助金を1400万円ももらって、結局コロナ補助金で2000万円近くボロ儲けして、外車を買って、海外旅行に行き、補助金が終わったら、あとは年金で暮らすと言って店をたたんでしまった。
 ゆりネエの失策で、そんな飲食店ばっかりだ。
 極めつけは、カイロ大学卒業への疑惑と地位利用の選挙運動だろう。
 もともと側近だった人がかなりの証言を暴露しただけでなく、地位利用の選挙運動もかなりあくどいので、それぞれ公選法違反で刑事告発もなされ、逮捕も秒読みかもしれない。
 以前から私が指摘する通り、どう考えても卒業どころかほとんど通っていない(だってアラビア語話せないの知ってる?)のに、ただただ目立ちたくてタレントになりたくて嘘ばっかりついていた人なのだ。
 タレントに飽きたら今度は政治家!
 とにかく目立つことしか考えていない人なのだ。
 都知事は腰掛で、次に目指すのは総理大臣らしい(笑)
 ではなぜ、こんなに都民がバカなのか、東京都以外に人はピンと来ないかもしれないから教えてあげよう。
 まず、東京が依然として、日本において一番豊かだからである。
 豊かだから都民に危機感がなく、歴史上初めて財政的にも瀕死の状態に追い込まれていてもそれに気が付かず、暗愚な首長にみたび及第点を与えてしまったのだ。
 極めてシンプルな理屈である。
 例えば一人当たりの県民所得は、47都道府県のうち東京が最も高い。
 戦後半世紀以上、ずっと東京が県民所得で一位であり、内閣府の2020年度統計によると東京のそれは約530万円で、最下位の沖縄は約220万円だから、その差は300万円を超える。
 試しに1ドル=160円としてドル換算で示そう。東京は約3万3,000ドルでイタリアとほぼ同じ(2023年)。沖縄は約1万4,000ドル(同)となり、キューバと大差ないことになる。
 さらに言うと、日本が抱える様々な問題は、東京に限っては「無関係」だ!
 人口減少に悩む地方をしり目に、東京だけは転入超過が続いている。
 今年6月の東京都最新推計によれば、都の総人口は約1,418万人で、毎年3%~4%程度、人口が増え続けている。
 3%増としても1年で約40万人も増える。一方47都道府県のうち、40道府県近くが毎年人口減少に直面し、減少率最下位の秋田県は5%~6%、毎年人が減っている現実がある。
 秋田県の最新人口推計は今年6月時点で90万人をわずかに上回っており、7月の推計が出れば90万の大台を割り込むことは確実だから、わかりやすく言えば東京ではたった2年強で、秋田県の人口分が増えているのだ。
 だから、私もそうだが、東京に住み、東京で働いていると、すべてが東京の価値観が染みついてしまい、人口減少、少子高齢化、地方財政のひっ迫、地域経済の衰退、空き家問題、雇用問題など、日本が抱える様々な問題は、東京に限っては「無関係」とまではいわないものの、「他人事」であるのは間違いない。
 ひたひたと沈みゆく東京のことなど誰も知らず、東京はあいも変わらず「キラキラした街」であり、「若者が目指すべき街」なのだ。
 そういうイメージだからこそ、何となくゆりネエの政治家としての力も、そこそこキラキラしていると勘違いしてしまうのだろう。
 でもよく考えて欲しい。あれから8年……。
 ゆりネエが何を行ったかといえば、築地を戦略もなくめちゃくちゃに破壊したことと、利権どっぷりの新築住宅太陽光パネル義務化設置条例と、「再開発」「再整備」の名のもとに、人々の憩いの場である神宮外苑や各地の都立公園の樹木を次々と伐採したことくらいじゃないだろうか?
 みどりのタヌキなのに、緑を切ってどうするのか???
 長年親しまれた風景を壊し、悪趣味な建造物を建て続けるなど、都民を顧みぬ独善的な施策を次々と打ち出す政治力は確かに大したものかもしれないが、結局、自分の政治生命ファーストで、再エネなど新たな利権のための都政を強引に進めたやり方は、全く評価できない。
 ほとんどの識者は、ゆりネエへの希望は失望となり、今や絶望に変わり果てているが、都民は危機感もなくのほほんとして暮らしている。
 さあこれからが見ものだ。
 今度のゆりネエの公約は、過去の公約違反の反省からか、都知事がリーダーシップを発揮するようなセンセーショナルな公約と言えるようなものはほとんどない。
 まあ、あえて公約と言えるのは、都が行っている第2子以降の保育料無償化を第1子にも拡大することや、子育て世帯の家賃負担の軽減、出産の際の無痛分べんの費用を助成することなど、子育て支援が中心だが、出生率が1%を切る都民にはほとんど無関係ともいえる公約だ。
 また、高齢者対策として都独自の認知症専門病院を創設することや、自然災害への対策として、木造住宅が密集する地域の解消や電柱をなくして電線を地中に埋める「無電柱化」の取り組みなどをさらに進めるとしているが、かつて「7つのゼロ」などと強気の政策はほとんど「ゼロ」となった(笑)
 私は残念ながら都民だが、ゆりネエには全く期待していない!ここまで書けば当たり前か(笑)
 期待しているのは、そういうゆりネエに投票した人が、ますます東京で暮らしにくくなって、反省してくれることだけだ・・・。
 というのも、今回は、いつもの学歴詐称での告発だけではなく、公務員の地位利用による選挙運動を行ったとする公職選挙法違反の告発があり、これはかなり処罰に近いのではないかと思っているからだ。
 そうなれば失職ということになり、再選挙だ。
 処罰されればもうゆりネエは立候補できないから、違う候補者がまた乱立するだろうが、今度こそ、嘘をつかない、リーダーシップのある有能な人を選んで欲しい。
 できれば、選挙民にも全く期待できないから、私が言い続けているように、あらゆる国家試験よりも難しい都政のあらゆる分野を網羅するような選抜試験にしてほしい。
 知事だけでなく、市長も議員も、すべての選挙が無くなり、政治家選抜試験になれば、当選した人に文句を言う人はいなくなるだろう。だって知能と実力だもん。
 誰か賛同して~(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年7月)

第235号 AIはビジネスの救世主なのか?

 先々月号で、「AIが文化を破壊する日がいよいよ到来?」と書いて、音楽や芸術の世界に警鐘を鳴らしたばかりだが、もはや音楽や芸術の世界だけではなく、AIはさまざまな仕事を奪い始めているので紹介したい。
 そもそもこの話題は、2013年に、オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイ氏とマイケル・オズボーン氏が「雇用の未来 」という論文を発表したことから始まり、2015年12月「AIの導入によって日本の労働人口の49%の仕事が10-20年以内になくなる」というレポートが、野村総研とオックスフォード大学の共同研究によって発表された時に全世界に広がったのだ。
 そう、もう10年前に、AI(人工知能)の脅威は語られていたわけである。
 当時はあまりにも衝撃的で、テレビや新聞だけでなく、ビジネスの世界でもこの話題は持ちきりだったので、皆さんも覚えているだろう。
 私も、友達の税理士に「お前の職業が無くなるって」って言って、からかったのを覚えている。
 「AI失業」の危機を声高に唱える人がいる一方で、「AIが仕事を奪うなんてことはあり得ない」と断言する識者も少なくなかったのだが、あれから10年が過ぎた現在、人間の仕事は本当にAIに奪われたのだろうか???
 歴史を振り返れば、さまざまな技術が人々の仕事を奪ってきた事実は間違いなくある。
 だから、「AIが自分の仕事を奪うことはない」と断言できる人は相当少なくなってきているだろう。
 あと10年もすれば、手術をするのは「医者」ではなく完全に「ロボット」だろう。
 そう聞くと「えー、ちょっと不安」とあなたは思うかもしれないが、私も去年くらいまではそうだったが、今では逆に「人はミスを犯す可能性があるし、ロボットの方が安心だ」と思うようになっているから怖い。
 歴史は繰り返すのである。
 資本主義社会には技術がもたらす失業は当たり前のことで、おそらくその最初の失業は1800年前後のイギリスで起きた産業革命だったのではないだろうか。
 その頃、織機が普及し、それによってそれまで手で布を織っていた職人である「手織工」が失業し、20世紀初頭、アメリカでは1900~1920年ぐらいにかけて、自動車が急速に普及した結果、馬車を操る御者という職業が消滅したのだ。
 その他、「計算手」がコンピュータによって消滅し、電話交換手やタイピストなどもなくなった職業だ。
 だがもっと深刻なのは、人は何かとゼロイチ思考で物事を考えがちで、「職業は消滅しない」と結論づけて安心する人がいるが、「各職業においていくらか雇用が減少する」といったことに重きをおくべきだろう。
 つまり、特定の職業が消滅することはそれほど多くないにしても、この先数十年でその職業の雇用が何割か減るというのであれば、深刻な技術的失業の問題が発生するからだ。
 たとえば、デザイナーという職業は生成AIの普及によって雇用が間違いなく減少するが、消滅するとは断言できない。
 その理由は、AIにはない独自性が発揮できる人ならば、間違いなく価値は失わないからだ。
 ただ、これからデザイナーを目指す若者には、よっぽど才能のある人でない限り、「やめておけ」と言ってあげないといけないだろう。だって、デザイナーの雇用は間違いなく激減するからだ。
 先々月号にも書いたが、悲しいことだが、よっぽどの才能のある人しか残らないだろうと思われる「音楽や芸術」を志す若者に対しても「やめておけ」と言ってあげるのが本当の親切なのだろう。
 ただ、人間を代替するAIによって、労働者の5割近くが仕事を失うのは間違いないが、逆に言うと、むしろAIは生産性を高めるので、あなたも得をすることが多くなるだろう。
 たとえば、レジ係はセルフレジの台頭によって消滅するが、それに対して、パワーポイントのスライドやエクセルの表を作成してくれるAIは、私たちの能力を拡張するものと考えられ、営業で頻繁にそれらを使う人は、こうしたAIが登場することによって労力を節約でき、その分より多くの仕事をこなせるようになるわけだ。
 こうした拡張的な技術は生産性を向上させることができるので、AIは敵ではなく最大の味方と考えた方がよい。
 だって、「代替」が「拡張」につながることだってあるからだ。
 例えば、セルフレジが導入されてレジ係が必要なくなり店員が減るだろうが、それにより店舗をもう1軒増やすことが可能になるかもしれない。
 小さな会社を経営する人は、5年前まではほとんどが税理士に会計や税務処理を頼んでいたが、今ではほとんどの小さな会社の経営者は、自動処理ソフトを導入して、オンラインソフトに依頼している。
 税理士の需要は確かに減るが、オンラインソフト会社の職員は激増しているわけだ。
 ただ気をつけたいのは、新しい技術は度々失業をもたらしてきたが、こうした技術的失業が長期化・深刻化することが少なかったのは、別の会社や別の職種に移動できたからだということを忘れてはいけない。
 大きなくくりで見ると、まず農業の生産性が向上したことで、工業への労働移動が起き、その後、工業の生産性が向上し、サービス業への労働移動が発生したのだ。だから今までは仕事がなくて暴動が起きるなんてことはなかったのだ。
 だが、これからは違うかもしれない。
 だって、サービス業の次に労働移動する先がAIだとしたら、人が行きつく先はどこになるのだろうか。
 たとえば、旅行代理店も街でほとんど見かけなくなったのにあなたは気が付いただろうか?
 アメリカでは、旅行代理店やコールセンターのスタッフがITやAIによって仕事を奪われ、それらの人は清掃員や介護士などに転職しているのだ。
 すでに欧米では、サービス業内の「ホワイトカラー」(知的労働者)から「ブルーカラー」(肉体労働者)に逆戻りに労働移動している事実があり、そのため、アメリカにおける賃金の中央値(中間の人の賃金)は、伸び悩んでいるという、信じられないような事態が起きているのをあなたは知らないだろう。
 日本だって、銀行員の数は2018年には約29.9万人だったのが、2022年には26.4万人にまで減ってきており、20万人を切る日ももうすぐだ。
 ホワイトカラーのほぼすべての職業は肉体ではなく、頭脳や言葉を使う仕事であり、ということは当然AIと戦う仕事だと思って間違いない。
 だから、今後AIによって生産性が向上する分、一番雇用が激減するのはホワイトカラーの仕事なのだ。
 ホワイトカラーによって作られたAIが、ホワイトカラーの仕事を奪うなんて・・・悲しい
 今までのように、別の業務が増えて雇用は維持されると考える人もいるだろうが、アメリカの例でも分かるように、これからホワイトカラーは、ブルーカラーへ移動するか、失業を甘んじて受け入れるか、若しくはAIにはない能力を発揮するか、といった3つの選択を迫られるのだ。
 つまり、AIにはできない特殊な能力を持っていない普通のサラリーマンは、厳しいことを言って申し訳ないが、天国か地獄ではなく、10年後はブルーまたは失業ということになるだろう。
 そういう意味では、AIというものは間違いなく「会社の救世主」になれるが、「サラリーマンの疫病神」になるのも間違いないだろう。
 そうそう余談だが、大好きな大谷選手の試合を見ていると「なんで今のがストライクなんだ? 早く審判もコンピュータに変えろよ!」とつい心の中で叫んでしまう。
 ご安心あれ。スポーツの審判も人間がやるのはあと5年だろう。
 大谷選手の試合に限っては明日からでもAIに審判をやってもらいたいが(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年6月)

第234号 え?マイナンバーカードが無くなる日が来る?

 マイナンバー制度がドンドン進化しているのをご存じだろうか??
 もともと、国民総背番号制度ともいうべきマイナンバー制度は、アメリカの社会保証ナンバーのように9ケタの数字をデジタル化して一元化しておき、国民のすべての情報を管理するためにスタートしたはずだった。
 しかし日本の場合、アメリカのように戸籍などを設けず社会保障ナンバーに一本化する方向ではなく、住民票も戸籍もすべて残して、さらにマイナンバー制度を加えたあげく、銀行口座や年金の受給口座など色々な個人情報にまで紐づけようという、複雑な制度に変化してしまったのがそもそもの間違いだった。
 しかも、マイナンバーカードの普及は決して進んでいるとは言えず、国民全体でカードを持っている人は、3月末の時点で74%だ。
 4分の1の国民がまだ持っていないのはなぜか?
 それは、国民が政府の個人情報保護をまったく信用していないからだろう。
 実際、今まで個人情報が流出しても、政府の要人は誰も責任をとらず、処罰されたのは個人情報の処理を託された無名の業者ばかりだ。
 役所から預かったCDを初期化せず、そのまま中国に売りさばいていた業者さえいたくらいだから、政府を信用しろと言ってもそれは無理だろう。
 もちろんこの業者は当然ながら罰せられたが、この業者を選定した役人、おそらく利権絡みで役人にこの業者を推薦した政治家まで捜査が及ぶことはなく、権限を持つ人間がまったく責任をとらないまま、多数の国民の個人情報は中国に流出しているのだ。
 もうデジタル庁なんて要らない!デジタル警察が必要なのではないだろうか?
 そうしないと、個人情報の流出は、ますます激しくなるだろう。
 そんな危険と隣り合わせの状態で、マイナンバー計画はますます肥大化し続けている。
 まずは健康保険証と紐づけるということから始まった。
 しかも、最初は任意としていたはずが、いつのまにか年内までに義務づけることになったのだ。
 つまり、今年の12月2日からは現行の健康保険証を新規発行しないと決め、マイナンバーカードの保険証利用を強力にプッシュするのだそうだ。
 もちろん、メリットとしては特定健診や薬の情報をマイナポータルで閲覧できたり、正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられたり、限度額以上の医療費の一時払いが不要になったりするといった甘い言葉で何とか誘導しようと政府も躍起だ。
 まあ、私としては「お薬手帳お持ちですか?」といちいち聞かれることがなくなるのは嬉しいが・・・
 しかし、現時点でのマイナ保険証利用率はまだ10%にも遥か届かず、国民の9割超は従来の保険証を利用しているのに、病院でもいまだマイナ保険証を勧められたことがないのが不思議だ。
 本当に来年は、誰でもマイナ保険証を持つようになるのだろうか?
 そんな状態なのに、保険証だけでなく、知らぬ間に4月1日から預貯金口座のマイナンバー付番がスタートしたのだ。
 これにより、自分の財産が「丸裸」にされることになり、まだ義務ではないものの、今後は新規だけでなく、過去に開設した口座もこの制度に紐づけるため、金融機関もあの手この手で、国民を郵送してくるだろう。
 銀行口座の次は年金だ。
 5月27日から年金受給者の口座情報とマイナンバーも国に登録されることになったのだ。
 こちらもまだ登録は義務ではないが、対象者は日本年金機構からの書留郵便による通知後、一定の期限までに登録の有無を回答しなければ、自動的に「同意」したと扱われるという荒業を使い、ほぼ強制的に紐づけていくのだ。
 もちろん政府は「口座残高や取引履歴を把握することは絶対ない」と説明しているが、その言葉もだんだんとニュアンスが変わり、そのうち「口座残高や取引履歴を他の目的に流用することは絶対ない」に代わる日が近いことは、誰でも想像できるだろう。
 マイナンバーと口座の紐づけは今のところ任意だが、自治体からの書類に『嫌だ』と書いて返送するといった具体的な"拒否"のアクションをしないと、勝手に自動的に紐づけが行われる可能性がある。
 そうやっていつか国に個人情報をがっつり監視&管理される日も近いのだ。
 という私も、すでにマイナンバーカードを持っているが、これは、24時間、コンビニで住民票や印鑑証明書が取れることからだ。
 10数社の代表や役員を務めている私は、ほぼ毎月、住民票や印鑑証明が必要になるので、そのたびに役所に行かなくて済むのは大助かりなのだ。
 だからこの点では、マイナンバーカードは大変助かっている。
 しかし、ここでも、マイナンバーカードを使ってコンビニエンスストアで住民票の写しなどを交付するサービスで別人の書類が発行されるトラブルが相次ぎ、システムを運営する富士通の子会社は再発防止策をとったと説明していたが、今月、新たに高松市でトラブルが確認され、総務省は富士通に行政指導を行ったらしい。
 これについて松本総務大臣は、「率直に申し上げてがく然とし、極めて残念だ」と強く批判したが、国民としては、そんな政府に「がく然とし、極めて残念だ」と強く言いたい。
 確かに、マイナンバーカードが利便性を向上させるのは間違いないだろう。
 運転免許証を持たない人にとっても、本人確認が1枚で済む唯一のカードだし、さらに今後政府は、「運転免許証との一体化」「障害者手帳との連携の強化」「資格情報のデジタル化」「引越し手続きのデジタル化」「在外選挙人名簿登録申請のオンライン化」まで推進していくらしい。
 そして将来的には、マイナンバーカードの全機能をスマホに搭載できるようにしていく方針らしいのだが、トラブルが続くデジタル事件が勃発する中で、こんなに急速に、計画性もないままに肥大化させていいものなのだろうか?
 そういえば、ATMトラブルでおなじみのみずほ銀行は、もう随分前に興銀、富士銀行、第一勧銀を統合し、自社のシステムを共通化しているが、いまだにトラブルが続いている。
 マイナンバーカードシステムは、みずほ銀行どころではない巨大なシステムであり、いくつものシステムを統合して実行されるはずだから、トラブルが起きないという確率の方が間違いなく低いだろう。
 それなのに、何でもかんでもマイナンバーで一括管理し、将来はスマホにすべての個人情報が集積していくことを考えると、悲惨な結果を生まないことを祈るばかりだ。
 これじゃあ怖くてスマホもおちおち持ち運べないだろう。
 きっと将来、年配の人に電話してもつながらないことが日常茶飯事となるだろう。
 だって、せっかくのスマホを金庫か仏壇にしまっておく高齢者が続出するだろうから(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年5月)

第233号 AIが文化を破壊する日がいよいよ到来?

 先日、小さな記事が出ていたが、気が付かなかった人も多いと思うのでぜひ紹介したい。
 アメリカの音楽界の著名人200人以上が集結し、業界での生成AIの「略奪的」な利用を止めるよう呼びかけた記事だ。
 その機械学習ソフトウェア企業各社に送られた公開書簡には、スティービーワンダーをはじめ、ビリー・アイリッシュ、サム・スミス、ジョン・ボン・ジョヴィ、ニッキー・ミナージュ、ケイティ・ペリーらが署名していた。
 そう、今アメリカで活躍しているほとんどの有名な歌手が訴えているというところに注目してほしい。
 書簡では「プロのアーティストの声や肖像を盗み、クリエイターの権利を侵害し、音楽のエコシステムを破壊するAIの略奪的利用から守る」ために、業界における機械学習テクノロジーに対する規制強化を求めているのだ。
 何を言っているのかというと、「責任を持って使用されれば、AIは人間の創造性を向上させ、世界中の音楽ファンに向けた新しいエキサイティングな体験の開発と成長を可能にする大きな可能性を秘めているのだが、残念ながら、一部のプラットフォームや開発者はAIを利用して創造性を阻害し、アーティスト、ソングライター、ミュージシャン、著作権者を弱体化させている。AIは無責任に使用されると、アーティストのプライバシー、アイデンティティ、音楽、生活を守る能力に大きな脅威をもたらす」ということなのだ。
 福島流に簡単に解説すると、「このままだと誰でも簡単に優れたアーティストやクリエイターの真似や新しい創作ができ、もはや人間であるアーティストやクリエイターなんて、何の価値もなくなるだろう」ということだ。
 つまり、いま、文化芸術音楽の世界を破滅させるような生成AIが急加速していることを裏付けているのだ。
 それなのに、日本のアーティストやマスコミは情けない。アメリカの大スターが皆憂いているこの事態を、全く他人事のように感じているのだろうか。
 もうすでに、アメリカの超有名な大企業の中には、許可なくアーティストの成果をAIモデルのトレーニングに利用しているところもあるらしい。
 きっとあと5年もすると、人間の作った創作物を、AIが作り出した大量の『音』や『画像』などに置き換えることが当たり前となり、もうアーティストやクリエイターの価値なんて地に落ちるのではないだろうか。
 そうなると、生成AIに印税は存在しないので、アーティストたちに支払われる印税が大幅に削減できるだけでなく、生活費を稼ぐのに精いっぱいの多くのミュージシャン、アーティスト、クリエイターの価値は大きく下がり、もっと言えば、彼らはほとんどゴミ箱行きとなり、世界が大きく変わってしまうだろう。
 実はお隣の韓国ではもうそんな動きが出ているのだ。
 最近韓国芸能界では生成AIやCG技術を利用した作品の完成度が高まり、AIカバー曲が実際に使われ始めているのだ。
 例えば、チェ・ウシクとソン・ソックが主演のNetflixドラマ「殺人者のパラドックス」では、ソン・ソックの少年時代を回想するシーンが登場するのだが、演じる俳優があまりにもソン・ソックにそっくりだと話題を集めているが、それもそのはず。イ・チャンヒ監督が「演技は実際にやってもらったが、顔はソン・ソックの幼少期の写真を集めてCG処理をしている」と明かしたのだ。
 さらに、ドラマ「サムダルリへようこそ」でも、故ソン・ヘさん(22年死去)をディープフェイク技術で再現化。故人の過去映像を集めてAIに学習させ、努力の末にソン・ヘさんをステージに立たせている。
 死んだ人も甦らせることが簡単なのだ。
 もう、生成AIがあればドラマを作るにも俳優も要らない時代が来るだろう。
 ま、確かにアニメも大流行している時代だから、別に本物の人間が演じなくても全く問題ないかもしれないが・・・
 実は今、私が一番心配しているのは、まさに大ブームの「現代アート」の行方だ。
 私の財団には総額20億円近くの価値の現代アートが500点ほどあるのだが、その価値はいつまで続くのかということだ。
 現代アートとは、20世紀以降に生まれた芸術のことで、絵画や彫刻が中心だった今までのアートと違い、絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなど、様々な形式があり、これらは、現代社会が多様化する中で、芸術家たちが新しい表現方法を模索する中で生まれたものなのだ。
 それが近年、富裕層の界隈では絵画などのアート作品を投資先として選択する人が急増しているほど人気なのだ。
 現在、欧米や中華圏のアートマーケットは市場規模を拡大し続けていて、若いコレクターの数も増え、2023年年4月にアート・バーゼルとUBSから発表された大規模市場調査レポートによれば、2022年の世界のアート市場全体は約9兆円超。世界の二大オークショニアであるサザビーズとクリスティーズは、2022年の総売上高が過去最高値を更新し、クリスティーズは約1兆1121億円で前年比17%増、サザビーズは1兆800億円という、もう手が付けられないほどの勢いで、大きな産業になりつつあるのだ。
 芸術は太古の昔から、常に人類が自分自身を理解し、感情やアイデア、世界のビジョンを探求し、表現するための手段であり、言い換えれば、芸術は極めて人間的なものなのだ。私たちの人生経験、文化、歴史、そして私たち独自の世界観によって形作られていると言っても過言ではないだろう。
 しかし、AIが登場すると、芸術のこの基本的に人間的な性格が脅かされ、人間が創造した芸術を模倣することによってさらに進化し、AIが創造した芸術を、人間が創造した芸術と同等に受け入れるようになれば、芸術をこれほど力強いものにしている人間的なつながりを失う危険性があるだろう。

 わかりやすく言うと、私が今いたずら書きをして、それを生成AIを使って、「バンクシー風に」と指示を出せば、私のいたずら書きは瞬く間に、世界的な画家の絵と同等の内容に変化してしまうのだ。
 もちろん、今はそれには全く価値がない。しかし、あなたはそれが5年後に価値がないと言い切れるだろうか?
 このまま放置すれば、芸術というのは、豊かで、感動的で、時には変容をもたらす体験から、より機械的で物質的なものへと移行する危険性があるだろう。
 そして、AIはアートだけでなく、クリエイティブの世界で底辺への競争を引き起こし、アーティストやクリエイターの仕事の価値を下げ、正当な報酬を得ることを妨げ、人間の創造性の価値を地に落とし、世界の文化を破壊する日が来るだろう。
 AIの利用により、私たちの暮らしが便利になり、簡単になり、安くなる半面、うちなうものがどれほど大きいか、それを考えたら、アメリカのアーティストのように、日本人ももっと行動すべきではないだろうか?
 バカな日本人たちは10年先、20年先だと思っているが、私は5年先だと見た。いや、もしかしたらバカなのは私で、それは来年かもしれない。
 さてと、私も、自分の価値をAIから略奪されないように、AIを使って防衛しなくっちゃ!
 え?? もともとAIの方がマシ??? そんなあ~

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年4月)

第232号 日経平均4万円突破で騙される人たち?

 ついに、日経平均株価は2月22日にバブル期の最高値3万8915円を約34年ぶりに超えた後も株高の勢いは衰えず、3月4日には史上初めて4万円の大台に乗せた。
 昨年の段階で、誰が日経平均株価の「4万円台」という現状を予測していただろうか?
 確かに私は、昨年7月のコラムで、新NISAが始まる前に、旧NISAから投資を始めたらどうかと書いたのだが、その時点でさすがに4万円台は予想できなかった。
 まあ、私のような者でもNISAを勧めるくらいだから、金融関係の人もマスコミもみな呼び掛けたわけで、それもこの株高に大きく貢献したに違いない。
 もちろん、この予想外の日本株急騰は新NISAだけではない。
 背景には、米国株式市場の活況と半導体生産に象徴される米国の株価と景気循環サイクルとの日米連動がある。
 日経平均株価というのは、日本人がいくら株を買おうがほとんど影響はなく、アメリカのIT企業などの業績好調を背景にしたナスダック指数やS&P500の上昇に連動して引っ張られるのが一般的なのだが、日本だけが好景気というわけではなく、むしろ日本だけなら不況と言っても過言ではないので、今後、アメリカの株価が大きく下がることがあれば、日本株も大きく値を下げる可能性は十分ある。
 懸念されるのは、米株価の上昇は明らかにFRBの利下げを盛り込んでいることなのだが、あまりにも強く織り込み過ぎていることに不安を感じる。
 そういう意味では、日本国内で実体経済との乖離が言われているのと併せて、今の株価急騰には「???」の部分があることにも注意が必要だ。
 だって、今回の株価急騰の局面も含めて、日経平均株価のチャートというのは、アメリカのナスダック指数やS&P500とほぼぴったりと連動しているから、米国株が上がっているから、同時に日本株も上がっているという因果関係だけなのだ。
 そんな相関関係は誰でも知っているだろうが、ではなぜそうなのかを知る人は少ない。
 実は、米国株価が上昇すると、投資家のポートフォリオの中で米国株式のウエートが大きくなり過ぎて、米国株式以外に分散投資する必要性が強まるから、その必要性から、巨大な投資マネーが日本株にも向かってくるわけなのだ。
 簡単に言うと、株価が高くなってくると誰でも「そろそろ下がるのではないか?」と思い始めるので、そこへの投資の割合を引き下げて、他のものに投資するようになるというわけだ。
 「アメリカがヤバそうだから、日本にも投資しよう」という投資家の気持ちが、日本株の高騰に結び付いているということをよく覚えておこう。
 何度も言うが、決して、「日本経済はこれから良くなるだろうから日本株を買っておこう」ではないのだ!
 そう考えると、アメリカの株式の時価総額は、世界の株式の約半分近くまで膨れ上がっているので、そこから逃れようとする力が日本株の市場を大きく押し上げているなんて言うのは皮肉な話だ。
 もちろん日米の連動はそれだけではない。
 実は、米国の代表的な景気指数であるISM製造業指数の対前年比が、日経平均株価の前年比と連動しているので、米国の生産活動を牽引している半導体生産の波が日米の株価に影響しているのだ。
 このサイクルは、リーマンショック後の2009~2023年までの約15年間に4回の周期変動があって、それを反映してISM製造業指数の前年比は09年、12年、16年、20年、そして23年末に前年比プラスに浮上して、その後1~2年程度上昇局面を続けていることに気づく。
 わかりやすく言えば、オリンピックの通常開催される年は、なぜか半導体生産の上昇局面を迎えており、ナスダック指数や日経平均株価はそれと同調して上昇していることが多いのだ。
 お、そういえば今年はパリオリンピックの年だ!!
 ということは、今の株価上昇局面は24年中も続く可能性が高いといえるだろう。
 もちろん経験則だから、地震と同じで、いつ何が起こるかわからないので、今年中に暴落することも可能性としては否定できない。
 ただ、生成AIブームなどもあり、アメリカの半導体ブームはしばらく続くだろうから、こうした投資資金の一部が流入すれば日本の株式市場はまだまだ上がる余地もあるだろう。
 バブル崩壊やリーマンショックで痛い目に合った人たちは、「そろそろ日本株を売ろうかな~」なんて思って、多少乱高下するだろうが、オリンピックが終わるまでは踏みとどまってよいかもしれない。
 でも、世界の国はたくさんあるのに、なんでアメリカの株価が高すぎると、それが日本株にシフトするのだろうか???
 その答えは中国だ。中国経済が昨今ずっと悪いというのが一番の原因だろう。
 アジア株の中で投資マネーの流出先が以前は中国だったが、それが昨今の中国経済の低迷で、日本株へ向かってシフトしているのだ。
 そうそう、ここで大事なことを伝えておこう。
 実は、「日経平均」というのは、日本の株の平均値だと思っている人が多いのだが実は違うのだ。
 株をよく知っている人なら、日経平均というのは「ユニクロ平均」「半導体平均」と揶揄されることがあるほど、偏りがあることをしっているのだ。
 そもそも日経平均は、日本の全上場企業約4000社から、日本経済新聞社が定めたルールに基づき、日本を代表する上場企業225社で構成されているのだが、ただし、この株価指数はその特性上、225社の平均というのではなく、どうしても特定の企業に左右されやすいのだ。
 日本の株式市場全体では沈んでいる株価が多くても、世界中でユニクロを運営するファーストリテイリング社の株価が上がれば日経平均が上昇するなんてこともあり、まさに日経平均がユニクロ平均な日があり、日経平均が上がっているから自分の株を見てみると、大きく値を下げていたなんてことはよくあるのだ
 最近だと、世界的なAIブームから、グローバルな半導体関連の企業の株価が良好で、日経平均を押し上げているので、日経平均が上昇していても、あくまでも特定の超優良企業が押し上げているだけであり、日経平均4万円越えなんて浮かれていても、実は自分が持っているような一般の株はたいして良くないだろう。
 それが証拠に、日本一の企業であるトヨタ自動車の株価が大きく動いても、それほど日経平均は激しい動きをしないのだ。
 ということで、日経平均というのは海外で活動している超優良企業の業績の鏡であり、日本国内を主たるビジネス市場と捉えている内需企業や、そこで仕事をしている人が感じる経済の鏡としての機能は、まったく薄いから、実際、肌感覚の経済に近い実質賃金(物価以上に賃金が上昇しているかを示す指標)は2年連続マイナスで、家計はますます厳しいというのが現実なのだ。
 日経平均に影響力を持つ、半導体関連などのグローバル企業は、まだまだ伸び代があるから、もしかしたら日経平均は4万円を大きく超えるかもしれないが、あまりに株価が急上昇していることの反動や、日本の株式市場に影響を持つ欧米のプロ投資家たちも、アメリカの大統領選挙やパレスチナやウクライナでの戦争などもあり、どう動くか全くわからないという状況を考えると、一直線に日経平均が上がり続けるというより、こうしたイベントに左右されて、日経平均が3万~4万円以内で「乱高下」するのだろう。
 ということで、日経平均の「上がった」「下がった」というニュースが流れても「ユニクロいいね」とか「半導体ダメじゃん」程度に考えておくとよいだろう。あなたの株はきっとたいして上がり下がりしないのだから・・・
 私も浮かれず、気を引き締めて仕事しようっと!
 おっと、その前に、持ち株は上がっているかチェックしとこうかな(笑)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年3月)

第231号 最近話題のS事件は未然に防げる??

 売上高15兆円の日本で4番目に大きな会社に激震が走った。
 そう、ENEOSホールディングスだ。
 ENEOSといえば、誰もがガソリンスタンドの印象が強いだろうが、とんでもない。LNG(液化天然ガス)の独自開発を行い、バイオマテリアルの開発を推進し、水素エネルギーの活用や二酸化炭素の吸収技術も有する。すなわちエネルギー事業全般を行う超巨大企業なのだ。
 そのようなエネルギー最大手企業から、とんでもないニュースがふたたび流れてきたらびっくりだ。
 そう、同社は、昨年末に斉藤猛社長を解任したと発表したのだ。正確には代表の役は解任され、取締役は辞任。
 その理由はもうだれもがニュースで知っているだろう。セクハラだ。
 11月末に内部通報があり、調査と事実確認を進め、12月に解任とは驚きの速さではないか。
 通常なら、第三者委員会の設置や調査と事実確認、さらに協議などを経て、半年から1年かかるのが一般的だろう。
 しかし、あまりにも早い決断には理由があった。
 そう、なんとビックリ! 2年連続TOPセクハラ事件だからだ!
 1年前の8月、当時会長を務めていた杉森務氏が沖縄の高級クラブで女性従業員に性加害に及び、骨折までさせる大けがを負わせて辞任に追い込まれたのだ。
 つまり、セクハラ事件で組織改編があり、そこで社長に就いた人がまたセクハラで解任するという、もう漫画にもならないような茶番劇が繰り広げられたのだ。
 解任された斉藤氏の場合は杉森氏よりは少しはマシで、酩酊状態で女性に抱きついたとのことだが、1年前の惨劇がまだ冷めやらぬままに、どうして酒癖の悪い人に酒を飲ませて、そこに女性を同伴させるのだろうか?
 斉藤氏も悪いが、会社の体質の方が問題ではないか?
 普通、会社のTOPが酒の席でセクハラ辞任ということがあれば、しばらくその会社は、宴席を禁止にするとか、男だけで飲ませるとか、少なくとも、相当気を遣うことだろう。
 しかも、零細企業ならまだわかるが、それが日本で4番目に大きな会社というのだからびっくりだ。
 何となく私の想像では、これは仕組まれた罠のような気がする。
 斉藤氏は、体育会系で豪快なタイプらしいが、やらかしちゃう人はある日突然ということは絶対にない。
 これも私の想像だが、きっと斉藤氏は、いつも酒を飲んで酔っ払うと陽気になり、はしゃいでエッチな話をしていたのだろう。
 私は、そんな奴は、山ほど見てきた!
 酒が好き=宴会でたくさん飲む=酔っぱらう=陽気になるか寝る=周りに迷惑をかける・・・というのは、フェルマーの定理よりも簡単な定理だ。
 だって、酒が好きな人は、「楽しくなる」とか「嫌なことを忘れられる」とか「気分がよくなる」から飲むのであって、いくら「美味しい」とはいっても、それで少しも快楽を得られないなら、あんな高い飲み物は飲まず、きっと水かお茶を飲むだろう。
 厚労省のHPでは、お酒の作用を「アルコールは少量なら気持ちをリラックスさせたり会話を増やしたりする効果がありますが、大量になると麻酔薬のような効果をもたらし、運動機能を麻痺させたり意識障害の原因になります。 その他、少量のアルコールは循環器疾患の予防になったりHDLコレステロールを増加させたりします。」と書いてある。
 今回の事件はまさに、それだろう。
 お酒が好きな人は、悲しいかな「少量」で満足できない生き物なのだ。
 ただ心配なのは、ここだけの話だが、令和の今でも、未だにトップがこんなことをしている企業は、中小企業を含めれば、相当多いはずだ。
 私の知り合いの社長やTOPでも、そういう人は十数人いる(笑)
 もしあなた自身やあなたの家族が勤務する会社の飲み会で同様のことが起きた場合に、経営トップであってもきちんと処分されるのか……そう問われて、自信を持って「はい」とうなずける人はどの程度いるだろうか・・・。
 セクハラでニュースになるのはよっぽどのことであって、99%は黙認されていると、私は思う。
 では、黙認されなかったニュースになるセクハラ事件が他にもあるか、ちょっと調べてみたところ、出るわ出るわ、たった、3か月で以下の通りだ。

「弁護士自殺は性被害原因" 2審も1億2800万円余支払い命じる」1月25日
「バトントワリング男子選手 指導者からセクハラ 協会理事長謝罪」12月30日
「児童生徒への性暴力などで懲戒処分 公立学校教員242人 昨年度」12月23日
「海自の自衛官2人 職員にわいせつ行為しスマホで撮影 懲戒免職」12月22日
「国税庁の男性幹部 女性記者に懇親会でセクハラ行為 懲戒処分」12月22日
「東映でセクハラや長時間労働"20代女性が慰謝料など求め提訴」12月14日
「三宅政務官 10年前のセクハラ疑い改めて否定 週刊誌側に抗議文」11月16日
「DJ SODAさん性被害問題 観客3人についての刑事告発取り下げ」11月3日
「セクハラで懲戒処分の教諭 2年後わいせつ動画撮影で懲戒免職に」10月16日

 まあ、これを見てもわかるが、酒を飲んでも飲まなくてもセクハラする人はするので、酒だけが悪いわけではないだろうが、恐らく酒の席が一番セクハラが多いと私は思う。
 なので、私の提案だが、企業防衛の一つとして、就活面接の際、お酒が好きかどうかを聞いてみるのも一つの手だろう。聞くのはちょっとプライバシーの問題があると思うなら、WEBテストに下記の項目を入れてみるのはどうだろうか?

 1.お酒は飲めない
 2.お酒は飲めるがあまり好きではない
 3.お酒は飲めるが大好きというほどではない
 4.楽しくお酒を飲むのが好きだ

 4の人だけ落とせば、かなりセクハラ事件を未然に防げるはずだ(笑)
 ただ、お酒を禁止するのは、風俗営業やギャンブルを禁止するのと同様、暴動が起きかねないのでそれはできないだろうが、厚労省も認めているように、少量で止めさせることが一番重要だろう。
 もちろん、経団連にズラーっと並ぶ飲料メーカーの圧力と酒税の関係で、厚労省がいくら警鐘を鳴らしても、財務省と経産省の力で簡単に握りつぶされているのが現状だから、酒の席でのセクハラは国が認めているのと等しいと私は思う。
 いつもそうだが、誰かが思い切り旗を振って改革をしないと、絶対にこうした事件は減らないのだ。
 全く腹が立つ・・・
 酒でも飲まないとやってられない!

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年2月)

第230号 報道されない泥棒天国が実は存在する??

 「新年あけましておめでとうございます。」と書きたいところだが、今年ばかりはなかなかそういう書き出しに抵抗がある。
 ついつい、「本年もどうぞよろしくお願いいたします。」で誤魔化している人が相当多いのではないだろうか??
 それもそのはず、ついに今年も大地震が来た!
 東日本大震災以来の大型地震と言っても過言ではないだろう。
 我々非営利分野の人間にとって忘れられない出来事がある。
 そう、阪神大震災だ!
 あの地震は、近年にない大被害をもたらした地震で、ぐにゃぐにゃになった高速道路の画像が目に焼き付いている人も多いだろう。
 しかし、実際は、あの地震で初めて、日本でも「大災害=犯罪」という構図が明らかになったのだ。
 よく外国のニュースなどで、大震災や大停電などがあると、スーパーなどが住民たちに襲われて、メチャクチャに破壊されて、根こそぎ商品が持っていかれるという画像が流れるが、見たことある人も多いだろう。
 あれを見て「外国って怖いね~。それに比べて日本は平和だ」などと他人事のようにうそぶく人も多い。
 しかし、現実は違ったのである。
 阪神大震災では、ボランティアが全国から駆け付けてあちこちに派遣されて住民たちを助けて・・・
 というのは全く嘘。
 ボランティアの半分が泥棒だったのだ。
 ペットボトルの水とタオルと地図を渡されて、向かった住宅で、がれきの片付けをすることなく、ただただ、貴金属や現金などの貴重品をかき集めるというボランティアという名の泥棒が数千人いたことを今だから教えよう。
 泥棒だけならまだましだが、まじめな女子大生などの本当の女性ボランティアが、ボランティアという名の性犯罪者の餌食になったことも数十件あったことも今だから教えよう。
 「うそつけ!」と思う幸せな人は、「震災・泥棒」とか「震災・レイプ」などで、YouTubeや検索サイトで検索してみればいい。
 信じられない、信じたくないその事実が動画とともに流れていたりするから・・・。
 その時、なぜそういうことを報道しなかったかって???
 当たり前だ!
 報道したら、それまで気が付かなかった泥棒や性犯罪者をさらに誘発するからだ。
 だから、報道規制が引かれて、泥棒や性犯罪者の天国だということを明らかにしなかったから、あなたも知らなかったはずなのだ。
 ところが、実は、そのことは政府では大問題になっていたのだ。
 自治体から警察からも何とかしてほしいという声が寄せられ、ついに立ち上がった政府がしたことは何かご存じだろうか?
 そう、特定非営利活動促進法(NPO法)の制定だ!
 ボランティアという名の泥棒を見破る方法が、ボランティア団体に法人格を与えて、ガバナンスの強化をして、信用できるボランティアを選び出そうとしたのだ。
 だから今でも、NPO法人の役員の就任には住民票が必要で、それを自治体は警察に渡して、禁錮や執行猶予など、犯罪歴などを調べているのだ。
 あれから25年。申請の際の添付書類や形式はいろいろ変わったが、それだけは変えていない。
 東日本大震災でも報道規制が引かれ、決して日本の泥棒の半分以上が東北に結集していることを伝えられなかった。
 今回も同じだ。多少は流れるがそれはほんの一部。
 一部のSNSは規制の対象外だから平気で流しているが、一般人が見るテレビや新聞にはそういうことはほとんど流れない。いや流せないのだ。
 それでもどうしても現地が犯罪の温床になっていることを伝えたいので、報道各社が流せるニュースとしては「まだボランティアには来ないでください」だけだ。
 現地の警察としても、被害者の救済などは自衛隊に任せて、今やっていることは泥棒や性犯罪者を捕まえることが中心だ。
 だから、本物だか偽物だかわからなくなるので、本当のボランティアさんなんかが来てもらっては困るのだ。
 本当のボランティアさんが、警察がやって来て、何となく怖くなって逃げ出して、撃ち殺される危険だってあるのだ。
 だから、とにかく今は「来ないでくれ」しか言えないのだ。
 こんなに困っている人がいるのに、なんでダメなの?と思っている人も多いだろうが、それはわかってあげてほしい。
 え??? そんなのウソだって???
 では、日本の泥棒の8割が結集したと言われている、東日本大震災の後のある報道SNS<出典:キニ速 気になる速報>を紹介しよう。
 「中でも話題になった火事場泥棒はコンビニATMの破壊というなんとも大胆な行為だ。悪虐の限りを尽くしたと言っても過言ではないような無残にも破壊され中身のお金をかすり取られたATM。
 宮城県内では2011年7月までにATMの窃盗は22件も発生した。その被害総額は1億8千万円。また福島原発近くの警戒区域内のコンビニ27店舗のうち25店舗がATM破りの被害にあった。
 宮城県警が調べたところ、地震発生から3月26日までの15日間で、宮城県内の窃盗被害総額は約1億円。気仙沼信用金庫や松岩支店の金庫からも現金が盗難されていたらしい。逮捕されたのは7人で40人が検挙されたそうです・・・」
 災害に乗じた犯罪は何もATMなどの金品窃盗だけではなく、被災地では被害者の家族を装い金融機関に通帳を再発行させる詐欺や金利の制限を超えた貸付を行う闇金、少女に暴行を加えるなどの性犯罪も頻発する。
 これだけはわかってほしい。大震災で一番怖いのは人間なのだ。
 これは外国の話ではなく、日本の話だということもぜひ知ってほしい。
 え???なんでお前は知っているのかって???
 私は、NPO法ができた時に「NPO法人設立運営センター」を開設して、日本中の2000近いNPO法人を作ったNPOの第一人者であることは皆さんもご存じかと思うが、書籍を執筆する際に、NPO法の草案作りに携わった国会議員の人たちにヒヤリングしていて、その事実を知ったのだ。
 実は、NPO法は阪神大震災の前から少しずつ動き出していたようだが、あの地震が来て、ボランティアだか犯罪者だかわからない事実が判明し、かなり法律の制定を急いだらしいのだ。
 私がこの世界に飛び込んだのはあの1998年のNPO法の制定だから、そういう意味では、私はその時の泥棒さんたちに感謝しなければならないのかもしれない。死んでも嫌だが(笑)
 もし、泥棒が全国から集まらなかったら、NPO法人は認証制度ではなく、ただの法務局登記で誰でも簡単に作れていたのかも・・・
 そうなると、「NPO法人設立運営センター」なんて当然必要ないから、この世界に飛び込んでいないし、このコラムもないわけだ・・・
 「うーん。その方がよかった!!」なんて言わないで~(泣)

特定非営利活動法人国際ボランティア事業団 理事長
田園調布学園大学 講師 福島 達也
(2024年1月)
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